異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第6節 この世界へ呼ばれた意味

チュンチュン・・・
雀だろうか?朝の木漏れ日の中静かな鳥の囀りを聴きながら桐生は目を覚ました。目の前には昨日絶叫をし、疲れ果てたまま寝たレイナの姿があった。
『(これは・・・ホントはラッキータイムなんだろうけどな・・・w)』
そう思ったがそこは正義の味方を目指すもの。同意ならいいがそんなゲスな事は有り得ないと頭を振り、朝食の準備に入り始めた。
『むー・・・』
『お?おはよう♪よく寝てたなwww?朝飯の準備そろそろ終わるから顔洗って髪とかしてこいw』
レイナはまだ眠いのか目を擦りながら言われるがままに顔を洗おうと辺りを見回すが、ここは旅の途中に寄った小屋なので洗面所なるものが無いことに気付いた。
『むー・・・』
レイナはなにも準備が出来ないと悟ったのかとりあえず装備を整えようとした。
『あ、悪い。お湯無かったな?今作ってやるから待っとけ』
そう言うと桐生は朝食の準備の時に気付いた方法でお湯を作ってあげた。火の魔法と水の魔法を掛け合わせ適温のお湯を作り、容器に入れてやった。
『ほれ、ちょっと熱いかもしれないから気を付けて使えよ?』
レイナはその一部始終を見ていたのか、目が点になっていた。
『どした?』
『・・・ホント・・・なんでも出来るんだね・・・(笑)』
そう言うと出来上がったばかりのお湯で身支度を済ませ始めた。

ーー
ーーー
『よし、じゃあ引き続き行くか!』
『おー・・・』
『なんだよテンション低いな??・・・女の子の日か?』
ゴンっ!!
『な、なんて事言うのよ!?』
そう答えながらレイナは桐生に鉄拳を食らわせた。
『いたっ?!普通に痛いぞバカっ!?』
『殴られる事を言う勇人が悪いのっ!もぅっ!恥ずかしい事聞かないでよっ!』
そう言ってスタスタと先に歩き始めたレイナを追いながら桐生は『悪かったから怒るなよーw』
と謝りながら小走りに近寄って行ったのだった。

『それで・・・』
『んー?』
『昨日の話だが、俺はどのクラスに入れられるんだ?』
『あー・・・。』
『なんだ、歯切れが悪いな?』
『なんてゆーか、昨日勇人のスキルとか魔法とか確認したけど・・・』
『うん』
『普通じゃないから分かんない(笑)♪♪』
『どゆことwww』
『真面目な話、勇人のステータス自体が異常なんだよね。スキル云々コミコミで。まぁ世界が大変な時に呼ぶくらいだから異常なのは仕方ないとして、そんな人をどうやって判断できるのか私には分かんない↓↓』
『それもそうか・・・』
桐生は自分のステータスの異常さに薄々気付いた。昨日の話の中でレイナのステータスも聞いたが剣術と加護が使えるとの事だった。それも2年近く技術を磨いて、やっとSクラスになれたのだ。それをポっと湧いた桐生は魔術、剣術(拳だが)、レンジャー、加護の4つを保持していて尚且つ力やスピード、技術や魔力量も尋常ではない数値を持っていたのだ。それを判断など出来るはずもない。
『でも学園長に聞いたらなんかしらの方法とか手段を出してくれるはずだし、召喚してくれた私のクラスメイトにも会わなきゃだからやっぱり学園に一度行った方がいいかも』
レイナはここで離れるのは困るといった顔で桐生に早口で説明をした。
『分かってるよ。現状ウチらだけで判断できる事が少なすぎるから、やっぱり学園に行ってから考えるのが一番ベストだ』
桐生は安心させようと出来るだけ穏やかに優しく今後の方針を伝えた。
『う、うん♪じゃあもうちょっとだから行こっか♪♪』
桐生の返事が嬉しかったのかレイナは満面の笑みで答えた。桐生はその雰囲気を壊さないように話を学園の編入についてレイナに聞いた。
『てか、さ?編入するにしろなんかしらの試験とかってあるんだろ??』
『うん、あるよ。筆記もあるけど、大体は実力判定で決まるねぇー。あと、モンスター相手の戦闘試験かな?』
『モンスター相手?ゴブリンとかか?』
