異世界無双の最強管理者(チートマスター) ~リセットマラソンで最強クラス【大賢者】に転生したら世界最強~
第2話:大賢者は戦い方を教える
狩場に移動する前に、ミーシャのステータスを確認することにした。
鑑定スキルを使う。
―――――ステータス―――――
名前:ミーシャ
クラス:錬金術師
レベル:1/99
能力値:
STR【攻撃力】30/99
CON【体力】20/99
DEX【素早さ】21/99
INT【知力】35/99
MEN【精神力】35/99
CHA【魅力】99/99
LUC【運】25/99
魔法・スキル:
【ユニーク】
1.錬金術
スキル【錬金術】の使用が可能。
【コモン】
1.ファイヤーボール
火の球を放つ。
2.ウォーターボール
水の球を放つ。
3.ウィンドボール
風の球を放つ。
4.ダークネスボール
闇の球を放つ。
5.ライトニングボール
光の球を放つ。
―――――――――――――――
ミーシャのクラスは錬金術師だった。
何も知らないニワカはこのクラスを「使えない」と馬鹿にするが、五大属性魔法を全て使える優れたクラスである。ステータスもバランスが取れている。
何も知らない初心者が直感で選んだのだとすると、センスがいい。
なお、魅力値はキャラクターの外見や、行動によって変化する。魅力値が戦闘技能などに関係することはないが、高くて困る物でもないし、使える魔法・スキルが少し増えるので恩恵はある。
【ウルフ】が生息する狩場、【はじまりの森】に着いた。
大人しそうな【ウルフ】はまるで可愛い犬のようにも見えるが、れっきとしたモンスターなので、手加減なく倒さなければならない。
と、その前にミーシャの不安を除いておかないとな。
「ミーシャ、よく見ていてくれ。今から俺はわざと【ウルフ】の攻撃を受けるが、VRゲームでは痛覚のみオフになっている。俺が実演して見せよう」
俺の攻撃力は初期値だが、能力値の攻撃力が高すぎるため、ちょっと殴るだけで倒してしまう。敵に与えられる攻撃力はSTRの値によって変わってくる。実際の攻撃力も【鑑定】のレベルが上がることで確かめられる。
俺は【ウルフ】に近づき、尻尾を軽く触った。
【ウルフ】は尻尾に触れられるのを極度に嫌う。俺は敵として認識されたようだ。
【ウルフ】の噛み付きをあえて受ける。
痛覚はオフになっているので痛みは感じない――はずだった。
「痛っ!」
噛まれた部分は手だ。感じるはずのない痛みを感じたため、咄嗟に声を上げたが、その痛みは小さい。例えるのは難しいが、少し手を切ってしまったくらいの痛みだ。
だが、痛みの度合いはこの際関係ない。
なぜ痛みを感じる……? VRゲームでは痛覚がオフになっているというより、そもそも組み込まれていないというのが通説だった。
バグだと考えると少しおかしい。痛覚システムなんてものを運営が密かに開発していたということになるのだ。
「だ、大丈夫ですか!? ミナトさん!」
心配そうにミーシャが駆け寄ってくる。
俺は素手でウルフを殴り、HPを刈り取るとそのアバターは消滅した。
俺のHPは1減っている。
「大丈夫だ。……仕切り直そう」
正体不明の痛覚は、すぐに回復した。だが、わかったのは俺の知っているゲームと少し変化しているということだ。リセットマラソン中もLLO2の情報サイトを確認していたから、新たなシステムが採用されたなら知っているはずだ。……もしかしてチートキャラ固有のシステムなのか?
