異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第19節 潜入

桐生達が学園長室に入るとそこには既にSクラスの面々が揃っていた。リコルは怪我の為療養中との事だとジェイクから説明があった。
『・・・ヒソヒソ(とりあえず大事ではないが・・・ちゃんと謝っとけよ?)』
『・・・ヒソヒソ(謝る必要があればっすけどね。元はと言えばあっちが吹っかけて来たんだし)』
桐生がそう答えるとあからさまに面倒くさそうにため息をつくジェイクであった。
『皆さん集まりましたね?急にお呼び立てしてごめんなさい。・・・事は急を要する事態が発生しましたので』
そう話し始める学園長はいつにも増して厳しい表情をしていた。
『何があったんですか?』
と、リィムが聞いた。その表情もどこか緊張しているようだった。
『えぇ、実はこの学園の図書館から瘴気を確認したの。生徒には被害は出ていないけれども放っておけばいずれ大変な事になるので早急に対処しなくてはならないの』
リィムを含めクラスの全員が驚愕の表情を出したが、桐生だけはなんの事や?と頭を傾げた。
『あんた・・・授業聞いてないの?瘴気が出ればどうなるかぐらい覚えておきなさいよ』
あからさまに馬鹿にする様にベルは桐生に指摘した。
『なんかそんな事言ってたけどよくわかんねーんだよw』
『あんたねぇ・・・いい?瘴気ってのは要は毒よ。私達みたいな人が吸えばたちまち身体の自由が無くなって最悪死に至る。でも瘴気があると活性化する奴らもいる。それがモンスター。図書館にモンスターが現れればその強さは普段の倍以上になるって習ったでしょ?』
ベルが説明すると桐生は納得が言ったのかポンっと手を叩くのだった。
『えぇ、その通りです。そしてその最悪な事が起きています。まだ姿は確認していませんがモンスターの気配を感じたと報告がありました。皆さんにはモンスターの討伐、並びに瘴気の発生原因の調査、及びその封印をお願いします』
そう説明すると学園長はリィムに小ぶりな瓶を渡した。
『これは瘴気が湧いている所で使ってください。中身をかけることで封印する事ができる霊薬です。一つしかないので慎重に取り扱う様にお願いします』
学園長が瓶を渡すタイミングで桐生はふと思った事を聞いた。
『学園長?瘴気が出てるなら俺らも危ないんじゃないのか?』
桐生の発言に答えたのはリィムだった。
『それは大丈夫です。私の結界で皆さんの安全を守りますので・・・あまり広範囲ではありませんが安心してください。』
『よろしいですか?では皆さん、よろしくおねが・・・』
バンッ・・・!!
学園長が話し終わる瞬間に扉が勢いよく開いた。全員が振り返るとそこにはミュゼが息を切らせて入ってきた。
『が、学園長!!』
『どうしたのですか?そんなに慌てて?』
『み、ミントちゃんが・・・!』
『ミントさんがどうしたんですか?』
『先に図書館の方に入ってしまいました!止めたんですが逆召喚で奥の方に入ってしまい、追う事が出来ず報告しないとと思って・・・!』
『なんですって?!・・・皆さん、こうしてはいられません。直ぐに現場に向かってください』
学園長が話すとクラス全員は一目散に現場である図書館へ向かうのだった。
ー。
ーー。
ーーー。
『・・・ここも』
ミントは1人図書館の奥、地下と言える場所に来ていた。辺りは瘴気が蔓延し、一般人なら五分と持たない場所だがミントは自分の周りに魔力の流れを作り瘴気の侵入を防いでいた。
『・・・あの場所が怪しい』
ミントは更に奥に続く階段を見て呟いた。確かにそこは今いる場所よりも瘴気の濃度が高かった。
『・・・気配』
階段を降りようとした時、背後から殺気を感じ振り返るとそこにはモンスターが現れていた。試験で桐生が戦ったレッドウルフとはまた違う青い毛質のウルフ。ブルーウルフだった。レッドウルフよりは力はないがその俊敏性はレッドウルフを凌ぐ物を持っている厄介な相手だった。
『グルルルルルル・・・!』
ブルーウルフはミントを見ると更に殺気を放ち襲いかかろうとしていた。
『邪魔・・・』
そう呟くとミントの周りに光の魔法陣が現れ、見たことも無いモンスターが現れた。それはゴーレムの様ではあるが騎士に似た鎧をしており、右手には大剣を携えていた。
『・・・行って』