『うぅん。その人の実力から先生達が判断したちょっと上の実力のモンスターとかが相手になるのがほとんど。私もそうだったし。』
『レイナの時は・・・』
話を続けようとした時、桐生は気配を察した。殺気、は当然だがそれに合わせて異臭も感じた。レイナは気配よりもその臭いに反応した様子だった。
『こっち!!』
2人は同時に駆け出しその原因を確かめに向かった。
『あれは・・・』
目の前にはゴブリンの様な顔をしているが体格が異常に大きなモンスターがいた。近くまで行くと先程の異臭がより強く感じた。清潔感は全くなく、血のような鉄の匂いも混じった、不快な臭いだった。
『トロール・・・』
『トロール?』
そう聞き返しながら桐生はモンスターの情報をスキルで読み取った。
トロール。レベル15。武器は棍棒。
『そう。トロール。性格は残忍で、パワーはゴブリンと比べ物にならないし、何より臭いが最悪。』
そう言うとレイナは細剣を抜いて隙を伺っていた。
『確かにゴブリンよりは強そうだ。レベルもダンチで違うしな。っ?!あの棍棒・・・』
桐生はトロールの持っている棍棒に注目した。その棍棒には真新しい赤い水が付着していた。恐らく・・・血だろう。それも先程誰かを襲ったと思われる程鮮やかな色をしていた。
『野郎・・・っ!』
そう言うと桐生は考えるより早くトロールの近くまで走り出した。後ろでは『ち、ちょっと勇人っ?!』とレイナが焦っていたがもはや桐生の耳には届いていなかった。
ザッ!!
『?!?!』
トロールはいきなり目の前に現れた桐生に驚いていた。
『てめぇ・・・』
桐生はトロールを目前に睨みをきかせた。レイナは後ろから走ってきたが声をかけることが出来なかった。誰もが理解出来るほど怒りを顕にしていたからだ。
『(怒ってる・・・あの優しい勇人がなんでそんなに・・・?)』
『てめぇ!その血は誰のだ?!』
桐生は叫ぶがトロールには伝わる訳もなく、むしろトロールは獲物が来たとニヤりと笑みを零しながら棍棒を構えるのだった。
『グッグッグッグッ・・・』
『・・・そうか。今度は俺らが獲物だと言いたいか・・・』
『なら・・・てめぇにもその殺された誰かと同じ、いやそれ以上の苦しみと痛みを与えてやるよ・・・』
その言葉と同時に桐生は構え、裂帛の気合いを出した。
『はあぁぁぁぁぁぁっっっ!!!』
『グッ?!グアァァァァッッ!!』
それを感じたのかトロールは構えた棍棒を横に薙ぎ払う様に振り抜いた。
ゴァァァァァンッッッ!!!
激しい衝突音にレイナは身をすくませ目閉じた。トロールの力はただの人間では消し飛ぶ程のものだ。それをまともに受けてしまえば魔法やスキルで強化していない限り無事ではすまないのは常識である。だが・・・。
『この一撃がこの棍棒に付いた誰かの死んだものだったのか。痛かったろうな。死にたくなかっただろうな・・・。今仇はとってやるから・・・安心しろ・・・』
独り言の様に呟いた桐生には傷などなく、攻撃された事すら無かったかのように平然と立っていた。そして、振り抜かれる筈だった棍棒を掴み・・・持ち上げた。トロールは取られまいと両手で掴むがその自分ごと持ち上げられると思わず焦りが目に取れた。
『うぅるぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
雄叫びとともに桐生は持ち上げたトロールごと投げた。投げられたトロールは地面を2、3度跳ね転がっていった。
『うそ・・・』
レイナはその光景に愕然とした。それもそのはず。トロールの体重はおよそ100キロ。だが目の前の相手はそれよりも遥かに大きい。目測だが200はあろうかという巨漢。そんなものを片手で持ち上げ、投げるなど不可能である。
『?!?!?!』
トロールは何が起きたのか理解出来ずその場に起き上がる事すらままならなかった。そこに間髪入れず桐生は距離を詰めトロールの胸部に乗った。
『お前が殺した時は一撃だろうが、俺はそんな優しさをテメーにくれてやる義理はねぇ。・・・まずは左腕だ』
桐生はそう言うと左腕目掛けて蹴りを入れた。
ボンッ!!!
