異世界無双の最強管理者(チートマスター) ~リセットマラソンで最強クラス【大賢者】に転生したら世界最強~
第9話:大賢者は話を聞く
俺とミーシャは石のオブジェクトを登っていく。
突起があるので、難なく登ることができた。十メートルの高さから眺めるフィールドは視点が違うからか、いつもより新鮮な気分になる。
と、同時にあまりにモンスターが少なく閑散とした様子に改めて驚かされた。
石の頂上では、ホワイトタイガーを攻撃していた女が腰を抜かして座っていることを確認する。
赤髪の綺麗な女性だ。大きい胸は全体に馴染んでいる。メタリックな装備はそれなりに高価な代物だろう。
俺たちがここに来たことには気づいているはずなのに、ずっと向こうを向いている。なんと言って話かけようかと思っていると、先に質問されてしまった。
「あなたたちはいったい何者?」
「ゲーム内で個人情報を聞くのはマナー違反なんだがな」
「はぐらかさないで。私が聞きたいのは強さの理由。そこの金髪の子はともかく、あなたの攻撃力は高すぎるわ。……高レベルプレイヤーの名前は一通り知っているはずだけれど、あなたのことは知らない」
ふむ、このあたりにいるから初心者かと思えばそうでもないのか。
「君が見たのはプレイヤーランキングのことだろう? あれは一か月ごとの更新だ。俺が入っていなくても不思議はない」
「嘘つかないで。一か月で圏外からここまで強くなるには何か理由があるはず……」
俺の強さはチートなのだが、この手の質問には答えたくないな。勝手に変な噂を流されても困る。
「君が知っていることが全てじゃない。確かに俺は少し特別かもしれないが、それを話すつもりはない」
「……そう」
赤髪の女はくいさがらなかった。
俺としては拍子抜けなのだが、いいタイミングで会話が切れたので聞きやすい。
「中程度のモンスターが減っていることは知っているか?」
「ええ、食べているからでしょう」
「そうだ。だが、モンスターがモンスターを食うことは基本的にはない。君は何が原因だと考えてる?」
赤髪の女が俺の目を見る。
「君じゃなくてセレナ」
「うん?」
「名前」
「あ、ああ名前な。そういえばまだ自己紹介してなかったか」
セレナは早く言えとばかりに俺を睨む。
「俺はミナトだ。それでこっちがミーシャ。今はパーティを組んでる」
ミーシャがペコリと頭を下げる。
「原因は多分だけどクエスト絡みだと思ってる」
「俺と同じ結論だな」
「……このゲームが乗っ取られてから、何か変わったことがあったのかなって調べてたんだけど、結果は何も変わってなかった。個体値とかドロップ確率とか」
それはそれは、ご苦労なことだ。地道な作業だっただろう。
「それなのに、モンスターがモンスターを食べるというところにだけ変化が生じた。……これってインスタントダンジョンに似てる」
「【死の森】に似てるよな」
「へえ……そんな昔のことまで知ってるのね。それなら話は早いわ。インスタントダンジョンは基本的にフィールドとマップ情報はほとんど変わらない。クリアのためのギミックが追加されたりっていうのはあるけど」
セレナは自身のユーザーインターフェイスを他者からも見られるように設定し、俺に向けた。
インスタントダンジョンの挑戦ページだ。一定レベルに到達し、解放の条件となるクエストをクリアすることで出現する。
経験値やアイテム、お金を稼ぐには重要なシステムだ。
「これを見て」
セレナは『挑戦する』を押した。
しかし、何の反応もない。エラーを吐くこともなければ、ウィンドウが消えることもなく。ただ何の反応もないだけ。
「課金システムが使えなくなってるのは知ってたが……こっちもダメなのか」
「私は強制イベントなんじゃないかっていう仮説を立てているわ。インスタントダンジョンに入れないんじゃなく、ここがすでにダンジョンの中なんじゃないかしら」
「……それは壮大な仮説だな」
「何もわからないからこその仮説よ。ミナトも信じたいことを信じればいいわ」
「ま、俺もセレナの仮説を信じたいね。ここがインスタントダンジョンだとすればボス的なやつを倒せばそれで解決するんだからさ」
「楽観的なのね」
「俺はクリアを目指してないからな」
「……本気? 現実世界に帰りたいとか思わないわけ?」
「うーん、思わないな。だってゲームの方が楽しいし」
「現実の身体は今ごろチューブに繋がれて生かされてるだけの状態よ? それでも?」
「それは結構なことだな。仮想世界が楽しければ関係ないと思うぞ」
セレナにとっては驚くべきことだったらしい。俺としては現実世界から帰還してその先に何があるのかを考えれば自ずと答えは出てくるものだと思っている。
大切な人がいるとかやりたいこととか、それがゲームでできないことなら帰りたい人もいるのだろう。
けれど、俺はそうじゃない。
「でも、じゃあなんでここに来ているの……?」
「暇つぶしかな。お金がなくても死なないけど、どうせなら仮想世界を満喫したいからな。そのためにクエストをやろうと思っただけのことだよ」
「そう……」
「まあ、俺は現状を確認してギルドに報告するだけだ。セレナもそろそろ村に帰った方がいいんじゃないか? 死なないにしても多分痛いぞ」
「そうね、そろそろ帰ろうかしら」
セレナは一匹でも多くモンスターを倒すことでモンスターの強化を遅らせるのが目的だったのだろうか。……まあいい、俺には関係のないことだ。
