異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
第47話『自棄』
「俺に………行かせてくれないか……」
コウジは、真剣な眼差しでサナエを見つめながらそう言った。
「コウジくん!?何言ってるんだよ!今回が初陣だろ!?君には危険すぎるよ!」
レンタが驚いた様子で抑止しようとする。
だが、コウジが頼み込んでいるのはあくまでもサナエだ。
彼女が許諾さえすれば、それでいい。
「其れは出来ぬ。これ以上長時間、人手を割く訳にはいかんのだ」
サナエがそう強く言う。しかし、ここで折れては意味がないのだ。コウジは一刻も早く、ヒカリの元へと向かわなければならない。
「そこをなんとか……」
コウジはそう言いながら深々と頭を下げ、心の底からサナエに頼み込んだ。
「……」
「頼む………」
コウジは完全に地面のみを見ていたが、サナエが難しい顔をしていることは容易に想像できた。
それだけ無茶な頼みをしているのだから当然だ。
しかし、サナエの反応はコウジの予想の範囲外だった。
サナエは、ふふっ。と優しく笑ったのだ。
「わかった、認めよう。但し、城嶺も塚田も無傷で戻ってこい。其れが条件だ」
真剣な、しかし、それでいてどこか優しい口調でそう言うと、サナエはコウジの背を叩いた。
「……っ!ありがとう!!」
サナエから許諾の言葉を受け取り、コウジは全速でヒカリの元へと向かった。
─────────────────
同時、ヒカリは。
銃口を【排斥対象】の中枢に向けて、発砲。
背後から【排斥対象】が接近、その前脚で攻撃を仕掛けられる。
ヒカリは大きく跳躍。身を翻し、着地し、発砲。
まだだ。まだ足りない。もっと、もっと殺さなきゃ…。
そんな焦燥が、ヒカリの頭を満たしていた。
今まで、ヒカリは「母親の治療費を稼ぐ」という名分のもとで【排斥対象】を殺してきた。
しかし、その母親を亡くした今、彼女に生きる目的や理由は存在しない。
彼女は考えた。
自分はこれから、一体全体何をして生きればいいのか。
人は、その生涯に目的があるから生きられる。些細な目的は引っ切り無しに生まれ、巨大な目的はその達成のために生涯を費やせる。
結婚がしたい、車が欲しい、子供が欲しい、欲しい物が買いたい、好きな芸能人のイベントに行きたい、志望校に入学したい……。そんな大小様々な目的は、人間という生体機関を駆動するのに必要不可欠な燃料である。
だが、今のヒカリにはその燃料が無い。底を尽きてしまったのだ。
車が燃料無しでは走れぬように、人は目的無くして生き続けることはできない。
ヒカリは答えを察していた。
─────────死ぬしかない、と。
ヒカリにとって、自らの一生に幕を下ろし、覚めることのない眠りにつくのは、決して難しいことではない。
しかし、ただ死ぬことはヒカリのプライドが許さない。
故にヒカリは
“このまま死ぬくらいなら一体でも多く【排斥対象】を道連れにしてやる”
そう決めたのだ。
そして、ヒカリは作戦を無視し、その双銃を巧みに操って【排斥対象】の殄戮を開始したのだ。
「まだ……まだよ…。もっと殺さなきゃ、アタシは死ねない!」
そう叫びながら、頻りに引き金を引く。
弾丸は、何も狂い無く【排斥対象】の中枢を破壊する。
次いで、前方に一体の【排斥対象】を確認。
ヒカリは【排斥対象】に向かって直進する。
だが、奇妙な浮遊感がヒカリの体を襲った。
視界が回転していく。
足元を見ると、散らばった大量の瓦礫があった。
その瓦礫を踏み、バランスを崩し、足首をひねってしまったのだ。
転倒するヒカリ。全力で駆けていたため、転倒する際に肉体が大きく前方へと投げ出される。
眼と鼻の先に、【排斥対象】がいる。
「(あ。アタシ、ここで死ぬのね。)」
奇妙な確信。
【排斥対象】の前脚がヒカリをめがけて振り下ろされる。
本来であれば一瞬であるはずが、何分にも引き伸ばされて感じられる。
引き伸ばされた時間は、ヒカリをより深い絶望と後悔へと叩き落とした。
もっと美味しいものを食べたかった。
もっとお弁当を作りたかった。
もっと歩きたかった。
もっとお喋りをしたかった。
もっと笑いたかった。
もっと怒りたかった。
もっと泣きたかった。
もっと叫びたかった。
もっと自分を現したかった。
もっと、もっと、もっともっと……。
もっと、生きたかった。
悔しさと悲しさが、互いに渦を巻きながら、ヒカリの肺腑を満たす。
