異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第8節 それぞれの想い

ガヤガヤガヤガヤ・・・
門を越え中に入るとそこは映画で見るような城下町が広がっていた。露店を開いている者、装備を売る者、食事する場所なのだろうか、呼び込みをしている者、色々な人間がおり、また街を歩く人間も多種多様だった。ローブを羽織り杖を持つもの、重厚な盾と高そうな剣を携えたもの、仲間だろうかアイテムについて討議しているものなどが見受けられた。
『活気があるなぁ♪』
桐生はその状況に心が踊っていた。元の世界ではこの様な場所はなくゲームの中でしか見てこなかったからだ。
『凄いでしょ♪朝から夜までいっつも賑やかなんだよ♪』
隣では自慢げに紹介するレイナが居た。その近くには学園長は居ない。先に待っているので街を案内してから来るようにとレイナに頼んで別れたのだ。
『(合法的に女の子とデートっ!!これが
心踊らずにいられるかwww!!異世界、最高っwww!!)』
桐生は色々な意味でテンションが上がっていた。その様子からレイナは余程気に入ったと勘違いをしたのか桐生を様々な場所に案内した。武具屋、アイテム屋、魔道具屋、ギルドホール、闘技場、冒険者寄合所などだ。
『後は・・・あそこかな?』
そう言って指を指す方向に桐生が目を向けるとその先にあるのはゲームでもお馴染みの城だった。周りには鉄の柵で囲われ中には重鎧を纏った兵士が巡回していた。
『滅多な事じゃ中には入れないからここから見るだけだけど、入る時には気を付けてね?捕まったら最後、多分・・・』
そう言いながらレイナは自分の首を手で引くジェスチャーをした。
『おk。この中では静かにしとくわ・・・w』
桐生は近寄らない方がいいと判断してその場から離れようとした。その時・・・
『あれぇ?そこに居るのはレイナじゃあないか♪♪』
『・・・うわぁ・・・』
レイナは見つかったと言わんばかりに嫌そうなリアクションをした。その先にはまぁお決まりのキザっぽい金髪の男がいた。年はレイナと同じくらいだろうか?細身でどこか気品がある様な感じはするが、桐生の第一印象は『仲良くなれねーな、こいつ』だった。
『こんな所で会うなんて運命を感じてしまうね♪そういえばココルの森に行くと聞いたけど無事に戻ったんだね♪良かったら旅の話も聞きたいし、今晩食事でもどうかな♪?』
そう捲し立てて桐生など目に入らないと言わんばかりにレイナの手を握ろうとしたが、レイナはするりと躱し桐生の隣に立つのだった。
『あら、ごめんなさい?リコル。私、勇人を学園長の所まで案内しないと行けないし、旅の疲れがあるので夜は休みたいの。また今度誘ってね?』
そう言いながら自然と桐生の腕に自分の腕を絡め寄り添う形を取った。
『(これ、いわゆる修羅場に巻き込まれたってやつやんっ?!・・・あ、でもレイナいい匂いする・・・いや、あかんあかん!!惑わされては・・・ん?この姿勢・・・あ、当たってるっ?!神よっ!ありがとうっ!!!)』
桐生は半分幸せを感じていた。その態度が気に触ったのか、リコルと呼ばれた男は桐生に敵意を向けて睨みつけた。
『・・・この男は?』
『あぁ、彼は桐生勇人。ミントの召喚でこの世界に呼ばれた救世主よ。凄く強くてとても優しい人♪』
その言葉と同時に更に腕を絡めてきた。
『(れ、れ、レイナさんっっ?!む、胸がっ!?俺の眼パイ判定Eカップがっ?!腕にぃぃぃっっっ!?!?)』
『あの凡人が成功?はっ!ホントか怪しい所だな。第一この僕が居たら世界なんて簡単に救ってみせるさ!こんな冴えない男が救世主?冗談は程々にしたまえレイナ。君は、この僕が守ってあげるよ!』
そう言って桐生に向けて剣を抜き放った。
『おっと・・・?』
桐生はすんでのところで剣先をつまんで止めた。片腕ではレイナを庇うように抱き抱えて。
