exploration

五月雨沙和

exploration 第1話

4月5日。この日は、海園中学校の入学式だった。




(私は……1Bね、瑠樺は……よしっ!Bだ!梨花はどこだろう……)
蓮城寺麗亜姫は、廊下のクラス分け表を見つめて一喜一憂していた。
麗亜姫の父親は、世界的に有名な蓮城寺グループの会長で、桁外れの大金持ちだ。
だから麗亜姫は本来私立中学に入ることも出来たのだが、麗亜姫は友達別れたくない!と、公立の中学に上がる事になった。
(早苗ちゃん、瑞希、沙和はあるのに……梨花だけがいない……)
麗亜姫の親友、梨花、瑠樺のうち、梨花の名前だけが表に見つからない。
「あのっ、先生!大竹梨花さんってどこのクラスですか?」
近くにいた先生に聞くと、
「大竹さん……?うちの中学にはいないわよ?」
との返事。
その一言のせいで、麗亜姫はしばらく硬直したままだった。






[今まで言ってなくてごめん、私、聖桜葉女学院に進学したんだよね。]
梨花からEXphoneに来てたそのメールに気付いたのは、入学式から帰ってからだった。
聖桜葉女学院は、日本で1番偏差値の高い女子校。そこに、梨花は受かったんだ……
でも、何で今まで言ってくれなかったんだよ……
[今から15分後、桜美駅前のSAGAに集合。]
Summergameのグループチャットに送り、家を出る。
Summergameとは、SNSリアルロールプレイングゲーム「exploration」で活動している、私達のパーティ名。
SAGA(桜美)は、explorationを置いてあるゲーセンの中で、1番近い。
だから、私達がよく使うのはそこだった。




「蓮城寺さん。突然15分とか短すぎます。相手の都合を考えてください。」
時間ぴったり5分前に来た瑠樺からの、早速のお説教。今日も、1秒も遅れてない。
「ごめんごめん……お待たせ」
すると店内に梨花が走り込んできた。
「梨花っ!」「大竹さんっ!」
「どうして勝手に転校なんかするのよ!」
「せめて卒業前に言うのが礼儀というものですよね?」
私と瑠樺に突然責められる梨花。
「ちょっ、ちょっと待って。説明させて。」
梨花の説明によると……
桜葉の入試当日の朝に母親に受験申し込みをしたと言われた梨花は、慌てて受験会場へ行き、ギリギリで試験を受けた。
すると結果は全教科満点。余裕で特待生合格をして、入学させられることになったらしい。
「ごめん、決まったのが1週間前で……」
「「……」」
ダメだ、ツッコミが追いつかない。
「さっ、そろそろexploration入らない?」
「はーい」
「分かりました。」
話から逃げた梨花に流され、私達はexploration端末にカードをかざす。
すると体を宙に浮くような感覚が襲う。もう慣れっこだ。
セーラー服だった衣装がexplorationでの私のコスチュームに変わる。
髪型も、すっきり下ろしたスタイルから、左端を少し結んだ髪型になった。
「天使姫(Angelprincess)@スピカ!」
「亜魔党(あまとう)@栗♡(モンブラン大好き)!」
「氷剣@RiKa。」
「「「Summergame、降臨!」」」
いつもの変身シーンを終え、exploration世界に入る。
ちなみに、現実世界では風紀委員のお堅い瑠樺も、exploration世界では栗♡(と書いてモンブラン大好きと読む)として、ロリキャラ。
時々、そうやってexplorationと現実でキャラが変わる人がいるらしいけど、瑠樺は髪型、髪色、目色、口調、性格、記憶etc……ほぼ全てが変わる。




「あ!栗〜!スピカ〜!りかちゃんー!」
見てみると、すたーらいと☆の沙和がこっちに向かって手を振っていた。すたーらいと☆の3人組が揃っている。
「あ!」
「梨花ちゃん!」
早苗、瑞希、沙和が梨花に問い詰めようとする所を、
「まぁ、人には事情ってものがあるのよ。」
と、止める。私偉い!




すると、exploration登録時に貰えるスマホ・EXphoneに通知が届いた。
[exploration大型アップデート!]
どうやら、SNS機能が強化されたりしたらしい。そして何より、explorationに居たクラッカー野郎・nullが垢BANされたのだ。
「!!運営さん神!!」
栗太は過去、何度もnullのせいで酷い目に会ってきていた。私達Summergameとすたーらいと☆も、exploration世界に閉じ込められたことがある。
そして何より、nullが居なくなったなら……
「おめでとうございます@栗♡さん!1位特権のプレゼントに参りました!」
やっぱり。explorationのアンドロイドが栗太に1位称号を渡しに来た。
「それと、Summergameさん、すたーらいと☆さんのexplorationSNSアカウントを、exploration公式アカウントにさせて頂きました!」
「わぁっ、ありがとうございます!」
「あとSummergameさん、アイドルデビューする気はありませんか?」
……アイドル?
突然放たれたその言葉に頭が回らなくなる。
「exploration1位のパーティで、かつ芸能性もあるとの事で、exploration運営上層部からスカウトがありましたよー」
……アイドルデビューしたら梨花と確実的に一緒に居られる……!
「はいっ!私やりますわ!」
「「ええっ」」
考えたら、直ぐに言葉が出た。
「ありがとうございます、ではこちらへ」
私達はアンドロイドに連れられて、手続き等を済ませた。




「はじめまして!ご参加ありがとうございますー!」
今日はSummergame初めての握手会。ライブの翌日で疲れているけどしょうがない。
「次の方ー」
「はじめまして!よろしくお願いします!」
「……」
今来たのは中学校〜高校生位の男子。左目が前髪で隠れてるから……厨二病なお年頃かな?
「どこから来たんですか?」
「……君が蓮城寺麗亜姫?」
「えっ」
なぜ名前を知ってるの……?アイドルとしては、「乙女座澄輝(おとめざすぴか)」という名前でやっているから、本名がバレるはずがない。
「まっさかぁ、スピカ様はそんな名前じゃ無いわよ〜?」
「いや、分かってる。君、五月雨沙和と知り合いだろ?」
突然出てきた、すたーらいと☆リーダーの名前。ユザネはさわぁ〜すたぁだから、こっちも本名は出てないはず。
「分からないわ?そんな人」
「とぼけるな。@さわぁ〜すたぁ だ。」
「あー、ランキング3位の、すたーらいと☆のリーダーの子よね!」
なんとかごまかせたはず。と思っていたけど……
「君からしたら友達なんだろうが……とにかく五月雨には近寄らない方がいいぞ。ろくなことが無い。じゃ。明日12時にexploration中央広場にいるから。」
それだけ言って、男子は立ち去って行った。

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