平凡な僕と魔法使いのビーバー

相坂舞雉

1-9 覚醒と助言

「さぁ!!水晶よ!」

「我が名はエルム!!大賢者で大魔導師のエムルだ!!」

「この者の運命を導きたまえ!!」


エルムの掛け声に反応したかのように水晶の光に飲み込まれる。



「ここ....どこだ。」

目を開けるとそこは真っ白な無の空間の様だった。

不思議な感覚でそこに自分が立っているようにも浮かんでいるようにも感じられる。

「不思議な場所—————。」

水晶の力なのか定かではないが、感じたことのない感覚に微かな違和感を覚えている。

「よく来たね。エーデル・アインローズ」

無の空間はいつのまにかどこかの宮殿に姿を変えていた。

「戸惑っているのだね、無理もない。」

声の主は殺風景な宮殿に1つだけ置いてある椅子に座っていた。

「あ、あなたは一体...。」

その『状態』に慣れていない僕はありきたりな質問を飛ばす。

「それにこの宮殿は、、」



「戸惑うことはないよ。アインローズの息子よ」

「此処は今とは遠く離れた時にあった宮殿の1つを再現した場所だ。」


遠く離れた時————?



「今は疑問だけが浮かび上がるだろうが、我慢してくれ」
「今回は君に力と助言を与える。」


力と助言—————


「君はこれから様々な脅威に立ち向かう必要がある。それは決められた定めであり君が決めた決断の代償」

「その決断の対価が私が渡す力と言うわけだ。」


椅子に座りながら台本の様にスラスラと話し続けるカレは理解しがたい言葉を並べる。

「この力は元は君たち家族の物だから扱いは容易かと思うから心配はしなくていい。」

「か、家族の力って!?」

「悪いが今話せることは無いんだよ。」

次々と浮かび上がる疑問を唯一のカレに問いかけるもその答えは得られない。

「さぁ、もう行きなさい。」

その言葉を引き金に宮殿はみるみるうち遠のいていく。

「待ってくれ!!!僕は...僕は———」

止まることのないその空間の変化は僕の言葉を無視して変化していく。


「時間だ——————。」

何処からともなく聞こえた声と共に目を開けるとそこは魔法使いのエルムと居たボロ屋だった。

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