しかし、その口から溢れたのは、絡んだ感情とは裏返しの言葉だった。
「………………バイバイ」
と、ヒカリは呟いた。
コウジは、真剣な眼差しでサナエを見つめながらそう言った。
「コウジくん!?何言ってるんだよ!今回が初陣だろ!?君には危険すぎるよ!」
レンタが驚いた様子で抑止しようとする。
だが、コウジが頼み込んでいるのはあくまでもサナエだ。
彼女が許諾さえすれば、それでいい。
「其れは出来ぬ。これ以上長時間、人手を割く訳にはいかんのだ」
サナエがそう強く言う。しかし、ここで折れては意味がないのだ。コウジは一刻も早く、ヒカリの元へと向かわなければならない。
「そこをなんとか……」
コウジはそう言いながら深々と頭を下げ、心の底からサナエに頼み込んだ。
「……」
「頼む………」
コウジは完全に地面のみを見ていたが、サナエが難しい顔をしていることは容易に想像できた。
それだけ無茶な頼みをしているのだから当然だ。
しかし、サナエの反応はコウジの予想の範囲外だった。
サナエは、ふふっ。と優しく笑ったのだ。
「わかった、認めよう。但し、城嶺も塚田も無傷で戻ってこい。其れが条件だ」
真剣な、しかし、それでいてどこか優しい口調でそう言うと、サナエはコウジの背を叩いた。
「……っ!ありがとう!!」
サナエから許諾の言葉を受け取り、コウジは全速でヒカリの元へと向かった。
─────────────────
同時、ヒカリは。
銃口を【排斥対象】の中枢に向けて、発砲。
背後から【排斥対象】が接近、その前脚で攻撃を仕掛けられる。
ヒカリは大きく跳躍。身を翻し、着地し、発砲。
まだだ。まだ足りない。もっと、もっと殺さなきゃ…。
そんな焦燥が、ヒカリの頭を満たしていた。
今まで、ヒカリは「母親の治療費を稼ぐ」という名分のもとで【排斥対象】を殺してきた。
しかし、その母親を亡くした今、彼女に生きる目的や理由は存在しない。
彼女は考えた。
自分はこれから、一体全体何をして生きればいいのか。
人は、その生涯に目的があるから生きられる。些細な目的は引っ切り無しに生まれ、巨大な目的はその達成のために生涯を費やせる。
結婚がしたい、車が欲しい、子供が欲しい、欲しい物が買いたい、好きな芸能人のイベントに行きたい、志望校に入学したい……。そんな大小様々な目的は、人間という生体機関を駆動するのに必要不可欠な燃料である。
だが、今のヒカリにはその燃料が無い。底を尽きてしまったのだ。
車が燃料無しでは走れぬように、人は目的無くして生き続けることはできない。
ヒカリは答えを察していた。
─────────死ぬしかない、と。
ヒカリにとって、自らの一生に幕を下ろし、覚めることのない眠りにつくのは、決して難しいことではない。
しかし、ただ死ぬことはヒカリのプライドが許さない。
故にヒカリは
“このまま死ぬくらいなら一体でも多く【排斥対象】を道連れにしてやる”
そう決めたのだ。
そして、ヒカリは作戦を無視し、その双銃を巧みに操って【排斥対象】の殄戮を開始したのだ。
「まだ……まだよ…。もっと殺さなきゃ、アタシは死ねない!」
そう叫びながら、頻りに引き金を引く。
弾丸は、何も狂い無く【排斥対象】の中枢を破壊する。
次いで、前方に一体の【排斥対象】を確認。
ヒカリは【排斥対象】に向かって直進する。
だが、奇妙な浮遊感がヒカリの体を襲った。
視界が回転していく。
足元を見ると、散らばった大量の瓦礫があった。
その瓦礫を踏み、バランスを崩し、足首をひねってしまったのだ。
転倒するヒカリ。全力で駆けていたため、転倒する際に肉体が大きく前方へと投げ出される。
眼と鼻の先に、【排斥対象】がいる。
「(あ。アタシ、ここで死ぬのね。)」
奇妙な確信。
【排斥対象】の前脚がヒカリをめがけて振り下ろされる。
本来であれば一瞬であるはずが、何分にも引き伸ばされて感じられる。
引き伸ばされた時間は、ヒカリをより深い絶望と後悔へと叩き落とした。
もっと美味しいものを食べたかった。
もっとお弁当を作りたかった。
もっと歩きたかった。
もっとお喋りをしたかった。
もっと笑いたかった。
もっと怒りたかった。
もっと泣きたかった。
もっと叫びたかった。
もっと自分を現したかった。
もっと、もっと、もっともっと……。
もっと、生きたかった。
悔しさと悲しさが、互いに渦を巻きながら、ヒカリの肺腑を満たす。
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