学生時代

Me-ya

いつか、君の声が 1

-僕は屋上のフェンスにもたれ、空を見ていた。

真っ青な空に白い雲が浮かんで流れている。

「…校舎の屋上は立ち入り禁止なんだけど」

笑いを含んだ声にドキリと心臓が飛び跳ねる。

顔を向けると、そこにはやはり笑った顔の松山千尋が立っていた。

条件反射で逃げそうになる身体を耐えて、背後のフェンスを両手で強く握り締める。

「今更、何の用?…っていうか、この場所に呼び出したの、松山だろ…オマケに人を呼び出しておいて遅れてくるってどういう事?」

平静を装って軽口を叩く僕に。

「…アハハ…ごめん、ごめん」

全然、悪いと思っていないのが丸わかりの、軽い謝罪が返ってくる。

-もう2度と松山と2人では会うもんかっと思っていたのに、コレが最後だからと呼び出されてのこのこと来てしまうなんて、やはり今までの下僕根性が抜けてないのか…。

治夫の目を盗んでコソコソと隠れるように松山に呼び出されたこの場所に来たものの…今も治夫に見付からないかと少しビクビクしている。

…いや、別に治夫に見られたところでやましい事は何もない…はず…だけど。

「………で、話って?」

後ろめたい事は何もなくても、松山と2人きりでいるところを治夫に見られるのはなるべく避けたいと思っている僕は、話を促す。

「…そんなに急かさなくても…ボクと2人きりはそんなに気まずい?それともボクの事がそんなに嫌い?」

(…人を脅してアンナ事をしておいて、好かれているとでも思っているのか、コノヤロ~)

いつもの嘘くさい笑顔で僕を見詰めてくる松山に、今までのようにビビってたまるかと震えそうになる足を叱咤し、両足でしっかりアスファルトを踏みしめて松山の瞳をギッと睨みつけた。

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