学生時代

Me-ya

恋と嘘と現実と 46

「…本当にいいのか…?寧音に…」

「…もう、そんな脅しにはのらないから…でも、本当に寧音に何かしてみろ。僕はお前を絶対、許さない」

その時の千尋の顔が一瞬、泣きそうに歪んだ。

そんな風に見えたのは、僕の目の錯覚だったのだろうか。

…きっと、そうだろう。

だって、一瞬後にはいつもの千尋の顔だったから。

「…手、放してくれないかな」

弁当を食べる時間がなくなる。

僕の言葉に千尋は、ゆっくりと僕の腕をから手を放した。

そのまま美術室から出ていこうとした僕の後ろで千尋が呟いた。

「…そんなに俺の事が嫌いかよ」

「当たり前だろ。あんな事しておいて好かれているとでも思っていたのか」

千尋の言葉にカッとした僕は、吐き捨てるようにそう言って振り返らず扉を閉めた。

だからその時、千尋がどんな顔をしていたかなんて知らない。

僕は美術室を出ると、弁当を食べる為に空教室を探した。

さすがにクラスには戻りにくい。

だが、こちらに向かって走ってくる治夫に気付いて溜め息を吐いた。

…弁当を食べるのは、諦めるしかないか…。

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