平凡な僕と魔法使いのビーバー
1-2 神判
「ぉお!!戻ったか!可愛い息子よ!」
骨折した足に包帯をぐるぐる巻きにした父はキッチンから僕を迎えた。
本当に骨折してるのかと感じさせるほどにピンピンした姿を見せる父を見て
ただいまと言いながら
「父さん無理しないで寝といてくれよ、、」
僕の言葉に父は大きな口を開け笑いながらいつもの口癖を口にする。
「なーんてことないさ!!!!なんてったって父さんは不死身だから!!」
口からのでまかせだがその元気な姿は妙に説得力がある。
そんな昨日もした下りを終えて父お手製のスープと少し湿気たパンを手に取り口に運ぶ。
僕と父さんの1日はいつも変わらない時を刻んでいる。
出稼ぎに来た当初と比べたら落ち着いたって思ってもいいのかもしれないが、男2人で話すことも特になく、夕飯を食べ、仕事の話をして明日の為に早く寝る。
そしてまたいつもの1日が始まる。
はずだった
チュンチュン
と鳥のさえずりが聞こえる。
ボロ屋の出窓を開けて鳥たちにパンの粗をやる。これが日課。
「やぁ。今日も元気だね」
あくびをしながら鳥に餌やりを終えたところで父がいない事に気がつく。
布団の隣には強引に引きちぎったと思われる包帯が散らばっている。
「無理しないでって言ったのに仕事に行っちゃったな。」
ため息をしながら口に出す。
父らしいといえば父らしい。母から聞いたことがある。前に馬車に跳ねられたことがあったのだが、仕事の途中だと言いながら仕事を続行したのだとか....
普通のノーマルなら軽く骨の何本か折れていて当たり前だし当たりどころによっては死んでたっていうのに、父ながらタフすぎるだろ。。
そう考えると2日家で休んでいたのは返って奇跡だったな。と、思いながらも荷物をとって都市へ向かう。
都市ヴェルヘルムにはボロ屋から10分ほどで家に着く。
森に構えたこの家は出稼ぎ当初宿に泊まる金をなかったので父と一緒に作ったものだ。
結局こんな森に家なんて作ってよかったのかな.....
「ん....?今日は騒がしいな、なんかあったのかな」
都市の入り口から宮殿の丁度真ん中にあるこの酒場は人の動きがよく分かる。
見たところみんな宮殿の方へ向かっているようだ。
「ゴードンさん、今日何かあるんですか?」
店の亭主であり長くこの都市に住まうゴードンさんなら何か分かるかと思い質問をする。
「なんだエーデル、知らないのか?」
彼は話し続ける
「何やら宮殿の中で都市の禁忌に反した輩がいるらしくてな、おきまりの審判を広場でやるんだってよ」
「禁忌...?」
「そう、要するに法さ。都市の中で殺人を行なってはいけないとか、いかなる理由があろうとも護衛兼執行人でもある賢者に手を出しちゃいけないとかな」
なるほど。
たしかに色んな種族が住んでいるこの都市ではそれくらいのルールは必要だ。
「エーデル。田舎村出のお前はまだ見たことなかったろ、勉強だ。付いて来い!!」
と、言われすでに多くの人が集まっている広場までゴードンさんと共に向かった。
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