踏切電車向こう側

相坂舞雉

1-10(私) 序章


その日は月が綺麗だった。


街の街灯は薄暗く真下を照らすので精一杯。
何を語るわけでもなく2人は歩く。



ファミレスで出会った彼は私に見せてくれた絵を取り上げる事もなく
むしろ私に譲ると言ってくれた。
私は何も言わずソレを受け取った。

何か大切な物のような感じがして
ソレを眺めると胸が熱くなる。
きっと私にはこの絵が必要なんだろう。
彼が描いて私にくれたこの絵が。


ファミレスを出た後私と彼は東京駅に向かって歩き出した。
終電も無くなっていたし始発まで時間があるからと彼は私を連れ出した。

きっと母は今頃心配して近くを探し回っているのだろう。

もうすぐ別れる母が。


今どこら辺なんだろうと感じながらも
口には出さずただ前へ進む。

目指しているのは東京駅だが
私たちが進んでいるのはどこか未来に続く未来。
私はこれから見ず知らずの土地に行き育つ。
きっと恋をしてその人と愛を深め成長する。


彼はこれからどんな未来を体験するんだろう。ビリビリに破られるはずの数時間かけて完成させた絵を見ず知らずの人間に渡し、今どこかを目指して一緒に小さな旅をしているその彼は。

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