異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第14節 召喚者披露式

コンコン・・・
桐生は学園長の部屋につき扉をノックした。中に居たのか『どうぞ』の返答があり、桐生は扉を押し広げた。
『失礼します』
『あら、桐生さん。どうなさいました?』
『試験が全て終了したのでその報告とこれからの相談で・・・』
『あら、それは御丁寧に♪おかけになって?今お茶を出しますから♪』
そう言うと学園長はベルを鳴らしメイドを呼んでお茶の準備をさせ始めた。桐生はソファに座りその仕草を見ていた。
『(やっぱりメイドってだけあって手際がいいな・・・リアルメイド・・・いぃ・・・w)』
見惚れていた訳では無いがずっと見ていたのだろう。メイドは視線に気付き、顔を赤くしていた。その反応に桐生はアタフタと視線を逸らしたがクスクスと学園長が笑い始めた。
『あらあら♪レイナさんには黙っておきますねwww♪』
『ちょ、なんのことっすかwww』
桐生は余計な事をしないで欲しいと抗議しようとしたがメイドの出したお茶に阻まれ何も言えなかった。
『ふぅ・・・さて、桐生さん?今後の話なんですが・・・』
『あ、はい』
『試験には合格しましたが、もう一つ。やって頂かないと行けない事があります』
『・・・はぁ』
『今回の件で、この都市で召喚された者を皇族の方や街の住人の人達に正式に紹介しなければならないの。理由は2つ。1つ目は今年が周期の年だと再認識して貰い、危機感と一緒に注意を促したいから。2つ目はそれに対する力・・・Sクラスは勿論だけど、あなたを認識してもらう事で都市の人達に安心感を持ってもらいたいの』
『・・・それで、俺は何をすればいいんすか?』
学園長は静かに机の引き出しから1枚の書類を出して桐生に渡した。
『今度、試験を行った闘技場で街の方々や皇族の方をお招きして披露式を執り行うの。内容は後で説明しますが、その時に桐生君には出てもらうだけで結構です』
桐生はその書類を見たが大まかには学園長の説明通りの内容だけが書いてあった。だが・・・。
『日時は・・・明日っ?!』
『えぇ♪桐生君が試験を行ってる間に通知は終わりましたので沢山の方々が集まりますよ♪』
『マジっすか・・・』
『マジですよ♪特に準備などはないので明日またここに鐘がなったら来てください。詳しくはその時に説明致しますので♪』
桐生は諦めながら了承した。内心、それだけじゃなさそうな予感もしていた為乗り気ではなかった。
『では、今日はこれで。寝坊しないでくださいね♪?』
『・・・うぃ』
そう答えると桐生は学園長の部屋を後にしたのだった。