俺とミーシャは帰還結晶を使って村に戻った。
突起があるので、難なく登ることができた。十メートルの高さから眺めるフィールドは視点が違うからか、いつもより新鮮な気分になる。
と、同時にあまりにモンスターが少なく閑散とした様子に改めて驚かされた。
石の頂上では、ホワイトタイガーを攻撃していた女が腰を抜かして座っていることを確認する。
赤髪の綺麗な女性だ。大きい胸は全体に馴染んでいる。メタリックな装備はそれなりに高価な代物だろう。
俺たちがここに来たことには気づいているはずなのに、ずっと向こうを向いている。なんと言って話かけようかと思っていると、先に質問されてしまった。
「あなたたちはいったい何者?」
「ゲーム内で個人情報を聞くのはマナー違反なんだがな」
「はぐらかさないで。私が聞きたいのは強さの理由。そこの金髪の子はともかく、あなたの攻撃力は高すぎるわ。……高レベルプレイヤーの名前は一通り知っているはずだけれど、あなたのことは知らない」
ふむ、このあたりにいるから初心者かと思えばそうでもないのか。
「君が見たのはプレイヤーランキングのことだろう? あれは一か月ごとの更新だ。俺が入っていなくても不思議はない」
「嘘つかないで。一か月で圏外からここまで強くなるには何か理由があるはず……」
俺の強さはチートなのだが、この手の質問には答えたくないな。勝手に変な噂を流されても困る。
「君が知っていることが全てじゃない。確かに俺は少し特別かもしれないが、それを話すつもりはない」
「……そう」
赤髪の女はくいさがらなかった。
俺としては拍子抜けなのだが、いいタイミングで会話が切れたので聞きやすい。
「中程度のモンスターが減っていることは知っているか?」
「ええ、食べているからでしょう」
「そうだ。だが、モンスターがモンスターを食うことは基本的にはない。君は何が原因だと考えてる?」
赤髪の女が俺の目を見る。
「君じゃなくてセレナ」
「うん?」
「名前」
「あ、ああ名前な。そういえばまだ自己紹介してなかったか」
セレナは早く言えとばかりに俺を睨む。
「俺はミナトだ。それでこっちがミーシャ。今はパーティを組んでる」
ミーシャがペコリと頭を下げる。
「原因は多分だけどクエスト絡みだと思ってる」
「俺と同じ結論だな」
「……このゲームが乗っ取られてから、何か変わったことがあったのかなって調べてたんだけど、結果は何も変わってなかった。個体値とかドロップ確率とか」
それはそれは、ご苦労なことだ。地道な作業だっただろう。
「それなのに、モンスターがモンスターを食べるというところにだけ変化が生じた。……これってインスタントダンジョンに似てる」
「【死の森】に似てるよな」
「へえ……そんな昔のことまで知ってるのね。それなら話は早いわ。インスタントダンジョンは基本的にフィールドとマップ情報はほとんど変わらない。クリアのためのギミックが追加されたりっていうのはあるけど」
セレナは自身のユーザーインターフェイスを他者からも見られるように設定し、俺に向けた。
インスタントダンジョンの挑戦ページだ。一定レベルに到達し、解放の条件となるクエストをクリアすることで出現する。
経験値やアイテム、お金を稼ぐには重要なシステムだ。
「これを見て」
セレナは『挑戦する』を押した。
しかし、何の反応もない。エラーを吐くこともなければ、ウィンドウが消えることもなく。ただ何の反応もないだけ。
「課金システムが使えなくなってるのは知ってたが……こっちもダメなのか」
「私は強制イベントなんじゃないかっていう仮説を立てているわ。インスタントダンジョンに入れないんじゃなく、ここがすでにダンジョンの中なんじゃないかしら」
「……それは壮大な仮説だな」
「何もわからないからこその仮説よ。ミナトも信じたいことを信じればいいわ」
「ま、俺もセレナの仮説を信じたいね。ここがインスタントダンジョンだとすればボス的なやつを倒せばそれで解決するんだからさ」
「楽観的なのね」
「俺はクリアを目指してないからな」
「……本気? 現実世界に帰りたいとか思わないわけ?」
「うーん、思わないな。だってゲームの方が楽しいし」
「現実の身体は今ごろチューブに繋がれて生かされてるだけの状態よ? それでも?」
「それは結構なことだな。仮想世界が楽しければ関係ないと思うぞ」
セレナにとっては驚くべきことだったらしい。俺としては現実世界から帰還してその先に何があるのかを考えれば自ずと答えは出てくるものだと思っている。
大切な人がいるとかやりたいこととか、それがゲームでできないことなら帰りたい人もいるのだろう。
けれど、俺はそうじゃない。
「でも、じゃあなんでここに来ているの……?」
「暇つぶしかな。お金がなくても死なないけど、どうせなら仮想世界を満喫したいからな。そのためにクエストをやろうと思っただけのことだよ」
「そう……」
「まあ、俺は現状を確認してギルドに報告するだけだ。セレナもそろそろ村に帰った方がいいんじゃないか? 死なないにしても多分痛いぞ」
「そうね、そろそろ帰ろうかしら」
セレナは一匹でも多くモンスターを倒すことでモンスターの強化を遅らせるのが目的だったのだろうか。……まあいい、俺には関係のないことだ。
俺とミーシャは帰還結晶を使って村に戻った。
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