異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第15節 約束

『ゴアァァァァァァァァァ!!!』
ゴーレムは避けられると思っていなかったのか雄叫びをあげて桐生を睨み付けた。
『おうおう♪いい殺気じゃねーかwwwまだ勝てると思ってやがんのかwww??』
桐生は余裕で肩を回しながらゴーレムに語りかけた。その後ろでは唸るレッドウルフを確認したが攻めてこない様子だった。
『とりあえず・・・犬が邪魔だな』
桐生は意識を集中し、魔法を発動しようとした。それを感じたのかレッドウルフ達は妨害しようと一斉に飛び掛って来た。
『おせぇ!・・・ライトニングっ!!』
桐生が放った魔法は雷を槍のように放つ魔法だが、そのスピードは正しく光そのものだった。発動すると同時に二体のレッドウルフは倒れた。二体とも身体から焦げた様な匂いを放ち微動だにしなかった。
『残るは・・・お前だけだな。さぁどうする?』
桐生は指をさしながらゴーレムを挑発した。ゴーレムは低く唸ると桐生に向かい突進してきた。
『力比べと行こうか!』
両手を広げ潰そうとするゴーレムと同じ様に桐生も両手を広げお互いの手が重なり合った。体格差からすぐに握り潰されるかと思いきや桐生はゴーレムと力比べをし始めたのだった。
『おらおら、まだこんなもんじゃないだろ?!もっと来いよっ!』
桐生は叫ぶとゴーレムをそのまま押し始めた。観客からはざわめきが生まれ、息を呑む音すら聞こえるのではないかと言う程魅入っていた。
ゴーレムとは魔力から生まれた岩石のモンスターである。その力は並の人間では一溜りもない程の力を持ち、そんな相手と力比べをするなど馬鹿な話はないと思っていた。だが、目の前で力比べをする光景に皆が息を呑むのは当然の事だった。
『おおぉぉぉぉぉるぁぁっっっ!!!』
桐生は気合いを入れそのままゴーレムを持ち上げた。そしてそのまま投げ飛ばした所で魔法の発動を行った。
『お前でもまだ役不足だな。悪いけどここいらで終わらせてもらうぜ』
ゴーレムは初めて投げられたのか、立ち上がる事に驚愕しているようだった。目線だけ桐生に向けると動きが硬直したのを観客は見た。それもそのはず、桐生の周りにはただならぬ魔力の渦が発生していたのだ。
『大海より来たれ厄災の大渦よ!その力で全てを飲み込み駆逐せよ!タイダルウェイブ!』
桐生が魔法を発動すると目の前には海でしか見ることの無い大渦が発生した。大渦は凄まじい轟音と同時にゴーレムを飲み込みその身体を水圧で潰していった。
魔法の発動が終わるとその場にはゴーレムの残骸なのだろう岩が転がっているだけだった。
『ふぅ・・・』
桐生は軽く息を吐き、観客を見回した。その誰もがこの様な結末になると思わなかったのだろう。口を開け、ただ呆然と戦いを見ているだけだったのだ。
『これが俺の力だっ!まだまだ全力じゃないからこれよりも強いモンスター相手でも倒してやるさ!・・・だから安心しろ!この世界に訪れる危機とやらも、必ず乗り越えてみせるっ!!』
勝鬨を上げる桐生に観客はこの日一番の歓声を上げた。その力に、その容姿に、その期待に応える姿勢に全ての人間が歓喜の声を上げたのだ。と、唐突に桐生は手を挙げ歓声を止ませると空間から何かを取り出した。
『この中に旦那が旅の商人をしている者が居るはずだ。俺はここまで来る途中にその商人から世話になったが・・・タイミングが悪く、救ってやれなかった。モンスターは倒したが商人は帰ってこない・・・だが、何か遺留品でもと思い髪を切り分けてきた。・・・居たらここまで来てくれ』
そう告げると観客はどよめきながら周囲を見ていたが二人の子供を連れた一人の女性が桐生に向け歩みだしてきた。その表情は青ざめていたが何かを悟ったのだろう。強く唇を噛み締めているのを見る事が出来た。
『・・・やっぱり貴方だったんですね・・・』