弾ける音と共にトロールの腕は潰れた。もはや回復など無理な程のダメージにトロールはもがき始めた。
『右腕』
そう宣言すると次は右腕を
『左足』
『右足』
立て続けに潰していくとトロールは叫ぶ事すらしなくなり痙攣だけをしていた。
『おい、起きろ。こんなものじゃすまねーぞ?』
トロールの顔に目線を合わせ脅す様に語る。トロールは許して欲しいのか首を振り、助けを求めるように泣き叫んだ。言葉は分からずともレイナはその様にしか受け取れなかった。
『お前が殺した人間は同じ顔をしたんだろうな。それをお前は楽しそうに殺したんだろ?・・・もう死ぬしかねーんだよ』
そう発すると桐生は顔の上に跨り地面・・・トロールの顔に目がけ拳を構えた。
『死んで詫びろ』
と言うと同時に振り上げた拳を一気に振り下ろした。
グチャ・・・ドォォォォォォォンッッッ!!!
何かが潰れた音と地面を割る音が同時に聞こえると辺りには静寂が訪れた。
『・・・』
レイナは声を掛けようか迷っていると桐生が振り返りいつもの優しい声で、だが虚しさや悲しみが混ざった声をかけてきた。
『こいつが来た道を戻ろう・・・死んでるとはいえ埋葬してやりたいし、遺品でもあれば家族に届けてやりたい・・・』
その言葉にレイナは強く頷いた。そうだ。この人は正義の味方になりたいんだ。自分が助けれなかった人への後悔と何も出来ない自分に対する怒りが、このモンスターを倒すのに顕になったのだとレイナはそう感じた。
ガサガサガサガサ・・・
森の中を進むと何かが暴れた様な痕跡を見つけた。周りには・・・必死に逃げたのだろう。木々が倒れ、血が辺りに飛び散っていた。その中心に・・・。
『・・・ウソ・・・』
『・・・』
昨日自分達が話をした旅の商人と思われる、いや本人だろう。の遺体が無残に捨ててあった。体は元の形を取っておらず、人か判断するのすら難しい状態だった。だが身に付けている衣服が同じだという点で2人は沈黙してしまった。
『すまん・・・助けてやれなかった・・・』
そう言うと桐生は屈んで膝を立て手を合わせた。この世界での祈りはどんな形か分からないが桐生は自分のいた世界て行う様に頭を下げた。
『勇人・・・』
レイナはそんな悲しい背中を見て、同じ様に頭を下げた。
『埋めてやろう・・・せめて安らかに眠れるように・・・』
桐生は近くに穴を掘って静かに埋めてやった。そっと、優しく、赤子を抱きかかえるように・・・。
『待って?この人手に何か握ってる』
レイナは何かに気付いたのかその人の手を開き始めた。すると何かを見つけたのだろう。レイナは静かに涙を流した。
『最後まで・・・想っていたんだね・・・』
レイナはそれを持って桐生に近寄った。桐生はそれを見ると心が激しく打ちつけられた。それは・・・眩しい程の笑顔の女の子と、元気いっぱいな雰囲気の男の子、そしてその二人と最愛の人を見つめる綺麗な女性が映っている写真だった・・・。
『これは・・・一緒に埋めてあげよう・・・幸せになれる様に・・・』
桐生はそれを胸の上に乗せてやり、髪の毛を少しだけ切って紐で括った。
『グスッ・・・』
レイナは堪えられなかったのだろう。静かに流していた涙は大きくなりやがて、泣き出してしまった。
『俺は・・・こんな風に不幸になる人達を救いたい。誰もが安心して、笑って過ごせる世界にしたい。レイナが泣かなくていい世界を作れる様な正義の味方になる・・・俺がこの世界に呼ばれた理由なんかより、そうなりたいんだ。』
そう言って泣き始めたレイナを後ろから軽く抱き、頭を撫でてやった。優しく心を落ち着く様に・・・。
桐生は元の世界では感じた事も無い命の犠牲に深い悲しみと正義の味方になる、という強い決意を胸に抱いたのだった・・・。

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