異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??

頤親仁

第109話『非分』

私はきっと、ハナに嫌われている。

裕福で聡明な両親のもとに生まれた私は、両親の教育のおかげで優秀な成績を修め続けた。
テスト結果の順位が二桁になったことはなく、通知表が満点じゃなかったことなどない。
でも、それはあくまで数字とデータに過ぎない。
本当の私は、もっと退屈な人間なのだろう。
友人がいたことはなく、クラスメイトに勉強を教わったことも、教えたこともない。
だから私は───────────────ハナが羨ましかった。
学校で見かけるハナは、常に友人と談笑していて、常に笑顔だった。
私にないものを、ハナは全て持っていた。
校舎裏で男子生徒に告白されるのを見たこともあるし、学園祭の演劇で皆がこぞってお姫様の役に彼女を推薦したと聞いた。
本当に、本当に、心底羨ましかった。
成績なんてどうだってよかった。偏差値なんて何でもよかった。
私にも、友人が欲しかった。
ハナが友人を家に招いたときは、気が狂うかと思った。
ハナが、私よりも成績が悪い奴から勉強を教わっているのが、腹立たしかった。
でも、それも仕方がないと分かっていた。
それもそうだ。私なんかよりも、あの子達の方が、気楽に話せてしまうのだろう。
だからハナは、彼女らに教えを請うた。
だからハナは……………私を捨てた。
そんな、コミュニケーション上手で、人望があつく、誰にでも優しい彼女を、両親は拒んだ。
成績が不出来だからと言って、彼女を虐遇した。
…………………………………失望した。
自分を生んだ父と母が、これほどまでに昏愚こんぐなのかと酷く落胆した。
所詮は成績と偏差値しか見ていないのだろう。
人間のステータスを、学校で発行される下らぬ紙切れ一つで見抜けると思っている狂痴である。
レナはいつからか、両親をそう見下した。
であるにも関わらず、レナは、両親が自分を褒め、ハナを貶すのを見て、罪悪感混じりの優越感を心のどこかで感じてしまっていた。
レナのハナに対する羨望は、嫉妬へと切り替わっていた。
レナの取り柄は、勉強と成績しかなかった。
だからせめて、それだけでもハナを見下せるようにと、必死で勉強をした。
ハナが友人と楽しそうに会話をしているところを見かける度に、コイツは自分よりも馬鹿だと、暗示のように自分に言い聞かせながら正気を保った。
そんな下らない自己暗示をかけても、自分がハナよりも劣っているという事実は覆らないことを知りながら、そうすることでしか自分を肯定できなかった。
きっとそうなのだろう。
私は、妹よりも、自分のことが好きで、だから平気で見下して、自分の為に踏み台にする。
私は──────────────────────────姉、否、人間失格だ。

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