わからないが、ともかくまずはミーシャのチュートリアルを終わらせることに全力を注ごう。
「じゃあ次はミーシャが【ウルフ】を倒してみようか。錬金術師は五大属性魔法を使えることが特徴だが、魔法を使うには少しコツがいるから、まずは剣で戦ってみよう」
「でも……私剣なんて持ってないですよ?」
ミーシャと俺は手ぶらである。
「アイテムストレージに剣が入っているはずだ。コマンドの出し方はわかるな?」
「えーと、これですか?」
他人からはコマンドを表示するAR画像は見られないのだが、ミーシャの手の動きを見れば予測はできる。コマンドを出すには上から下に振り下ろす動作と決まっているからだ。
ミーシャはコマンドを出せている。
「その一番上に【キャラクター情報】があると思う。その一つ下に【アイテム】があるだろ?」
「あります!」
「そのアイテムを指で押せば一覧が出てくる。その中に【ロングソード】があるはずだ」
ミーシャは【アイテム】を選択し、【ロングソード】のアイコンを押すと、剣が出現した。
【ロングソード】を抱える姿勢になる。
「これは初期装備だからそんなに攻撃力は出ないが、【ウルフ】を相手にするなら大丈夫だ」
ミーシャは剣を物珍しそうに見つめていた。
「でも……剣の振り方なんてわからないんですけど……」
「まあ、まずは実践だ。いざとなったら俺が助けるからやってみな」
「わかりました!」
ミーシャは剣を両手で構え、【ウルフ】に斬りかかる。
その動きは初心者丸出しの隙だらけだったが、斬りかかるときにはそれなりの剣士のような素早い動きに変わった。【ウルフ】の身体を横薙ぎの剣が抉り、一撃で仕留めることができた。
【ウルフ】は叫びをあげる間もなく、ぐったりとして、瞬時にアバターが消滅する。
「やったな、ミーシャ」
「なんか身体が勝手に動いて……?」
戦闘後のミーシャは少し興奮しているようだ。呼吸が少し荒い。妙に色っぽくて、可愛い。
「プレイヤー全員が剣の心得があるわけじゃないから、ゲーム内ではアシスト機能がついてるんだ。……そうしないと魔法なんて誰も使えないだろう? それと同じさ」
ミーシャは合点がいったのか、ほーっと納得顔で頷いた。
「あと三匹でクエスト達成だ。一人でできそうか?」
「はい! 頑張ります!」
ミーシャはセンスがいい。
クラス選択の直感でも思ったことだが、才能があるのだ。
一度剣を振ることを覚えると、アシスト機能をうまく使って【ウルフ】を瞬殺していた。
およそ一分ほどで三匹のウルフを仕留め、クエストを終えた。
パーティメンバーなら誰が倒してもクエスト達成となる。俺が一匹倒し、ミーシャが四匹倒したので合計五匹。これで完了だ。
「よく頑張ったな、ミーシャ。村に戻ろうか」
「思っていたより楽しかったです!」
そう言ってくれると、俺まで嬉しくなる。
俺もモンスターと戦った後は充実感がある。飽きるほどプレイしていてもこれは変わらない。
人との共感は他に代えられない何かがあるとしみじみ感じた。
村に戻ってクエストを清算し、新たなクエストを受ける。
その繰り返しで、無事にチュートリアルを終えた。ただ、オマケとして初心者への最後の誘導がある。
次なる村の神官に手紙を届けるというものだ。
その神官に手紙を届けさえすれば、その後はこの広大なワールドを自由に行き来し、仲間とモンスターを倒したり、クエストを受けたり、プレイヤー同士で戦ったりとなんでもできるようになる。
「ミーシャ、チュートリアルを終えてみてどうだ?」
「ゲームがとっても好きになれました!」
「そうか」
チュートリアルでは基本的な操作や、道具の使い方などを実戦形式で学ぶことができる。何度も繰り返していると非常に面倒くさいのだが、初心者にとっては全てが新鮮で、ありがたい仕組みなのは言うまでもない。ミーシャがゲームを好きになれたようで、俺が手伝った甲斐もあるというものだ。
「次の村まで移動に少しかかるんだが、まだ大丈夫そうか?」
チュートリアルクエストを終えるまでに二時間ほどかかっている。プレイヤーにはそれぞれ私生活があり、一日中ゲームができるわけではない。ミーシャの都合を考えて聞いたみた。
「大丈夫です! 私今日休みなので!」
「じゃあ、さっそく行こうか」
「はい!」
ミーシャが、小さな可愛らしい手を俺に差し出した。
笑顔が煌めき、その可愛い顔に花が咲いている。
そんな風に求められたら勘違いしちゃうじゃないか……。
俺は彼女の手を握った。
「これで私たちフレンドですね!」
「ああ」
チュートリアルの説明を覚えていたのだろう。手を握るアクションは、フレンド申請のショートカットになっている。手を差し出しだされるだけでも【フレンド申請を承認しますか?】のポップアップは表示されるので握り返す必要はないのだが、単純に彼女に触れたかったのかもしれない。
握り返すアクションは自動で承認の意思表示になる。
俺たちは初心者村を脱出し、次なる村へと歩みを進めた。
◇
村を出てすぐ、歩きながら俺はプレイヤー掲示板を確認した。
プレイヤー掲示板はワールド内のプレイヤーなら誰しもが自由に閲覧・書き込みができるゲーム内の電子掲示板だ。チュートリアルを終えることでやっとみられるようになった。
そこに書かれていたのは、常軌を逸した書き込みだった。
【助けてくれ!】【家族と会いたい】【脱出方法を検討するスレ】【なにか情報ください】
……何があったんだ?
