異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第11節 ジェイク&ゲイン(近接戦闘、レンジャー)の試験

兵士に連れられ、2人は闘技場まで来ていた。普段はこの闘技場はなにかのお祭りや、お披露目などで使用されているが昔は、人と人の決闘を観戦するものだったらしい。今現在も行うことが可能だが、やっていないらしい。
『ローマのコロッセウムみたいなとこだよなぁ。外面といい、内面といい。』
桐生は自分がいた世界にある建造物に似ていると思い、独り言を呟いた。レイナは観客席へ行った為、現在は兵士と二人きりだ。
『(さてさて、どんな試験になることやら・・・)』
桐生は気持ちを作りながらどんな事が待ち受けているか思案していた。スピードなのか、パワーなのか、連携なのか。思案したが答えが出る訳でもないと諦めた所、ちょうど闘技場の中心まで辿り着いた。そこには先程学園長の部屋で会った4人の先生が立っていた。
『お?来たな?』
『桐生勇人です。よろしくお願いします』
『おぅ!おりゃあジェイクってもんだ。担当は近接戦闘、まぁ剣とかそんなとこだ。桐生っつったか?なんか武器ないのか?』
『武器はないっす。俺、格闘家なんでwww♪』
『ほぅ、モンクとは珍しい♪・・・んじゃあ試験、やってみっか?』
『うっしゃ!』
『まずは俺からだ。近接戦闘における実技試験だな。一つ目は・・・コイツだ』
そう言うと指を鳴らした直後、目の前には大きな人形のようなものが出てきた。
『第一の試験としてこいつを好きなように攻撃して、倒してみろ。斬撃なら切ればいい。打撃ならまぁ潰せばいいってことにしてやる。ただし、へこませたぐらいじゃ合格とは言わないからな?』
ジェイクはそう言うと剣の柄で叩いてみせた。
ガンっ!!!
『まあこの通り全部を鉄板で固めている。中身は砂だが勢いがないと切れもしないし、倒れもしない。』
ジェイクは剣をしまいながら人形から距離を取った。
『さぁ、やってみろ』
『・・・』
『どうした?やらないのか?』
『・・・これ、壊しても弁償とか言わないっすか?』
『っ?!・・・ガッハッハッwwwおぅ!言わねーから思いっきりやってみろ♪』
ジェイクは自信満々に言い切った。それもそのはず。この試験については今まで誰一人切り倒した事は無かったのだ。良くて半分まで剣が刺さるだけだった。他の生徒でSクラスの編入の際にも同じ課題を出したが壊していいかなど聞いてきた生徒は居なかった程だ。
『・・・じゃあ・・・遠慮なく。』
桐生は声と同時に後ろ足を離し腰を落として、右腕を腰辺りに構え、左腕を標的に構え・・・跳んだ。
ヒュッ・・・!!
ガァアアアッンッッ!!
攻撃を受けた人形は後方に勢いよく飛び壁にぶつかる・・・かと思いきや、
『せいっ!!』
壁に当たる刹那、それよりも速く先回りした桐生の蹴り上げで空中に跳んだ。
『まだだっ!』
空中に飛んで行った人形に跳躍で追いつき、追い討ちに蹴り落とした。
ドゴォォォォォォンッッッ!!
