異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第23節 新たな脅威

ミントを仲間に加えた4人は奥に続く廊下を歩いていた。ミントを見つけ無事を確認出来たことにより桐生達の足取りは軽かった。
『ねぇ、勇人?』
唐突にレイナが桐生に話しかけてきた。
『どうした?』
『なんかさっきからだと思うんだけど・・・瘴気が一層濃くなってきてないかな?』
『・・・そういえば、そうだな。』
『そろそろ発生源なのかな?』
『多分な。俺の結界もさっきよりは魔力を増やして使ってるし、可能性は高いな』
『なんでこんな事になっちゃったんだろ・・・』
『発生源まで行けばわかるさ』
そう答えると更に歩みを進める桐生に残りの3人は着いて行った。
ー。
ーー。
ーーー。
『・・・あそこ』
ミントが小さく声を上げながら指を向けた先には一つの部屋へ入る扉があった。その扉は重厚な作りで出来ており、正しくダンジョンのボスが居ますよと言わんばかりの雰囲気を出していた。
『ラスボスとご対面~ってか?マジでゲームみたいだなwww』
桐生が扉を見て独り言を呟いているとその横をそそくさと抜き去る者がいた。
『ふざけてないでさっさと開けなさいよ。鈍臭いわね』
ベルがそう言い放ちながら扉に手をかけ押し広げた。桐生達は何が起こるか分からないので即座にその背中を追いかけて扉をくぐるとそこには・・・。
『な、にこ・・・れ・・・』
『嘘・・・』
『・・・』
『こりゃ・・・』
4人はそれぞれにその光景を表した。扉を開けると吹き抜けの様な間取りに本が鎮座しており、瘴気は恐らく今までの倍以上の濃度があった。更に4人が驚いたのは地面に刻んでいる魔法陣だった。
『これって・・・』
『・・・召喚陣』
『なんの召喚の魔法陣なの?』
『・・・瘴気』
『そんなわけないじゃないっ!魔族でもない限りこんなもの出来るはずが・・・』
『まて、誰かいる!』
桐生が見た先には誰かが魔法陣の中心で呪文を唱えていた。なんと言っているかは分からないが呪文を唱えると瘴気は益々勢いを付けて吹き出し始めた。
『おや?こんな所まで来られる方がいらっしゃるのですね?』
声は女の物だった。妖美な雰囲気を醸し出しながら振り返るとその顔は・・・。
『み、ミント?!』
『違う、ミントはここに居る!』
『どうゆう事?』
『・・・』
桐生達はいきなりの展開についていけず、思考が追いつかなかったが次の言葉で愕然とした。
『これはこれは・・・。姉さんじゃないですか。お久しぶりですね?』
『姉さんっ!?』
3人は驚きながらミントを見た。当の本人はただ、じっとその女を睨み付けていた。
『あら?なんも説明していなかったのですか?・・・それでよくわたくしの前に立てたものですね?』
その女は言い終わるとそこらのモンスターとは比べ物にならない殺気を放った。
『やばいっ!全員、ミントを守れ!』
号令と同時にレイナは女との間合いを詰め、ベルは魔法を発動しようと詠唱に入った。桐生はミントを庇うように前方にたち、攻撃に備えた。
『あらあら?血の気が多いのね?いいわ。遊んであげる』
そう言うと片手をあげ桐生達に向け振り下ろした。すると地面からワラワラとグールが生まれ桐生達に襲いかかってきた。
『貫けっ!ライトニングっ!』
『せいやぁぁ!!』
ベルが魔法を放ち、レイナが斬りかかるがグール達は物量で押してきた。
『くっ!桐生っ!』
『おうよ!・・・地獄の業火よ、その炎をもって灰とかせ!フレアエクスプロージョン!』
桐生が範囲魔法を発動するとグールの群れは一瞬にしてその姿を消した。圧倒的火力の前に燃え残ることが出来なかったのだ。
『あら?あなた・・・召喚者ね?そんな魔法この世には存在しない・・・ふぅん・・・』