鑑定スキルを使う。
―――――ステータス―――――
名前:ミーシャ
クラス:錬金術師
レベル:1/99
能力値:
STR【攻撃力】30/99
CON【体力】20/99
DEX【素早さ】21/99
INT【知力】35/99
MEN【精神力】35/99
CHA【魅力】99/99
LUC【運】25/99
魔法・スキル:
【ユニーク】
1.錬金術
スキル【錬金術】の使用が可能。
【コモン】
1.ファイヤーボール
火の球を放つ。
2.ウォーターボール
水の球を放つ。
3.ウィンドボール
風の球を放つ。
4.ダークネスボール
闇の球を放つ。
5.ライトニングボール
光の球を放つ。
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ミーシャのクラスは錬金術師だった。
何も知らないニワカはこのクラスを「使えない」と馬鹿にするが、五大属性魔法を全て使える優れたクラスである。ステータスもバランスが取れている。
何も知らない初心者が直感で選んだのだとすると、センスがいい。
なお、魅力値はキャラクターの外見や、行動によって変化する。魅力値が戦闘技能などに関係することはないが、高くて困る物でもないし、使える魔法・スキルが少し増えるので恩恵はある。
【ウルフ】が生息する狩場、【はじまりの森】に着いた。
大人しそうな【ウルフ】はまるで可愛い犬のようにも見えるが、れっきとしたモンスターなので、手加減なく倒さなければならない。
と、その前にミーシャの不安を除いておかないとな。
「ミーシャ、よく見ていてくれ。今から俺はわざと【ウルフ】の攻撃を受けるが、VRゲームでは痛覚のみオフになっている。俺が実演して見せよう」
俺の攻撃力は初期値だが、能力値の攻撃力が高すぎるため、ちょっと殴るだけで倒してしまう。敵に与えられる攻撃力はSTRの値によって変わってくる。実際の攻撃力も【鑑定】のレベルが上がることで確かめられる。
俺は【ウルフ】に近づき、尻尾を軽く触った。
【ウルフ】は尻尾に触れられるのを極度に嫌う。俺は敵として認識されたようだ。
【ウルフ】の噛み付きをあえて受ける。
痛覚はオフになっているので痛みは感じない――はずだった。
「痛っ!」
噛まれた部分は手だ。感じるはずのない痛みを感じたため、咄嗟に声を上げたが、その痛みは小さい。例えるのは難しいが、少し手を切ってしまったくらいの痛みだ。
だが、痛みの度合いはこの際関係ない。
なぜ痛みを感じる……? VRゲームでは痛覚がオフになっているというより、そもそも組み込まれていないというのが通説だった。
バグだと考えると少しおかしい。痛覚システムなんてものを運営が密かに開発していたということになるのだ。
「だ、大丈夫ですか!? ミナトさん!」
心配そうにミーシャが駆け寄ってくる。
俺は素手でウルフを殴り、HPを刈り取るとそのアバターは消滅した。
俺のHPは1減っている。
「大丈夫だ。……仕切り直そう」
正体不明の痛覚は、すぐに回復した。だが、わかったのは俺の知っているゲームと少し変化しているということだ。リセットマラソン中もLLO2の情報サイトを確認していたから、新たなシステムが採用されたなら知っているはずだ。……もしかしてチートキャラ固有のシステムなのか?