『なっ?!』
『危ねぇな。お前、女の子が居るのに剣振るか普通?髪とか切れたらどうするつもりだ?髪は女性の命って言葉知らねーのか?守るとか言って傷付けたら笑えねーし』
そう言って桐生は指先に力を込めた。
ーーパキンっ!ーー
乾いた甲高い音と共にリコルの剣先は折れていた。
『っ!?』
その光景に焦ったのかリコルは剣を引こうとしたがビクともしなかった。桐生が指先で摘んでいたのだ。花を触るように優しく。
『何逃げようとしてんだよ?謝れよ、レイナに。俺はどうでもいいけど、レイナを危ない目にあわせたんだから謝れ』
そう言うと更に剣先から折り始めた。
ーパキンっ!、パキンっ!、パキンっ!ーー
ついにはその剣は半ば程までの長さになってしまった。
『くっ!』
リコルはその剣を捨て、桐生から距離を取った。
『お、お前なんかにレイナが守れるわけないだろう!へ、変な魔法を使いやがって!この卑怯者!お前なんかが世界を救えるわけないんだっ!』
逃げゼリフの様に言うとリコルは一目散に城の中に走って行った。
『・・・はぁ~~~↓↓疲れるぅ・・・』
『さて・・・』
『・・・ん~?』
『事情を説明してもらおうか?』
『あれ・・・?勇人怒ってる・・・?』
『内容によっちゃ』
『ごめんなさいっ!!あの人から逃げたくてあんな態度取っちゃってっ!!嫌だったよね・・・?』
『嫌なわけないだろうっ!!(柔らかかったし、堪能できたからむしろプラスwww)ただ、修羅場に巻き込まれたんだから、説明してもらわないと困る』
『そうだよねぇ・・・なんて言ったらいいのかなぁ・・・あの人は、私に好意を持ってくれている人なの・・・』
『・・・oh......』
『皇族の第三王子らしくて、まぁ自由に生きてるみたいで、彼も学園生なの・・・。それで私に言い寄ってくるんだけど・・・私はタイプじゃないって言ってるんだけどひとつも聞いてくれなくて・・・。前にモテないとかって話したと思うけど、その中には彼が周りに言いふらしてる事も関係してるの・・・』
『言いふらす?何をだ?』
『私と釣り合うのは僕だけだから近寄るなって感じで・・・近寄る奴らはみんな虐められたりしてるみたい・・・だから私はクラスでもあんまり話さないんだけど・・・』
そこまで話すとレイナは深く溜息をついた。余程彼はストレスの根源らしい。
『まぁ、俺が居れば大丈夫だろう♪』
『勇人・・・?』
『つまりアイツはレイナにとって迷惑だって事をだ。しかも恐らく周りからはめんどくさい奴認定一位を貰ってると見た。でも皇族の権力かなんか使って周りを黙らせてる、と?』
そこまで話すとレイナはうんうんと頷いていた。
『だったらいくら頑張っても権力使っても勝てない人間相手なら指咥えて見てるしかないって事だwww』
『うん??つまりどうゆう事??』
『・・・レイナ。今俺らどうゆう格好してるか分かってるかw?』
そう伝えると目を2、3度パチクリして周りを見ようとした。その時、優しく暖かい事に気が付いた。そう。今現在レイナは桐生の片腕の中にずっと居たのだ。決して無理矢理ではなく優しく肩を抱くような感触で。レイナはその状態に顔を真っ赤に染めバッと離れた。
『わ、わ、わ///ご、ごめんっ///!!!』
『いや?構わないぞwww?』
桐生は笑いながら(若干の照れ隠し)頭をポリポリとかいて答えた。
『つまり、俺なら嫌じゃないって事ならさっきみたいに俺をダシに使えばいい♪』
『・・・え?』
『さっき挑発したろwww?』
『う、うん・・・。いっつも話を聞いてくれないからここら辺でキッパリしようかなって・・・』
『それだっw!それを常にやれば矛先が俺に来るだろ?』
『う、うん。』