ーー
ーーー
ドンッドンドンっ!ーーー
『うぉい?!なんだよ朝から?!』
早朝、桐生は爆発音で目が覚めた。空を確認すると元の世界でも見た信号雷が上がったような形跡があった。
『この世界でも同じ物があるのか?』
桐生はそんな事をボヤきながら支度を済ませ、食堂へと向かった。
その道中、桐生は寮に住む学園生の視線をいつも以上に浴びていた。
『なんかすげー見られてるwwwなんだってばよwww?』
桐生の独り言は、某忍者漫画の主人公と同じ口調になっていた。朝食を取り、鐘がなる数分前に桐生は学園長の部屋に着いていた。
『なにやらされんだろーな・・・めんどい事は嫌だなwww』
ノックをし、部屋に入ると普段とは違う煌びやかな衣装に身を包んだ学園長がお茶を飲んでいた。桐生が入室したのを見ると立ち上がり、今日の予定を話し始めた。
『おはようございます♪昨日はよく眠れましたか♪?』
『まぁそれなりっすねw』
『そうですか♪ではそろそろ向かいましょうか♪歩きながら説明しますね♪』
学園長はそう言うと先程桐生が入ってきた扉を通り闘技場に向かうのだった。
『ここでの生活は慣れましたか?』
『まぁそれなりに。飯は美味いから良かったですねw』
『それは良かった♪今日のことなんですが、お披露目の中に一つお願いがあります』
桐生はやっぱなんかあったかと思いながらその続きを待った。
『今回、ただのお披露目だけでは貴方の力を測れないので、戦闘を行って貰います。相手は5体。どれも手強い相手ですよ♪』
『体?人間相手じゃないんすか?』
『えぇ、今回は人相手ではないです。理由としてはこれからの戦いを考えて『倒す』に重きを置いている事を観客の皆さんに理解して頂きたいからです』
桐生はその話を聞いて一つ疑問を持った。
『・・・つまりそれが今後の世界の危機を救えるかどうかのいわゆる最終試験だと?』
『・・・鋭いですね。その通りです。私達学園の関係者は桐生君の実力は理解しています。ですが、皇族の方々は信用しておりません。ですので・・・』
桐生は過去最高のドヤ顔で答えた。
『任しといてくださいよ♪皇族や街の住人諸共度肝抜いてやりますよ♪』
『貴方なら本当にやりそうですねwww♪・・・さぁ着きましたよ。準備はいいですか?』
『いつでもどうぞ』
『では・・・』
学園長は闘技場の中に足を踏み入れた。桐生は呼ばれるまでそこで待機する様だ。学園長が闘技場の中に入ると同時に割れんばかりの歓声が上がった。どうやら学園長はこの街の顔の一つらしい。
『皆様、大変長らくお待たせ致しました。本日はこの世界、メルト・フォーレンに訪れる危機に対して我が学園の生徒が召喚した召喚者を披露させていただきます。どうか、今現在の危機と希望がある事を覚えて頂きます様宜しくお願いします。では・・・』
学園長が目線で桐生に入場する様合図を送ったことを確認して桐生は足を踏み出した。入場するなり歓声と様々な声が飛び交った。
『あれが召喚者・・・?』
『なんだか随分と痩せっぽっちだな』
『頼りになるの?』
『え、カッコイイんだけど♪』
『彼女とかいないのかな?』
『異世界から来たんだろ?信用出来るのか?』
その声を受け桐生は観客席を見回した。視線の中には興味や好奇心が見受けられるが8割は疑心暗鬼の視線だった。その中心になるのが高い所で座っている偉そうな人。恐らくあれが皇族なのだろうと桐生は思った。また周りを見てみると見知った顔もいた。レイナだった。視線に気付いたのか遠慮がちにレイナは手を振ってきた。桐生は片手を上げそれに応えるのだった。
『この方が今回召喚された方、桐生勇人さんです』
『桐生・・・勇人です。この世界に来てまだ数日ですが、呼ばれた理由や意味は理解しています。・・・世界を救うなんて簡単には言えないですが、俺の全力で応えたいと思います』
挨拶を済ますとまた歓声が湧いた。その中で桐生はある一点に目がいった。そこには会った時はないが印象が強い存在がいた。
『(あれは・・・)』
桐生が声をかけようとした時、学園長が話を始めてしまった。
『皆様は召喚された彼の実力を未だに信用なされていないと思います。ですので今からここで彼の実力を試しますのでその目で判断してください。・・・では用意を。』
そう言うと闘技場内に轟音とも取れる声が響いた。辺りは騒然としたが何が始まるのか興味があるのだろう。誰もその場から逃げようとしなかった。
『檻には近付くなっ!』
『どうなるかわからんぞっ!』
『捕縛っ!もう少しの辛抱だっ!気合い入れろよっ!』
そんな怒声が聞こえる中桐生の対面に現れたのはモンスターだった。だが普段と違うのは5人掛りで鎖を巻いたモンスターを抑えていたのだ。周りには魔法を発動準備している者。指揮している者などが見え、桐生はただ呆然と見ていた。しかし観客は・・・
『ご、ゴーレムだっ?!』
『ヤバイっ!逃げろっ!』
『おいおい、嘘だろっ!なんであんなもんここに連れてくるんだよっ!』
会場は騒然となり逃げようとする人が出始めた。その中で学園長は桐生に告げた。
『あれはゴーレム。この国の精鋭兵士が20人いてやっと討伐出来るモンスターです。Sクラスの生徒達でも3人は必要でしょう。しかも今回はそれに加えてレッドウルフも4体います。桐生君が倒したウルフよりもスピード、パワーはありますが、魔法も使ってきます。・・・勝てますか?』
『愚問っすねwステータス確認しましたが、まぁ余裕で終わりますよ♪』
『なら良かったです♪一応Sクラスの方々には支援を頼むかもとは伝えていましたが・・・』
『いや、いいっすね。どっちかと言えば観客に被害が出ないように動いてくれるように伝えてくれますか?』
『・・・分かりました。では・・・ご武運を。』
そう言うと学園長は観客席まで退避し、加護の生徒達に合図を出した。その瞬間、闘技場内(正確には観客席から外)に向け障壁を張った。桐生はその万全さを確認すると観客に向かい叫んだ。
『大丈夫だっ!観客には被害は出ないように学園生が動いている!俺もこんな所で死ぬつもりは無い!そこで見ているんだ!』
すると騒然としていた観客は静まり返り桐生に注目し始めた。静かになると桐生はゴーレムを抑えている兵士達に退避するように伝えた。
『よ、よろしいのですか?!』
『あぁ、巻き込まれる前に早く逃げてください』
『総員、退避!』
号令を待っていたのか兵士達は一目散に逃げていった。そこには桐生とゴーレム、そして檻から出たレッドウルフだけが残った。
『さぁて・・・』
桐生は2、3度ステップを踏み構えた。臆することなく、堂々とした構えに観客は息を飲んだ。
『かかってこいよ、力の違いを教えてやるっ!』
桐生は裂帛の気合と共に踏み込んだ。最初に反応したのはゴーレムだった。スピードがある事を察したのか防御の姿勢を取り初撃に警戒したようだ。
『頭はまわるんだな・・・だがお前じゃない!』
桐生はスピードを殺さず、まずレッドウルフに向かった。一つ目、桐生は渾身の一撃を叩き込んだ。レッドウルフは殴られたのだろう。壁に当たりグチャっと潰れた音がしたがその本体の頭部が無くなっていた。
『次っ!』
そのまま方向を変え二体目に向かった。すると残りの2匹が魔法を発動しようとするのを桐生は見た。魔力から察するに大したことは無いと判断しそのまま二体目に突進した。
『うるぁっ!!』
桐生はレッドウルフの首元を掴み力任せに地面に叩きつけた。避ける暇もなくレッドウルフは死体になった所で遠吠えが聞こえた。
『ウォォォォォォォっっっっ!!!』
すると残った二体から魔法、ファイヤーボールが飛んで来た。しかし威力は桐生と段違いの為防御する必要もなく手で払っただけで消し飛んでしまった。
『こんなもんか?なら期待外れもいいとこだな』
桐生はレッドウルフを見据えて言い放ったが、ふと何かに気付いた。
『(ゴーレムがいない?さっきまであそこに・・・っ?!)』
条件反射なのだろう。桐生は背後に殺気を感じて横に飛びながら背後を確認した。その場所には両手を振り下ろし地面を叩くゴーレムの姿があった。
『やるじゃねーかwwwちょっと楽しくなってきたぜっ!!』
改めて構え直しながらゴーレムと向き合うように立った。戦闘が始まり数分、観客は歓声も悲鳴もなくただ、その戦いを見続けるだけになっていた。ーーー

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