わからないが、ともかくまずはミーシャのチュートリアルを終わらせることに全力を注ごう。
「じゃあ次はミーシャが【ウルフ】を倒してみようか。錬金術師は五大属性魔法を使えることが特徴だが、魔法を使うには少しコツがいるから、まずは剣で戦ってみよう」
「でも……私剣なんて持ってないですよ?」
ミーシャと俺は手ぶらである。
「アイテムストレージに剣が入っているはずだ。コマンドの出し方はわかるな?」
「えーと、これですか?」
他人からはコマンドを表示するAR画像は見られないのだが、ミーシャの手の動きを見れば予測はできる。コマンドを出すには上から下に振り下ろす動作と決まっているからだ。
ミーシャはコマンドを出せている。
「その一番上に【キャラクター情報】があると思う。その一つ下に【アイテム】があるだろ?」
「あります!」
「そのアイテムを指で押せば一覧が出てくる。その中に【ロングソード】があるはずだ」
ミーシャは【アイテム】を選択し、【ロングソード】のアイコンを押すと、剣が出現した。
【ロングソード】を抱える姿勢になる。
「これは初期装備だからそんなに攻撃力は出ないが、【ウルフ】を相手にするなら大丈夫だ」
ミーシャは剣を物珍しそうに見つめていた。
「でも……剣の振り方なんてわからないんですけど……」
「まあ、まずは実践だ。いざとなったら俺が助けるからやってみな」
「わかりました!」
ミーシャは剣を両手で構え、【ウルフ】に斬りかかる。
その動きは初心者丸出しの隙だらけだったが、斬りかかるときにはそれなりの剣士のような素早い動きに変わった。【ウルフ】の身体を横薙ぎの剣が抉り、一撃で仕留めることができた。
【ウルフ】は叫びをあげる間もなく、ぐったりとして、瞬時にアバターが消滅する。
「やったな、ミーシャ」
「なんか身体が勝手に動いて……?」
戦闘後のミーシャは少し興奮しているようだ。呼吸が少し荒い。妙に色っぽくて、可愛い。
「プレイヤー全員が剣の心得があるわけじゃないから、ゲーム内ではアシスト機能がついてるんだ。……そうしないと魔法なんて誰も使えないだろう? それと同じさ」
ミーシャは合点がいったのか、ほーっと納得顔で頷いた。
「あと三匹でクエスト達成だ。一人でできそうか?」
「はい! 頑張ります!」
ミーシャはセンスがいい。
クラス選択の直感でも思ったことだが、才能があるのだ。
一度剣を振ることを覚えると、アシスト機能をうまく使って【ウルフ】を瞬殺していた。
およそ一分ほどで三匹のウルフを仕留め、クエストを終えた。
パーティメンバーなら誰が倒してもクエスト達成となる。俺が一匹倒し、ミーシャが四匹倒したので合計五匹。これで完了だ。
「よく頑張ったな、ミーシャ。村に戻ろうか」
「思っていたより楽しかったです!」
そう言ってくれると、俺まで嬉しくなる。
俺もモンスターと戦った後は充実感がある。飽きるほどプレイしていてもこれは変わらない。
人との共感は他に代えられない何かがあるとしみじみ感じた。
村に戻ってクエストを清算し、新たなクエストを受ける。
その繰り返しで、無事にチュートリアルを終えた。ただ、オマケとして初心者への最後の誘導がある。
次なる村の神官に手紙を届けるというものだ。
その神官に手紙を届けさえすれば、その後はこの広大なワールドを自由に行き来し、仲間とモンスターを倒したり、クエストを受けたり、プレイヤー同士で戦ったりとなんでもできるようになる。
「ミーシャ、チュートリアルを終えてみてどうだ?」
「ゲームがとっても好きになれました!」
「そうか」
チュートリアルでは基本的な操作や、道具の使い方などを実戦形式で学ぶことができる。何度も繰り返していると非常に面倒くさいのだが、初心者にとっては全てが新鮮で、ありがたい仕組みなのは言うまでもない。ミーシャがゲームを好きになれたようで、俺が手伝った甲斐もあるというものだ。
「次の村まで移動に少しかかるんだが、まだ大丈夫そうか?」
チュートリアルクエストを終えるまでに二時間ほどかかっている。プレイヤーにはそれぞれ私生活があり、一日中ゲームができるわけではない。ミーシャの都合を考えて聞いたみた。
「大丈夫です! 私今日休みなので!」
「じゃあ、さっそく行こうか」
「はい!」
ミーシャが、小さな可愛らしい手を俺に差し出した。
笑顔が煌めき、その可愛い顔に花が咲いている。
そんな風に求められたら勘違いしちゃうじゃないか……。
俺は彼女の手を握った。
「これで私たちフレンドですね!」
「ああ」
チュートリアルの説明を覚えていたのだろう。手を握るアクションは、フレンド申請のショートカットになっている。手を差し出しだされるだけでも【フレンド申請を承認しますか?】のポップアップは表示されるので握り返す必要はないのだが、単純に彼女に触れたかったのかもしれない。
握り返すアクションは自動で承認の意思表示になる。
俺たちは初心者村を脱出し、次なる村へと歩みを進めた。
◇
村を出てすぐ、歩きながら俺はプレイヤー掲示板を確認した。
プレイヤー掲示板はワールド内のプレイヤーなら誰しもが自由に閲覧・書き込みができるゲーム内の電子掲示板だ。チュートリアルを終えることでやっとみられるようになった。
そこに書かれていたのは、常軌を逸した書き込みだった。
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