そう呟くとゴーレム(?)はブルーウルフに向かい突進して行った。だが、俊敏性は相手が上なのか突進からの振り下ろしの剣はひらりと躱され逆にブルーウルフの爪が襲いかかった。
『ギャウッ!?』
しかしその爪が当たる刹那、ひとつの断末魔がその場に響いた。そこには無残にもその場で胴体が半分になっているブルーウルフが居た。ゴーレムはなんと上半身だけが背後を向く形になっていた。
『・・・戻って』
ミントが呟くとゴーレムは光の粒子になって姿を消した。辺りには静けさが戻りミントは階段を更に降りていった。
ー。
ーー。
ーーー。
『これは・・・』
『まずいわね・・・』
『う、うん・・・』
『やばくねーか・・・?』
4人は図書館に入るなり各々その危険性を言葉にした。まだ入ったばかりなのだがその気配から危険だという警報がガンガン鳴っていた。
『そんなにやばいのか?』
ただ1人を除いてだが。桐生だけはそんな危険性がある様に思えず辺りをキョロキョロと見回していた。
『あ、んた・・・!少しは緊張感を持ちなさいよっ!これだけやばいのに気付いてないとか馬鹿じゃないの?!』
『そんな怒らなくても・・・www第一、やばいのは俺らもだけどミントが一番ヤバいだろ?』
『そりゃそうだけど・・・』
『じゃあ俺らはこんな所で焦っても仕方ないし、ちゃっちゃとミントの後を追わないとなwww』
桐生の言葉にベルは言葉を濁し、『わかってるわよ・・・』と1人文句を呟いていた。その様子にレイナは思わず笑いだしてしまった。
『なによ?あんたもこいつの味方にでもなるの?』
『違う違う・・・wwwほんと勇人って緊張感ないんだよね♪でも一緒にここまで来る間こんな風に接してくれたから戦闘になってもリラックスする事が出来たから♪』
そう言うとリィムとレオンはお互いに顔を見合わせると二人ともクスクスと笑いだした。
『たしかに・・・www勇人がこんなんじゃ緊張も出来ねーわwww』
『そうですねwww♪でもリラックスし過ぎはどうかと思いますけど・・・www』
三人が笑い始めると吊られたようにベルも呆れ顔で口元を緩めたのだった。その端では『全くあんたらは・・・』などと言っていたが先程までのピリピリとした雰囲気はその場になかった。
『うし、皆力は抜けたな?んじゃ確認だ。第一目標は?』
『ミントちゃんの保護です』
『次に瘴気の発生原因の調査よ』
『それと封印もね』
『モンスターもいるから道中注意だな』
『よし、じゃあ行くか!』
そう切り出し、桐生達は図書館の奥へ向かい始めた。
『ここが学園長が言っていた開かずの扉??』
『そうね。ここに来る人達は皆そう呼ぶわ』
『私もよくここに来ますけどなにやらいつもより不穏な空気を感じます・・・』
『恐らくモンスターだろうな。気配がビンビンするぜ』
『で、この扉を?』
桐生達は背後にいるミュゼを見た。そのミュゼはなにやら呪文を唱えていた。学園長の話だとここから先は関係者以外立ち入り禁止とされており入れるのは極小数の生徒、もしくは教師のみらしい。よって入らない様に結界を張っているのだが解除出来るのは学園長のみらしい。今回は緊急につきミュゼにその解除の魔法を学園長が教えた、との事だった。
『皆さん、準備は良いですか?あなた達生徒をここに入れるのは気が引けますが・・・どうか気をつけて・・・。私は結界を解除した後その上にまた結界を張ります。瘴気が漏れないようにしますので帰って来た際には合図をお願いします・・・では・・・いきます・・・!』
ミュゼが一通り喋ると扉に張っている結界が無くなったのだろう。鍵が開く音がすると扉が自動で開き始めた。
『行くか』
桐生が先陣を切って扉の奥へ向かうと各自武器を取りながらその後に続いた。全員が入るのを確認するとミュゼは扉に対して結界を張りその場にはミュゼただ一人が残る形になった。
『本当に・・・気をつけて・・・皆無事に戻って来てね・・・』
呟きながらミュゼはその場に膝を折り、祈りを捧げたのだった。全員の無事が一番だが・・・あの男の子がまた優しい声で話しかけてくれるのを期待して・・・。
『(教師失格ね・・・でも・・・それでも良いのかなって思っちゃう・・・)』
それは誰にも打ち明けていない淡く儚く、切ない気持ちだった・・・。

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