桐生はそう言うと子供達の頭を撫でてあげた。子供達はヒーローに構ってもらえたのが嬉しいのかその場で喜んでいた。
『・・・これを。』
桐生は髪を手渡した。女性は主人の者と分かったのだろう。その場に泣き崩れ膝を落とした。
『すまない・・・助けてあげたかったが駆けつけた時には既に・・・』
女性は涙ながら桐生に問いかけた。
『なぜ・・・私だと・・・お気付になったのですか・・・?』
『ご主人は・・・胸に1枚の写真を挟んでありました。そこには元気そうな子供たちと・・・貴女が映っていた・・・ここに入った時にすぐに気づきましたよ・・・』
女性は静かに涙を流していた。その様子が心配になったのか子供たちは母親に近寄り顔を覗きこんだり頭を撫でてあげていた。桐生はその姿を見た後、観客に向け決意を述べた。
『俺は、こんな悲しい家族を作りたくない。誰もが笑って過ごせる未来を作りたいし、その為に俺が必要ならなんだってやる。・・・だが俺の手が届かない所だと間に合わないかもしれない。だからこそ、皆で立ち上がる時なんだ!先陣は俺が切ってやる!後に続け!その手で家族を、恋人を、守るんだ!』
桐生が言い放つと観客からは怒号にも似た雄叫びが聞こえた。中には涙ながら聞いていた者もいた。
『確かにその通りだ!』
『俺にも出来る事があるはずだ!』
『俺の家族に・・・手は出させない!』
『子供も居るんだ・・・俺がやらなくちゃ・・・』
そんな声が飛び交う中桐生は闘技場を後にした。後ろからは勇人と囃し立てる声がいつまでも響いていた。
ー。
ーー。
ーーー。
『はやとぉぉぉ~↓↓!!!』
桐生は帰る道の途中でなんとも奇妙な声をかけられその場で振り返った。
ドサァッ!!
桐生はいきなりの衝撃で何が起こったのか分からなかったがその髪色と淡い匂いで相手がレイナだと判断出来た。
『れ、レイナ?!どうした?』
『だって・・・だって・・・約束果たせたからぁ~↓↓!!』
桐生はなんの事か分からなかったが先程の家族の事だと分かるとレイナの頭を優しく撫でてやった。
『よしよし・・・。これで少しはあの商人も浮かばれただろうさ・・・あぁ、もう泣くなw可愛い顔が台無しだぞw?』
『ぶ、ぶぇぇぇぇぇ~ん↓↓』
レイナは泣きながら桐生に抱きついて離れなかった。話も聞いていないのだろう。
『やれやれ・・・(こ、こんなんでいいのか?!こんな抱きつかれて泣かれる経験なんかないから対処法が分からんっwww!!・・・まぁ役得っちゃ役得だけど・・・www)』
桐生がポーカーフェイスで宥めているとコツコツと歩いてくる音に反応し、音の方を見ると学園長が歩いてきた。
『あらあら、レイナさん?そんなに泣いてしまうと桐生さんが困ってしまいますよ♪?』
学園長は静かにレイナに諭した。するとまだ鼻を啜っているがレイナは多少落ち着いたのか桐生から離れた。
『す、すいません・・・↓↓』
『いえ、いいんですよ。あなた方は当事者ですから、その気持ちは分かりますし、私も一児の母ですからあのご家族の気持ちも理解出来ます・・・よく伝えてくれました』
そう言うと学園長は桐生とレイナに深々と頭を下げた。
『大丈夫です。あんな時にしか言えない事ですし、亡くなった方も少しは浮かばれたと思いたいですから』
桐生は学園長に向け冷静に答えた。内心先程の歓声が耳に残っているので冷静に答えれたか不安ではあったが。
『では、晴れて桐生さんはSクラスへ編入になるので詳しい話をしに私の部屋まで行きましょうか?・・・クラスメイトも紹介しないと行けないですしね♪』
その言葉に桐生は苦笑いを浮かべるしかなかったが、レイナと同じクラスだけ有難いと思うしかないなぁと自分に言い聞かせて学園長の後ろを歩いていくのだったーーー。

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