『で、そこで喧嘩にしろ嫌がらせにしろ全部俺に来るわけだ。それをことごとく回避、もしくは返り討ちにすればやつのメッキは簡単に剥がれる。権力を使ってきても俺はこの世界じゃ裁きようがない存在だ。つまり俺は死ぬことはない。どやwww?完璧だろw??』
桐生はレイナを安心させるプランを話したが、レイナは浮かない顔をしていた。
『どした?なんか嫌なのか?』
『うぅん・・・そうじゃなくて・・・』
『んじゃどうしたんだよ?』
『・・・それじゃ勇人に迷惑いっぱいかけちゃうじゃん・・・それは嫌だなって・・・』
『そんな事か( ´Д`)フゥ』
『なにその顔っ!?私だって色々・・・』
『分かってるよ。でもそうしないとレイナ、学園つまんないだろ?同じクラスや他のクラスの奴とかと話したいだろ?』
『うん・・・色々聞きたいし、話したい・・・友達が欲しい・・・』
『じゃあそうなりたいって言うレイナに協力してやる奴が1人ぐらい居たって良いじゃないかwww♪♪』
『勇人・・・///』
『つーか、正義の味方になって世界を救うならまずすぐ隣にいる女の子を笑顔に出来なきゃだめだしな』
『・・・///』
『さーって、そろそろ学園長さんに会いに行くかぁ♪♪』
そう言いながら桐生は学園に向けて歩を進めた。
『(何?これ・・・///心臓がすっごく早くてドキドキいってる///勇人の事考えると恥ずかしい気持ちと寂しい気持ちが合わさってよくわかんないよ・・・///これって・・・まさか・・・!いや・・・でも・・・)』
そう考えながら前を歩く桐生を見やった。
『(確かに勇人カッコイイし、凄く優しいし、頼りになるし、自分が強い事を威張らないし、謙虚だし・・・良いとこしかない・・・///)』
レイナは考えれば考えるほど桐生に対して特別な感情を認めざるを得なくなって来た。
『(そうなのかなぁ・・・でもそうって認めると納得いきそう・・・///他の女子がキャピキャピするのが分かる気がする・・・w)』
考え事が過ぎたのか、足が止まって遠くを見つめていたのだろう。目の前を歩いていた桐生はいつの間にか隣に立ち、レイナの様子を伺っていた。
『・・・』
『・・・うわっ!?な、なにっ?!』
『いや、なんか幸せそうに笑って考え事してたから近くで見てたw』
『・・・///!!』
その言葉でレイナは認めてしまった。恐らく、いや、確実に勇人の事を好きになったのだと。

ーー
ーーー
『(いやぁ、ギャルゲーやってて良かったぜwww全部がそうじゃないけど会話する上で役に立ってるのは有難いwww)』
そう考えながら歩いている桐生は自分の心を落ち着かせていた。
『(しっかし、異世界とはいえど真ん中で可愛いのは勘弁して欲しいぞw免疫ないから取り繕うのに必死だわwwwしかも典型的な恋の始まり的なイベントも起きるしwww)』
そう。彼はリコルの件についてイベントと勘違いしていた。あまりにもタイミングが良く、あまりにも噛ませ犬でしかない相手だった為である。
『(でも、あそこまで脈アリな反応されると期待しちゃうよなぁ・・・彼女とか出来た時ないからどんな風にしたらいいか分かんないけど・・・でももしレイナが彼女になったら幸せだろうなぁ・・・あんな可愛い彼女とか自慢したくなるもんなwww)』
考え事が深かったのか、いつの間にかレイナと離れてしまっていた。
『(あ、やべ。ちゃんと一緒に歩いていかねーと俺もまだ道がわからんからなw)』
そう考えながら来た道を戻るとレイナは上の空で幸せそうな顔で遠くを見ていた。
『(尊い・・・っ!!!!)』
桐生は抱きしめたい衝動を我慢して覗き込むことにした。
『(やっぱり可愛いよなぁ・・・あの勘違い野郎にはやりたくないから、喧嘩になったらフルボッコしようかな・・・www)』
桐生はそんな事を考えながら目の前の彼女にしたい子を見ていた。

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