学生時代

Me-ya

泣かないで、マイ・ラブ 4

突然、訪ねてきた私に驚いた顔をしつつも、快く部屋に招き入れてくれた友人-塔野真樹は珈琲をテーブルに置くなりひと言。

「いないわよ」

………ガーン!!

-あわよくば塔野に彼と親しい友人を紹介してもらった後、彼と会わせてもらえたら…なんて無謀とも、ずうずうしいともいえる期待-風船のように膨らんだ私の期待は、塔野のそのひと言で木っ端みじんに弾け飛んだ。

「寮だけじゃなく、大学内にも佐藤君と親しい友人なんていないんじゃないかな~」

「…え、大学ではあんなに沢山の人に囲まれているのに?」

すごく親しそうに話していたような…?

「そりゃ、ただの友人や顔見知りは沢山いると思うわよ、人気はあるんだから…でも、親しい友人はいないんじゃないかな~…っていうか、いないと思う」

はっきり、きっぱり。

言い切る塔野に、図書室で見た彼の尊い姿を思い出した私は思わず呟いていた。

「…じゃ、あの手紙は………?」

「……………あの手紙?」

-しまった-

塔野に問われて、ハッと気付いた私は慌てて手を口に持っていくが、時、既に遅し。

塔野の眼が獲物を前にした獣のようにランランと輝き出す。

「…あの手紙って、何?」

「…いや、あ~、え~と…あの、ほら、その…」

舌舐めずりをせんばかりにしてテーブルから身を乗り出してきた塔野に抵抗できるはずもなく、佐藤治夫が水曜日の放課後、図書室で大切そうに読んでいた手紙の事を話してしまった。

-私の大切な、神聖な時間…誰にも言いたくなかった…私だけの秘密だったのに~!!

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