踏切電車向こう側

相坂舞雉

2-4(私)友人の手前


辺りは暗く静まり返っていた。

街灯が唯一光を放ち

蝉が唯一存在を主張していた。


さすがに絵を描くことに夢中で辺りが暗くなっているのも気がつかなかったなんて異常なのめり込み様だと感じる。
暗闇でスケッチブックに描いた夕焼けの絵も見えなくなっていたのにも関わらずそのペンを置くことなく描き続けていたなんて....。

自転車で来るべきだったとつくづく
自分をバカだと思うがこんな日があっても悪くは無いのかとも思う。
運良くまだ夏だ。
夜は涼しい風が吹くこんな田舎町だが僕は好きだ。

そんな好きな街に地に足つけて考え事をしながら歩くのもまた一興。

考え方だけはその身体に見合わず成長を続ける。
僕は大人になったらどんな人生を歩むだろう。
進路を考えるまで後1年以上はあるのに
彼女に出会ってから明日、明後日。
これから先の事を考える。
そんなこと考えても意味ないのに。




帰り道にポツンとあるバス停。
そこには1人の女の子がいた。
こんな遅い時間に女の子1人でいるのは
田舎町といえど少し心配だ。


一体どんな子が—————







長い道歩いた足を止め僕もベンチに腰掛ける。


家までの道のりは遠く、普段この距離を徒歩で歩いている訳でもない僕は少し疲れていたようだ。

ただ、腰掛けた理由はそれではなく
僕がそのベンチに座った理由は他にあった。



『こんばんは。』




僕の存在に気がついた彼女は優しく挨拶をした。


周りは人気もなく静か。

そんな空間に身を委ねていたせいか同じベンチに腰掛けていた彼の存在には少し立ってから気がついた。
制服からしてどうやら同じ学校の人のようだ。

どこかで見たことのある横顔。
私はその横顔を、彼を知っていた。
彼は私がまだ都内にいた時に知り合った?人だった。



あの時と同じように私からかけた言葉により彼はこちらを向き

『こ...こんばんは。』

挨拶を返した。
偶然なのか必然なのか、たまたまファミレスで出会った彼はどうやらこの街に住んでいて同じ学校で同じクラスらしい。
挨拶から始まった会話は自己紹介に
続き、街のことや暗くなるまで何をしていたのかと話は広がっていった。
あの時は全く喋らなかった私たち。
私のことを誰も知らない土地に来たはずなのに孤独感からか暇つぶしで声をかけた彼に出会う。


少しホッとした気持ちと同時に
私の心には何か違うものが芽生えそうな気がした。







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