学生時代

Me-ya

恋と嘘と現実と 30

「治夫と仲直りしたか?」

治夫と別れて家に帰宅途中、後ろから声をかけられた。

振り替えるとそこには千尋がいて、いつもみたいに爽やかな笑いを振り撒いている。

「……………何?」

「だから、治夫と仲直りしたのかって聞いてんの」

「仲直りって何?僕と治夫は喧嘩なんてしてないけど」

「でも、治夫を避けていただろ?」

「……………何の事?」

惚けてみたが、千尋には無駄だったようだ。

僕の顔を見詰めたままニヤニヤ笑っている。

……ニヤニヤしていても爽やかに見えるって…ある意味、凄いな。

「………千尋には関係ないだろ」

「……ま、確かに…あ、今日、家へ来ない?」

急に話を変えた千尋に、僕は付いていけない。

「………行かない」

「どうして?」

「………用事があるから」

……………嘘。

本当は用事なんてない。

いつもと同じ、爽やかな笑顔を無駄に振り撒いている千尋。

だが、僕は気付いていた。

瞳が笑っていない。

…気を付けた方がいい…。

僕の頭の中で警報が鳴る。

危険だと。

「…じゃ、僕、急いでいるから」

「まあ、待てよ」

そのまま立ち去ろうとした僕の肩を千尋の手が掴む。

「………何?」

「俺、知っているんだ。隼人の気持ち」

「…はあ!?」

……僕の気持ち?

「隼人さ、治夫が好きだろ」

「えっ!?」

あまりにズバリと直球で聞かれて、僕は知らない顔をする事も、取り繕う間もないまま驚いて千尋の顔を見詰めた。

しまった!!と思った時にはもう遅い。

千尋は僕の顔を見詰め、ニヤリと笑った。

…爽やかな笑顔はそのままで。

…器用なヤツ…。


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