地面にもの凄い衝撃の音を立てて人形は落下した。だが、まだ終わっていなかった。
『これで・・・ラストだっ!!』
桐生は落下速度を上乗せし人形に目掛けて落下しながら正拳突きを放った。
『ゴホッゴホッ!!なんて奴だ?!』
ジェイクは砂煙にまみれ、結果を見るまで時間が経ったが、結果を見ると唖然とした。
人形は・・・もはや原型を留めておらず、胴の部分から2つに別れていた。
『・・・おいおい・・・www』
『合格っすかwww?』
『あ、あぁ・・・ごう・・・かくだな・・・www』
『しゃっ!』
桐生はガッツポーズを取り、その場で喜んでいた。
『(こいつぁ・・・マジモンで強ぇな・・・しかもスキルも魔法も使ってねーんだろ?)』
『次はなんの試験っすか?』
『いや・・・いい。次の試験は無しだ。俺の権限で合格にしてやる。』
『えっ?!マジで?!』
『あぁ・・・。そもそもこんな結果になると思わなかったから次の試験はこの都市の警備兵と模擬戦やってもらうつもりだったが・・・』
ジェイクは後ろに向け指を指した。桐生はその先を見やると警備兵だろう。3人程居たが全員首が取れるんじゃないかと言わんばかりに横に振っていた。多分口を揃えて『死にたくない』と言っていたのだろう。
『・・・な?弱いものいじめは好きかwww?』
『いや、嫌いっすねw』
『つまり、そーゆー事だ。喜べ、桐生勇人。お前はこの科目についてはSクラスと判断しよう』
そう言うとジェイクは振り向いて帰って行った。それと真逆に誰かがこちらに向け歩いてくるのを見た。
『合格おめでとう、桐生君。次はレンジャーの試験だ。私の名はゲインと言う。ジェイクと違って厳しく行くから覚悟するように』
ゲインと名乗ると桐生に向き合い手を挙げた。
『私の試験は特殊でね?隠密、暗殺、諜報活動、索敵、などなど気配を無くすことに長けた分野だ。それはパーティーの生存率をあげる上で重要な情報を得たり、静かに目標を駆逐する事にメリットがある。君にもそのスキルがあると伺って居るので、早速試験を始めさせて貰うよ?』
桐生は何が起きるか分からないので、警戒を強めた。
『うむ、いい判断だ。本当はこの様に目の前に出ることはあまりない分野なので少々勝手が違うが・・・桐生君。今この闘技場内で私の生徒が気配を殺し君を見ている。その人数を当てるのが最初の試験だ。』
桐生はその言葉を聞くとスキルを発動させた。
『視覚広域化、索敵』
桐生はスキルを使い、闘技場内の人数を数え始めた。
『実に落ち着いていていいぞ。この分野で一番重要な事は冷静さだ。君には素質があるのだろう。だが、仮にも私のクラスは優秀な生徒ばかりだ。そんな簡単には・・・』
『先生も人が悪いっすねwwwそう言いながら先生、ジャミングのスキルも出してるじゃないですかwwwま、看破しましたけどw』
そう答えるとゲインは気づけるはずが無いと思っていたのか驚愕の表情をした。
『で、生徒の数っすよね?6人です。場所まで言いましょうか?』
『・・・いや、いい。私のジャミングに気付いた時点で隠密として機能していない。大したものだ・・・』
そう言うとゲインは挙げていた手を下ろした。
『では今度は逆に君が気配を消してみたまえ。それが第二の試験だ』
『先生は?』
『私は目を瞑り10数える。その間に気配を消してくれ。私に気づかれなかったら晴れてこの試験は合格としよう。』
『なるほど、りょーかいっす♪』
桐生は答えるとゲインが目を閉じるのを確認した後、スキルを発動させた。
『隠密』
すると桐生の姿は周りの景色に同化し、姿は見えなくなった。気配は既に絶っておりゲインの目の前には存在が消えたと同じ事が起きた。
『(やはり素晴らしい・・・ここまで完璧に気配を断つとは・・・)』
内心自分がどこまで通用するのかワクワクしながらゲインは数を重ねた。
『・・・10。』
数え終えるとゆっくりと目を開け周囲を確認した。そこには桐生の姿は勿論のこと、気配すら無かった。
『・・・索敵』
ゲインはスキルを発動するが、自分の範囲に当たらない事に気付き、距離を取ったのかと考え辺りを歩き始めた。
どれほどだろう。闘技場をぐるぐると回るが一向に桐生を発見する事が出来なかった。ゲインは己の無力さに悔しさを覚えたが、反対に感動すら覚えていた。そして、終結はゲインの降参で終わった。
『参った。降参だ。桐生君、姿を見せてくれないか?』
その言葉を引き金にまず姿を現した桐生は気配は消したままだった。そして静かにゲインの後ろに近付き・・・
『合格っすかwww?』
