平凡な僕と魔法使いのビーバー

相坂舞雉

1-8 荒地に伝わる昔話


大都市から遠く離れた場所



『神技の荒地』




「この国も廃れてしまったノォ」

1人の老魔導師が荒地に腰を落ち着かせていた。

「じっさん、んなこと言ったら神さまとやらに怒られちまうぞ。」

「ふぉっふぉっふぉっ。」
若者の言った言葉に老魔導師は笑ってみせる。

「確かに、お主の言う通りじゃな。
ラウル坊やよ」
若者の事を坊や呼ばわりしたことによりラウルと名の持つものは眉間にしわを寄せる。

「かつてここ『神技の荒地』にはどの都市よりもデカく強大な力を持つ国があった。その国を収めるのは何を隠そう11人の『神』。」

老魔導師の昔話は止まらない


その昔、この世界は1つの国だった。
その国を求め世界の端から歩いて向かう者も少なくは無く、その度に生き絶える者がおった。
国を収めるのは太陽と月をこの世に齎した神や水の力を操る者たちだった。

その国の存在は何世紀にも及んで言い伝えられるほど強大な力を持っており、それと同時に時折派閥もあった。


「おーい。じいさん、その話昨日もしてたぞ。」
ラウルが老魔導師をバカにしながらも口を挟むが、話は続く。


ある時、1人の神が人間を使った実験を行った。その実験とは人間に神の血を飲ませ異常な眷属を作り出そうとしたのだ。その神の考えは、自分自身の血が混ざった眷属を大量生産し、その先の世まで名を轟かせるのが目的だった。

当然神の力を半端なりに使える人間が出来たとしたら他の神よりも万能だと知らしめることも可能ではないかと安易な考えをしていた。



結果、大量生産は成功した。
だが思いもよらない姿でその者達は成長していった。
それが後々現代に存在する『ゲテモノ』と呼ばれる者達だ。

その事を知った神々はそれぞれの眷属を同様に生産を行い始めた。

全知全能の神達だったがそれが愚かだとも知らずに。


「そして生まれたのが私等じゃと言う事じゃ。」

「もし、神が天罰を下すとしたらすでに種族と言う楔にかけられている我々は等に天罰を受けておるのじゃよ。ふぉっ」


ラウルはため息をつきながらも最後まで聞いていた。
「んで、その眷属のじいさんよぉ。
あの獣耳のあんたの弟子はどこ行ったんだ?」

老魔導師は笑みを浮かべて答える

「エルムはヴェルヘルムじゃよ。」

その返答で察したようにラウルは納得する。
「あー例のガキの所か。そいやもうそんな日か。」


「そうじゃよラウル。約束の時期じゃ」

老魔導師は重そうな腰を上げ

「私等も向かうとするか。
『大都市帝国ヴェルヘルム国』へ。」






コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品