異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
第83話『錯認』
「〈境界超越〉ァァアアアアア!!」
マサタが力の限りに叫んだ瞬間、マサタとアツシとの間に巨大な鏡が聳え立った。
マサタによる3次元の障壁だ。
「意味ねェンだよ!〈摩滅戦士〉!」
そう叫び、アツシは指を鳴らす。
指が鳴ると同時、マサタは平衡感覚を失い、転倒した。
否、平衡感覚を失ったのではない。
地面から摩擦力が奪われ、立てなくなってしまったのだ。
見ると、地面には血が着いていた。
無論マサタ自身のものもあるが、アツシの血液も付着していた。
先程までマサタ自身が横たわっていたせいで、マサタを介してアツシの血液が地面に付着していたのだ。
「ちき………しょぉう……!」
そんなことに目を白黒させている間に、アツシは3次元の壁を回り込み、マサタへと向かっていた。
何か、何か良い手は……。
「〈境界超越〉!」
再びそう叫び、3次元の障壁を消す。
そして、自分より右側の空間を距離軸が一つ少ない2+1次元へと書き換える。
そうすることで、自身の肉体を摩擦力0の床から引き離すことが出来る。
「あンだけカッコつけときながら逃げてンじゃねェよォ!」
そう言うと、走行中で前傾姿勢だったアツシの肉体は、より水平に近づく。
猛スピードでアツシが駆けて来る。
だが、それでいい。
マサタは、床に転がる薙刀を拾い上げた。
マサタがあの地面からここへと移動した真の目的は、手元から離れてしまった薙刀を回収することだった。
そして、その薙刀でアツシを迎え撃つ。
アツシがマサタの射程圏内に突入すると同時、マサタはそれを一気に水平に振り抜く。
だが。
「読まれてねェと思ったのかァ?」
アツシが左前腕でそれを受け流す。
首に切り掛かった時と同様、刃が逃げていく感覚。
摩擦のない肉体への峰打ちは、峰の移動方向と狙った肉体の部位が、直角に近いことでその効果を生んでいる。
先刻の首への峰打ちが有効であったのは、首に対して峰が直角に移動し、加えて仮にある程度滑ったとしても、肩や顎に衝撃を加えることが出来るからだ。
仮に摩擦の無い肉体へ水平に峰打ちを行うとしても、その身体の部位が水平に近い角度であれば、峰打ちすらも滑らせることができる。
「お前の負けは変わンねェンだよォ!!」
アツシがそう叫び、さらに距離を詰められる。
これほどの接近戦になると、マサタの薙刀では対処が出来なくなる。
目と鼻の先まで接近したアツシは、手にしているナイフの柄をマサタの鳩尾へと叩きつける。
「…ンげァあ!」
先刻の膝蹴りによる痛みが抜けない腹部に、更なる衝撃を加えられることで、鈍痛が脳まで突き抜け、思わず腹を抑える。
そして、蹲ることで曝け出されたマサタの背に、アツシはナイフを突き立てた。
「うあああああああああああああああ!」
耐えがたい激痛に、思わず絶叫する。
だが、ここで怯むわけにはいかない。
まだ、僅かだが、動ける。
「〈境界超越〉ああああああああああ!」
半ば反射の様に、才華で前方の空間から距離軸を一つ消す。
当然ながら肉体は前方へと移動する。
マサタは、奥歯が砕けるほど歯を食いしばりながら着地し、ゆっくりと体を起こした。
だが、眼前にアツシの姿はなかった。
次元を繰り下げた際に消し飛ばしたのだろうか。
仮にそうだとしても、マサタが低次元へ転移させた空間は常にマサタの手の届くところにある。
そのため、アツシを再びこの次元へと戻すことも可能である。
俺の…………………勝ちだ。
そう思った。
いや、思いたかった。
その時だ。
マサタは、あることに気がついたのだ。
自分がまだ─────決闘終了の音を聞いていないことに。
マサタが力の限りに叫んだ瞬間、マサタとアツシとの間に巨大な鏡が聳え立った。
マサタによる3次元の障壁だ。
「意味ねェンだよ!〈摩滅戦士〉!」
そう叫び、アツシは指を鳴らす。
指が鳴ると同時、マサタは平衡感覚を失い、転倒した。
否、平衡感覚を失ったのではない。
地面から摩擦力が奪われ、立てなくなってしまったのだ。
見ると、地面には血が着いていた。
無論マサタ自身のものもあるが、アツシの血液も付着していた。
先程までマサタ自身が横たわっていたせいで、マサタを介してアツシの血液が地面に付着していたのだ。
「ちき………しょぉう……!」
そんなことに目を白黒させている間に、アツシは3次元の壁を回り込み、マサタへと向かっていた。
何か、何か良い手は……。
「〈境界超越〉!」
再びそう叫び、3次元の障壁を消す。
そして、自分より右側の空間を距離軸が一つ少ない2+1次元へと書き換える。
そうすることで、自身の肉体を摩擦力0の床から引き離すことが出来る。
「あンだけカッコつけときながら逃げてンじゃねェよォ!」
そう言うと、走行中で前傾姿勢だったアツシの肉体は、より水平に近づく。
猛スピードでアツシが駆けて来る。
だが、それでいい。
マサタは、床に転がる薙刀を拾い上げた。
マサタがあの地面からここへと移動した真の目的は、手元から離れてしまった薙刀を回収することだった。
そして、その薙刀でアツシを迎え撃つ。
アツシがマサタの射程圏内に突入すると同時、マサタはそれを一気に水平に振り抜く。
だが。
「読まれてねェと思ったのかァ?」
アツシが左前腕でそれを受け流す。
首に切り掛かった時と同様、刃が逃げていく感覚。
摩擦のない肉体への峰打ちは、峰の移動方向と狙った肉体の部位が、直角に近いことでその効果を生んでいる。
先刻の首への峰打ちが有効であったのは、首に対して峰が直角に移動し、加えて仮にある程度滑ったとしても、肩や顎に衝撃を加えることが出来るからだ。
仮に摩擦の無い肉体へ水平に峰打ちを行うとしても、その身体の部位が水平に近い角度であれば、峰打ちすらも滑らせることができる。
「お前の負けは変わンねェンだよォ!!」
アツシがそう叫び、さらに距離を詰められる。
これほどの接近戦になると、マサタの薙刀では対処が出来なくなる。
目と鼻の先まで接近したアツシは、手にしているナイフの柄をマサタの鳩尾へと叩きつける。
「…ンげァあ!」
先刻の膝蹴りによる痛みが抜けない腹部に、更なる衝撃を加えられることで、鈍痛が脳まで突き抜け、思わず腹を抑える。
そして、蹲ることで曝け出されたマサタの背に、アツシはナイフを突き立てた。
「うあああああああああああああああ!」
耐えがたい激痛に、思わず絶叫する。
だが、ここで怯むわけにはいかない。
まだ、僅かだが、動ける。
「〈境界超越〉ああああああああああ!」
半ば反射の様に、才華で前方の空間から距離軸を一つ消す。
当然ながら肉体は前方へと移動する。
マサタは、奥歯が砕けるほど歯を食いしばりながら着地し、ゆっくりと体を起こした。
だが、眼前にアツシの姿はなかった。
次元を繰り下げた際に消し飛ばしたのだろうか。
仮にそうだとしても、マサタが低次元へ転移させた空間は常にマサタの手の届くところにある。
そのため、アツシを再びこの次元へと戻すことも可能である。
俺の…………………勝ちだ。
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