と、一言発した。その声の聞こえた先に驚いたのだろう。ゲインは跳躍して距離を取った。
『あ、あぁ。合格だが・・・一つ質問いいか?ずっとそこに居たのか?』
そう。ゲインは桐生の立っている位置に疑問を持った。そこは試験が始まる前と同じ場所だったのだ。つまり、ゲインは索敵のスキルを使って見つけれるはずの桐生を見つける事が出来なかったのが疑問だったようだ。
『先生と同じですよw俺も俺なりのジャミングを使っただけです♪』
『桐生君なりのジャミング?』
『えぇ。詳しくはわかんないんですけど、先生のジャミングって認識阻害的な物ですよね?つまり知られたくない所とかで使用すると逆に分かりやすい、と思ってたので俺は溶け込む系でやってみましたwww』
ゲインは何を言っているのか理解出来なかった。
『えーっと、なんて言ったらいいかな・・・あ、やってみますwww?』
『そうだね。理解がちょっと出来ないから目の前でやってみてくれ』
『分かりました。んじゃ普通の隠密で姿を消したとして・・・気配を消す、次に大気中のマナって言うんですっけ?それと自分を融合するんです』
そう言うと桐生の身体が次第にぼやけ始めた。
『これがマナに溶け込む系って感じです♪イメージしてみたら意外に出来て自分もビックリしてましたwww』
ゲインは愕然としていた。その方法は学者達が研究している最中の方法だったのだ。それを実戦で、しかも初めてやって成功してみせるとは思ってもみなかったのだ。
『ふっふっふ・・・アッハッハッハッハッ!!・・・なるほど、見つける事が出来ないワケだ。大気のマナなど考えてもいなかったよ。桐生君、君は優秀だ。力があるではなく、その発想力が、だ。・・・合格に出来ないわけが無いな。おめでとう。レンジャークラスとしてS判定をあげよう』
そう言うとゲインは桐生に近寄り握手を求めてきた。桐生は素直にその手を握り返した。
『あざっす♪・・・あ、ちなみにさっき先生が索敵してる間に隠れてた生徒にやり方教えたら簡単に出来てましたので良かったら聞いてみてください♪俺よりも多分詳しく話せると思うんで』
『な、なんとっ?!・・・それは、楽しみだ。是非参考にさせてもらうよ』
そう言うと鼻息荒くゲインは生徒達の方に歩いて、走って行った。
『あの先生も面白いなwwwなんだここwww
先輩達がすげー親しみやすいwww』
桐生は自分の世界の職場を思い出していた。無理難題を簡単に頼む上司、仕事をやらないくせに偉そうな先輩、媚だけ売って他を蔑ろにする古株、そんな人間として認めたくない人がこの世界では居なかった。年下だろうが生徒だろうが後輩だろうが良いものは良いと褒め、喜んでくれたのだ。桐生はそんな人達に巡り会えた事に涙が出そうになっていた。
『(まぁ大体の苦労は自分で受け入れたんだけどなwww俺がやれば周りは楽できるんだしw)』
桐生はその考えを改めた方がいいのではと思い始めていた。その時闘技場内、いや都市全体に響く様な鐘の音が鳴り響いた。
『な、なんだ?!』
桐生は何が起きるのか分からず辺りを見回しているとレイナが駆け寄ってきた。
『勇人おつかれー♪見てたよ♪やっぱり凄いね♪もう2つも試験受かっちゃったんだ♪』
『お、おぅ、レイナか。この鐘の音なんだ?』
『あぁ、桐生は知らないんだよね♪これは今日の仕事とか学業とか終わりだよーって音♪朝も同じ様に鳴るけど、それは始まるよーって意味♪』
桐生はなるほどと思い、次の試験に備えようとすると、先程の試験を行った2人が歩いてきた。
『おぅ、お疲れさん。今日の試験はこれまでだ。後は魔法と加護だな?それは明日になるから今日は帰って飯食って寝ろ♪・・・なんなら酒でも飲みに行くかwww?』
そう言って肩を抱いてきたジェイクは既に酒臭かった。
『ジェイク。彼に悪いだろう、絡むのはやめたまえ。すまんな?どうも嬉しかったのか試験が終わってからずっと飲んでいたらしい。・・・まぁ、気持ちも分からんでもないがな』
そう言うとゲインはジェイクを引き剥がし、『ゆっくり休みたまえ。また明日の鐘の音がなったらここに来るといい』と言い残し去っていった。
『・・・あ、はは』
桐生は苦笑いをしつつ飲みたかったとちょっと後悔していたが隣から帰ろうというアピール視線を感じたのでなにも言わなかった。
『じゃあ帰ろっか♪』
『あぁ』
2人は夕暮れに染まる街を背に自分達の寮へ帰るのだった。

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