平凡な僕と魔法使いのビーバー

相坂舞雉

1-4 力と力とビーバー


「覚悟しろ、鬼神」

その瞬間さっきまで人の姿に止まっていた獣は大きな声を挙げた。


「ウァァァァォアォオオオオオオオ!!」

獣の声に円を囲んでいた民衆は悲鳴を上げ走り出す。

「やややばいぞ!!離れろ!!」

獣は両腕の枷を素の力だけで破壊した。
人の形がほぼないその姿はまさに『ケダモノ』
見た目だけで恐怖を与えるその姿は化け物そのものだった。


「怒っているのか!!なーに安心しろ!」

「あの村は奪い返してやるさ、村人諸共皆殺しにしてな」

賢者の言葉を引き金に獣は勢いよく目の前の3人に襲いかかる。

「エーデル!!!何をしてるここに居たら巻き込まれるぞ!!」

酒屋の主人であるゴードンの声に我に帰った僕は、その場を立ち去ろうとするが獣の勢いに当てられたのか足が思うように動かない。

獣の動きは素早く、詠唱を唱え終わり攻撃体制に移行している両側の賢者を1人また1人と吹き飛ばしていく。

獣は最後の賢者に標的を向け襲いかかる

「舐めるなよ、鬼神風情が」

最後の賢者は懐から見慣れないストーンを砕き、詠唱を唱えず魔法を使う

「フレア・バーニング」

賢者が唱えた魔法は空中にいた獣を狙って地面から一直線に炎の火柱が上がった

「グォオオオオオ!!!!!!!!!」
その火柱をもろに受けた獣は勢いよく地面に打ちつけられる。


「これ.....が、能力持ちの戦い...」
目の前で起こっている獣と賢者の戦いに空いた口は塞がらない。


「鬼神...貴様には長い間悩まされたが、それも今日で終わりだな。」

長い間————?

「二度と私の前に立てないように散りにしてくれるわ!!!!!」

賢者の憎しみがこもったとも取れる言葉に
地面に這いつくばっていた獣が目にも留まらぬ速さで賢者の胸に腕を伸ばす。

「き、貴様ァア!!!」

素早く反応した賢者は2つ目のストーンを
胸から取り出しながら
「フレア・グ.....!!!!!!!」

賢者の唱えかけのストーン魔法と獣の風に乗った腕が勢いよくぶつかり合う。


一瞬目の前が真っ白になった

後ろからゴードンさんの声が聞こえたような気もしたけど、

目の前の力と力のぶつかり合いにより


僕は。





「神々の慈悲により我に力を授けたまえ」

「アダムス・エデル!!!!!」

気絶する一瞬の時、聞いたことのない防御魔法が聞こえた。

その魔法を唱えた者は、僕の前に仁王立ちをして不思議なマントを羽織った1匹のビーバーだった。












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