女はグールの群れが消えたにも関わらず余裕の態度を取っていた。
『や、やばいよ勇人・・・』
『・・・だな。俺はともかく皆がやべぇ気がする』
『どうするのよ?』
3人が思案しているとミントが唐突に女の前に歩みだした。
『み、ミントっ!?』
レイナが止めようとするがミントの背中からは怒気に近い物を感じ、止める事が出来なかった。
『・・・エヴィー』
『はい?』
『・・・どうして瘴気を発生させたの?』
『どうしてと言われましても・・・♪』
『・・・辞める気はない?』
『えぇ♪それがここまで来た理由ですから♪』
『そう・・・』
『そういえば姉さん、召喚は済みましたのね?後ろの方が今回この世界に呼ばれた方?』
『・・・』
『別に黙らなくても分かりますよ?・・・そうですか。ではまたあの時の再現になりますね♪』
『・・・貴女も?』
『えぇ♪魔力、力、全てを持っても最高のマスターですわ♪・・・そこの男と違って♪』
『・・・』
『こんな事になるなら私のマスターも連れてくれば良かったですわ♪お互いお披露目出来ますしね♪』
『・・・もう、繰り返さない』
『え?』
『あの時みたいに繰り返さない・・・』
『ですけど、召喚されたんですよね?』
『・・・』
『ふぅん・・・ま、いいですけど♪』
二人がなんの話をしているか理解出来ない桐生達は各々次の攻撃に備え詠唱を始め、剣を握り直していた。
『物騒ですわね?お話をしていますのに・・・。消えなさい』
エヴィーと呼ばれたミントの自称妹は背後で詠唱を始めたベルに向け指を突き刺した。するとどこからともなく風が吹き荒れベルを包むようにその姿を変えた。
『な、なによこれっ!?』
『逆召喚ですわ』
サラッと答えると更に魔力を込め始めた。
『部外者は早々にかえってくださいね?貴女も』
レイナは逃げようとしたが風に前を遮られベルと同じく風に包まれた。
『うふふ♪どこに飛ばそうかしら♪いきなり空に居るのも楽しそうですわね♪』
二人をこれからどうしようかと楽しそうに考えているとエヴィーの背後に向け電撃が走った。
『・・・なんですの?』
その先にはエヴィーに向けライトニングを放った桐生がいた。
『二人を解放しろ』
再び魔法を発動する所で桐生は解放する様エヴィーに告げた。
『無理ですわ♪もう後は送るだけですし♪』
『なら安全な場所に転送しろ』
『なぜ貴方に従わなければならないの?』
『それもそうだな・・・』
と、呟くと忽然と桐生の姿は消えた。その姿を探すエヴィーだが背後から今度は至近距離で魔法を構える桐生が居た。
『従え。でないとその頭に特大の雷撃を食らわすぞ』
『・・・へぇ』
エヴィーはそれでも余裕なのかゆっくりと振り返ると桐生と目線を合わした。
『貴方・・・流石ね。マスターになる資格があるだけだわ♪・・・お名前を伺っても?』
『桐生・・・勇人だ』
『・・・っ?!桐生・・・ですって・・・?』
その名前に反応したのかエヴィーは思考をめぐらせていた。何を考えているかは桐生には理解出来なかったが唐突にエヴィーは笑みを零した。
『・・・いいですわ。今日の所は従ってあげます』
『・・・確証は?』
『わたくし、約束は守る方でしてよ♪』
そう答えると指を鳴らし転送を行った。風の音でベルとレイナが何かを喋っていたが聞き取る事が出来なかったが恐らくダメージは無いように見えたので目の前の障害を優先させた。
『ちゃあんとここの入口に転送しましたわよ♪これでよろしい?』
『・・・』
『あら?まだなにか不服ですの??』
『なぜあの二人だけを転送した?部外者ってんなら俺もだろうが』
『あぁ、そうでしたね♪ちゃんと説明してませんでしたものね♪』
エヴィーはそう答えるとコツコツと桐生達の周りを歩き始めた。
『貴方、この世界についてどれぐらいご存知ですの?』
