異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
第96話『心熟』
それからのハナの生活は、過去最高に充実していた。
日中、友人らが学校にいる間は、ネットカフェや漫画喫茶などで時間を潰し、放課後には友人と皆でカラオケやショッピングに行った。
友人らと放課後に遊んでも、殆どの友人とは22時には解散し、友人たちは翌日に備えた。
それでも、門限が19時だったハナにとっては、人生で初めての夜遊びであった。
ある程度の期間は貯めていたお小遣いで遊び、それからはモデルの仕事による給料で生活していた。
既にハナの知名度は決して低くはなく、仕事で生計を立てるのに十分な知名度を獲得していた。
そんな生活をしていく中でも、特に親しくしてくれた友人がいた。
彼女の名前は椎名祥子。両親と不仲と言う訳ではないが、互いに相手に対して興味を示さないため、夜通し遊んで朝に帰宅をしようと怒られないが、勉強で好成績を修めようと褒められない。
そんな冷め切った親子関係だった。
その環境のせいか、彼女自身は少し不真面目で、歯に衣着せぬ物言いをする少女だった。
それでも彼女自身は優しく、そして面白かった。
だから、一緒にいて退屈したことはなかった。
ハナと祥子は、お互いの家庭環境を知ったことで一気に親密になった。
カラオケで、二人で朝まで歌い明かしたこともあった。
居酒屋で、ひたすらにお酒を飲んだこともあった。
街中でナンパされたときは、祥子が相手の股間を蹴り上げ、そのまま走って逃げ出した。
電車に乗って、海沿いの町まで遊びに行ったこともあった。
そこで近くの遊園地に行き、観覧車から水平線に沈んでいく夕日を眺めた。
あの、遊び終えた寂しさに、美しさが拍車をかけていく瞬間。
心のどこかで、こんなに楽しい時間が永遠でありますようにと、幾度となく願った。
それでも日は暮れ、観覧車はゆっくりと地へと落ち着いてしまうのだった。
「ねえ、この後温泉行かない?海が綺麗に見えるところがあるんだって!」
祥子が楽しそうに提案する。
「え!?ホントに!?いいね!行きたいね!」
ハナはその提案を快諾する。
不平も不満も不安もない。
それはきっと、二人ならどこだって楽しめてしまうからだろう。
「じゃあ決まり!二人一部屋で予約取っちゃうよ!」
「うん!ありがとね!」
楽しみが終わり、また一つ楽しみが生まれる。
ああ、なんて幸せなのだろう。
それから二人は電車に乗り、旅館の最寄り駅で降車した。
帰宅ラッシュの電車内は少し窮屈だったが、それも10分ほど耐えればすぐに目的の駅へと到着してしまう。
ホームを少し歩き、改札を抜ける。
「ここを……左かな?」
祥子が、小首を傾げながら地図アプリとにらめっこをしている。
ハナもその画面を覗き込む。
「んー、歩いて1.2㎞くらいだね」
ハナが目的の方向を指さしながら、そう言った。
その時だった。
「探したぞ。ハナ。」
背後から、重苦しく低い声が聞こえた。
自分の名を呼ばれ、慌てて振り返った。
そこには───────────スーツを着た父が立っていた。
日中、友人らが学校にいる間は、ネットカフェや漫画喫茶などで時間を潰し、放課後には友人と皆でカラオケやショッピングに行った。
友人らと放課後に遊んでも、殆どの友人とは22時には解散し、友人たちは翌日に備えた。
それでも、門限が19時だったハナにとっては、人生で初めての夜遊びであった。
ある程度の期間は貯めていたお小遣いで遊び、それからはモデルの仕事による給料で生活していた。
既にハナの知名度は決して低くはなく、仕事で生計を立てるのに十分な知名度を獲得していた。
そんな生活をしていく中でも、特に親しくしてくれた友人がいた。
彼女の名前は椎名祥子。両親と不仲と言う訳ではないが、互いに相手に対して興味を示さないため、夜通し遊んで朝に帰宅をしようと怒られないが、勉強で好成績を修めようと褒められない。
そんな冷め切った親子関係だった。
その環境のせいか、彼女自身は少し不真面目で、歯に衣着せぬ物言いをする少女だった。
それでも彼女自身は優しく、そして面白かった。
だから、一緒にいて退屈したことはなかった。
ハナと祥子は、お互いの家庭環境を知ったことで一気に親密になった。
カラオケで、二人で朝まで歌い明かしたこともあった。
居酒屋で、ひたすらにお酒を飲んだこともあった。
街中でナンパされたときは、祥子が相手の股間を蹴り上げ、そのまま走って逃げ出した。
電車に乗って、海沿いの町まで遊びに行ったこともあった。
そこで近くの遊園地に行き、観覧車から水平線に沈んでいく夕日を眺めた。
あの、遊び終えた寂しさに、美しさが拍車をかけていく瞬間。
心のどこかで、こんなに楽しい時間が永遠でありますようにと、幾度となく願った。
それでも日は暮れ、観覧車はゆっくりと地へと落ち着いてしまうのだった。
「ねえ、この後温泉行かない?海が綺麗に見えるところがあるんだって!」
祥子が楽しそうに提案する。
「え!?ホントに!?いいね!行きたいね!」
ハナはその提案を快諾する。
不平も不満も不安もない。
それはきっと、二人ならどこだって楽しめてしまうからだろう。
「じゃあ決まり!二人一部屋で予約取っちゃうよ!」
「うん!ありがとね!」
楽しみが終わり、また一つ楽しみが生まれる。
ああ、なんて幸せなのだろう。
それから二人は電車に乗り、旅館の最寄り駅で降車した。
帰宅ラッシュの電車内は少し窮屈だったが、それも10分ほど耐えればすぐに目的の駅へと到着してしまう。
ホームを少し歩き、改札を抜ける。
「ここを……左かな?」
祥子が、小首を傾げながら地図アプリとにらめっこをしている。
ハナもその画面を覗き込む。
「んー、歩いて1.2㎞くらいだね」
ハナが目的の方向を指さしながら、そう言った。
その時だった。
「探したぞ。ハナ。」
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