平凡な僕と魔法使いのビーバー

相坂舞雉

2-1 ゴブリン



大都市ヴェルヘルムを出発して4日経った。

ガーデン村はヴェルヘルムからかなり距離があるが、村商人の荷車を使って3日ほどで着くはずだったのだが、、


「旦那ぁ~!!また来ましたぜぇ~!」

商人の呼びかけに素早く反応した、その先には数日前からちょくちょく襲って来ていた『ゴブリンナイト』


「ライトニング・バースト!!」

覚えたての下級魔法を連投しているため
体力も中々の消費具合だ。
合わせて荷車を引いている商人と荷物を守っている分動きづらい。

「旦那ぁ~!このままじゃあ~やばいですゼェ~!」


「さ、下がってください!!まだ来ます!」

商人が駆け寄ってきたのを止めて臨戦態勢を保ち続ける。


『ゴブリン』
は通常敵対しているヴェッセル国領地に住み着いている。
しかし、数日前エルムから聞いた話によるとガーデン村が占領されて以降、境界線があやふやになりつつあり、こうして
ヴェルヘルム領地に侵入してくるようになった。


ゴブリンの小隊に襲われるのはこれが3回目。
序盤は獣の魔導士エルムが魔法で撃退していたものの、過度な魔力消費の影響でエルムは今日眠ったまま起きていない。


「ニンゲェン..大人しく荷物を...コッチにワタシィナ...」
口からヨダレを垂らしながら牽制してくるゴブリン。

きっと、素直に従っても荷物だけじゃ済まされないだろう。


ゴブリンは多少倒したものの残りは5体
。ほとんど魔法攻撃のみで耐えていたからか、魔力も底をつきかけている。


助けの綱である魔法使いのエルムの
様子を見るがやはり目は覚めていない。

「クッソ、何とかエルムに貰った剣で!」

下級モンスターのゴブリンと言えども数では圧倒的不利!

「グッフォ..グッフォ」

リーダー格と思われるゴブリンがヨダレを垂らしながら近寄ってくる

「カクゴォシロォ、ニンゲェン、、」
鎧を中途半端に着ているゴブリンの手にはモーニングスター。

アレで殴られたら痛いだろな...。

「ガーデン村に行くには、何としても耐えなければ。」

右手に握っていた剣を握り直す。
覚悟を決めて、迫り来るゴブリンに集中していたが、不意に背後から冷たい風が吹く。


次の瞬間激しい風が一瞬吹いたその時

「モンスター!!覚悟!!」

聞き慣れない声と共に1人の男が背後から猛スピードで現れ、ゴブリンを1匹2匹となぎ倒していく。

ゴブリン達は抵抗する間も無く真っ二つにされていき、気がつけば目の前にいたモンスターはいなくなり、先ほどの男だけが残っていた。

「.......怪我はなかったか。」
手に持つ長い剣は立派な物だが身なりは、、

「悪かったな。このゴブリン達は数日前俺が取り逃がした奴らだ。」

男は剣についたモンスターの血をボロボロのマントで拭き取りながら言う

「我が名はラウル。」

「ラウル・クルシュバルツだ。」







コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品