『・・・魔物が大量発生する年が今だって事と、それに備えて他世界から素質のある人間を召喚する・・・』
『半分正解ですわ♪』
そう言いながら今度はミントの隣まで歩いて近寄った。
『で、残りの半分ですが・・・、まずひとつが私たち人間ではないの♪』
その言葉に桐生は衝撃を受けた。
『・・・人間じゃ、ない?』
『えぇ♪私たちは神によって生み出された精霊、まぁ人間と同じ様に生活しますが本質は精霊ですわ♪転生を繰り返して今に至りますのよ♪』
『・・・』
『私たちは魔力をもってこの身体を維持しておりますが個人の魔力にも限度がありますのよ♪ですけども・・・マスターと決めた方と契約すればその問題は解決になります♪』
桐生はその言葉を逃さず聞いていたが理解が追いついていなかった。
『期待通りの反応ですわね♪そしてこの世界には元々モンスター、魔物は存在していませんでしたの。ですけど種が増えすぎると世の中のバランスが崩れてしまう。そこを懸念していた神はモンスターを作り、人々を殺し始めたの♪増え過ぎない様に管理する為に♪』
『そんな・・・』
『ですけど神も悩んだのでしょう・・・。殺されていく人間も助けたくなってしまった。でも助けると世界が終わる・・・。悩んだ挙句どちらが正しいのか二人の審判を作り競わせる事にしたのでした♪』
『それが・・・』
『えぇ♪私たちですわ♪♪』
『・・・』
『そうして生まれてから今までずっと、姉さんと競い合ってきましたの♪召喚された方と契約してその世界の進む先を決めるべくずっと、ずっと♪』
『じゃあモンスターの大量発生の原因は・・・』
『ええ、わたくしですわ♪勝つ為にはなんでもやらないと♪』
そこまで話していた陽気な雰囲気は一瞬にして消え去り、殺気を露わにしてミントを見つめた。
『なのに、どうして今になって戦わないって言い始めるの?ご自分の使命もお忘れになって?』
ミントはその言葉に反応せずただ、エヴィーを睨み付けていた。
『それに姉さん、もう魔力が限界ではなくって?今まで契約せずにずっと一人で戦っていましたのね?・・・今なら一瞬で勝負は決まりそうですわ♪』
『・・・っ!』
ミントはその言葉に反応したのかサッと距離を取り声を荒らげた。
『貴女はっ!そうやって楽しんで居るけど、私は楽しくない!今まで召喚した人達がどれだけ辛い思いをしたか理解してるっ!?私はそんな辛い思いを見ず知らずの人に強いることはもう出来ない!』
初めて聞くミントの怒声に桐生は驚いていたが身体はとっさにミントを庇う様に滑り込ませていた。
『・・・マスターでもない貴方がそこにいるのは邪魔ですわ』
『でも候補なんだろ?それに、俺にとっちゃミントが精霊だとかなんとかはどうでもいい。ミントはクラスメイトだ。辛そうにしてれば助けてやるのが仲間だし、友達だろ?』
『・・・馬鹿みたい。ただの道具のくせに』
『・・・桐生・・・さん』
『なぁミント?これが終わったらちゃんと詳しく説明してくれよ?じゃなきゃ寝付きも悪くなるwww』
『・・・死亡フラグ?』
『こらwww不吉な事を言うのはやめなさいwww』
二人の間には緊張をほぐそうとお互いが気持ちを落ち着かせようとする雰囲気があった。その光景に嫌気がさしたのかエヴィーは小さく舌打ちをすると片手を上げ、魔力を集中し始めた。
『・・・だったら早く死になさい。所詮魔力切れの精霊にたかだか召喚されただけの異世界人。本気を出せば貴方達に負けることはありませんわ!』
そう言い放ち、またもやグールを召喚するとエヴィーは不敵な笑みをこぼして桐生達を睨みつけた。
『最終戦か?』
『多分』
『うし、じゃあいっちょやってみっか!』
『・・・コクっ』
二人はそんなやり取りをしながら戦闘の準備をしたのだった。

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