異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??

頤親仁

第129話『参会』

「あ〜〜〜ッス」
眠たげな声と共に、マサタは教室の扉を開ける。
そして、立ち止まる。
後に続いていたサナエが、その背中にぶつかる。
「む、済まぬマサタ。如何為たんだ?」
が、サナエの問いかけにマサタは返答しない。
代わりに、前方の景色に視線を奪われ、呆然と立ち尽くしていた。
「マサタ、一体どうし………っ!」
その景色を見て、サナエもまた驚愕を隠せなかった。
「ちょ、ちょっと!アンタ、コウジから離れなさいよ!」
コウジの左腕に抱きつくように、べったりとくっつきながらヒカリが叫ぶ。
「あらぁ?なぜです?私がどうしようと私の自由でしょう?もっとも、ヒカリさんがコウジさんと恋仲とおっしゃるのなら話は別ですけど。」
対してコウジの右腕に抱きつくように、同じく密着する少女。長く伸びた雪のような白い髪と、エメラルドグリーンの瞳。少女の名前は河本カナミ。現在、学園最強の少女である。
「おいおい、オレのために喧嘩しないでくれよ子猫ちゃんたち……。(イケボ)」
正しく両手に華と呼ぶに相応しいその状況で、コウジは完全に調子に乗っている。
「もう一回言ってみろよ」
冷たい銃口が、ヒカリによって顎下に突きつけられる。
「ヤバすぎだろ。マフィアが道徳の先生でもしてたか?」
「あらあらぁ、恐ろしいですね〜。コウジさん、守って下さい〜」
そのヒカリの行動を逆手に取り、カナミはさらにコウジに身を寄せる。
とても学園一位とは思えないような猫撫で声をあげ、和服から覗く僅かな柔肌を、これでもかと見せつける。
きっと辞書で「あざとい」と調べたらこの行動が一例として出るであろう。
その彼女の誘惑に耐える為、必死で目を逸らそうとするコウジ。
「ヒカリ…………。オレが河本さんに手を出したら………迷わず銃口を引いてくれ……ッ!」
「出さなくても引くわよ」
「なんでだよ」
と、そこで、黙っていたマサタが、突如として声を上げた。
「なっ、ななななななんスかーー!」
「いやマサタ、お前がどうした」
その声に驚いたように、コウジが冷静にツッコむ。
「どうもこうもないっスよー!なんスか!この羨ましいシチュエーションは!?これが俗に言う『ゆうべはお楽しみでしたね』ッスか!?催眠でもしたんっスか!?それとも媚薬ッスか!?夜の等重変換が炸裂っスか!?薄い本みてえなことしたっスか!コウジ先輩の×××がヒカリ先輩と河本先輩の×××を×××して×××が×××なくなるまで×××を×××たんスね!この××××××××××め!」
ここが学園でなければ捕まっていた。いや、捕まる程度で済んでいた。
直後マサタは、ヒカリ、カナミ、サナエ、レンタにより、見るに堪えない姿になってしまった。
「弟が失礼した。しかし、何故こんなことになっているんだ?」
コホンと咳払いをして、サナエが問いかけた。
「い、いやぁ…。オレもよくわかってないんだよ。」
それにコウジが答える。
「あら。昨夜のことは『2人だけの秘密♡』ってことですか?コウジさんがそうしたいのなら構いませんけど〜」
嬉しそうに頬を赤らめたカナミが微笑む。
「ちょっと!アタシと美那原だって見てたわよ!何が2人だけの秘密♡よ!」
「あらぁ。じゃあ、2人だけの秘密に”する”しかないかしら?」
嫌な沈黙が教室内を満たす。
しかしそれは、外部からの干渉によって破られた。
静かに開放される扉と、そこから響くハイヒールの音。
「はぁーい。それじゃぁ、昨日の【排斥対象イントゥルージョン】の対処の振り返りを………って、あれ?」
間の抜けた声はSSクラス担当教諭、簑田紗枝みのたさえのものだった。
「あ、あのー……。席着いてくれる……?」
戸惑いながら、簑田が指示を出す。
それを受けて、ヒカリたちは、それぞれの席へと帰っていった。

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