学生時代

Me-ya

瞳の中、君に 5

…前と同じように(俺に記憶はないけど)付き合うわけじゃない。

ただの友人として、付き合うくらいなら…。

そういった、軽い気持ちもあった。

だが…。

『今日も、彼女が見舞いに来てくれるの?』

『相変わらず仲、いいわね~』

『午前中は彼女、学校があるから、会えなくて寂しいでしょ?』

翌日から、看護師さんにそう言われ始めて驚いた。

最初は寧音が毎日、見舞いに来ているから勘違いしているのかと思い、彼女と言われる度に否定した。

だが、俺がいくら否定しても看護師さん達は俺が照れていると勘違いしてしまう。

あまり剥きになって否定し続けても、ますます面白がってからかわれるだけし、寧音が否定すれば、言わなくなるだろうと放っておいた。

なのに。

『毎日、彼女がお見舞いに来てくれて、いいわね~』

そう言った看護師の言葉に、寧音は照れたように笑ったのだ。

驚いた。

俺は…寧音は当然、否定するだろうと思っていたから。

まさか、否定もせずに笑って俯くなんて。

…オマケに、照れたように頬を染めて…。

それじゃ、本当に彼女みたいじゃないか。

その場は笑って誤魔化したが二人きりになった時、寧音を問い詰めた。

「…どういうつもりだ」

「…何が?」

「彼女って言葉、否定しなかっただろ」

「否定する事もないと思って」

けろりとして、そんな事を言う寧音に怒りが沸いた。

「どうして」

「だって、本当に私達、付き合っていたんだし…」

「確かに!以前はそうだったかもしれないけど…でも、今は…友人として付き合うとは言ったけど、彼女として付き合うとは言ってない」

…それに、俺には寧音と付き合っていた記憶もない。

すると寧音は、いきなりホロホロと涙を流し始めて、俺はギョッとする。

「…ご…ごめんなさい…そんなに嫌だったなんて…」

「…いや、嫌ってわけじゃ…」

寧音の涙に、始め抱いていた怒りは消え失せ、今度は反対に寧音に対して、申し訳ない気持ちが沸き上がってきた。

俺の記憶がない為に、寧音を悲しませている。

付き合っていた時の記憶さえあれば、寧音を悲しませる事もなかったのに。

それなのに、怒ったりして…。

「…いや…俺の方こそ、ごめん…記憶、なくて…」

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