異世界冒険と時間旅行を並行するのは無理ゲー

猫目

第7話 ボッチの戦い

ゴブリンとかスライムとかしか出現しない初心者ダンジョンに何でドラゴンがいるんだよ。聞いてねぇぞ。

「…おっきい…トカゲ…」
白鳥さん…間違ってはいませんが…そんな可愛いもんじゃないですよ。
「我をトカゲ呼ばわりするとは…くっくっくっ…ならば教えてやろう!我の正体を!」
「…トカゲ…」
「黙れ小娘!!我が名は暴風龍ヴェルド…」
ドゴ-ン!!
なっ…!?今のはまさか…白鳥のエクスプロ…じゃなくて、爆裂魔法か…?
「…このトカゲ倒せば…ノルマ達成できる…多分」
多分かい。大丈夫かそれ。
「ヌゥー…我のかっこいい登場シーンを邪魔するとは…貴様何者だ!?」
「……」
「……」
「……」
沈黙が流れる。

「この邂逅かいこうは世界が選択せし運命さだめ…私はあなたのような者の出現を待ち望んでいた……
我が名はリンリン…アークウィザードを生業とし…最強の攻撃魔法…爆裂魔法を操る者」

元ネタを知らないドラゴン…そして全く理解できない自己紹介に。
ただ絶句し、はしゃぐ二人を眺めているしか出来ない。
「…一度は『言ってみたいセリフ・第4位』……リアルに言わせてもらえた…」
「白鳥……ちょー、ぐっじょぶ」
親指を立て合う二人に、肩を震わせるドラゴン。
それを挑発と捉えたのか。
 「グォォォォォォォォォォ!!」
「あれ?もしかして怒ってる?転◯ら知ってるなら、この◯ばとか知ってるかと思ったんだけど…」
「グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「…怒ってる…」
「誰のせいだよ、全く…」
「…悪ノリしたの…泰知」
「え!?俺?これって俺が悪いの?」

こくりと頷く白鳥。えぇ…俺ですか?
と、その時炎が飛んできた。
「いやあなたさっき暴風龍とか言ってなかった!?なんで火吐いてるの?」
「黙れ!!我の自己紹介を邪魔しおって!!久々に来た人間だからたっぷり時間を掛けて遊んでやろうと思ったが、もういい!!消し炭にしてくれる!!」
「つまりはお前もボッチかよ!この世界ボッチ多すぎだろ!!というかここにいるやつ全員ボッチじゃねぇか!!」

「…泰知…逃げるのが…良さそう」
「あの〜…こんな状況であれなんだけどちょっと質問いいか?」
「…3秒以内に言って」
「なんでほとんど初対面の俺の事を”泰知”って呼ぶんだ?」
「…あなたが…それを望んだから」
とても小さい声で何かを呟いたようだが、俺には聞こえなかった。
「え?今なんて…」

ドゴ-ン!!

「なっ…!!」
見ると、出口が崩されていた。
「ふははは。これで逃げられんぞ人間ざこめ。小娘の爆裂魔法はなかなか聞いたが、そんな程度の魔法で我は倒せぬぞ。」
今日はホント不幸だな…つまりこのドラゴンと戦えと…そういう事か。
「…泰知…私達ではこのトカゲは倒せない…でも私の爆裂魔法で…出口を開ければ…泰知だけは逃げられる」
「バカヤロウ!俺達は仲間だぞ!そんな事ができるかよ!コイツを倒して、必ず二人で生きて帰るんだよ!!」
とかめっちゃカッコいいこと言ったけど——

はっずかしいいいいいいいいいいいいい!!

やばい。なに言ってんだろ俺。今すぐここから消えてぇ!
「…わかった。…やれるだけやるけど…危なくなったら…逃げて。」
「だから逃げねぇって言ってんだろ。」
とか言ってるけどさぁ剣重すぎて走るだけで精一杯なんだよね…まじどうしよ…
ドゴン!!

また炎を吐いて来やがった。まじやめろっての。俺はカッコよくその炎を避ける。しかし、避けた直後——
次の炎が待ち受けていた。
「に、二連続!?さっきのは誘導でこっちが本命か!」
くそっ!避けれねぇ!!
ドン!!
「ほぅ。結界魔法も使えるとは…やるな小娘。」
あっぶねぇ。白鳥の結界魔法が無かったら確実に丸焼きにされてたぞ…!
「悪りぃ白鳥。助かった。」
「…お礼は要らない…二人で生き残るって言ったの…泰知…」
やめろ、それを思い出させるな。
「…それより…この状況を打破する方法を…考えて」
白鳥の爆裂魔法も効かなかった。MPも限りがある。これ結構ヤバいんじゃね?
「ふははは!悪あがきはもうお終いか?」
俺はありったけの力で剣をぶん投げる。今の俺のステータスでこれを振り回すなんて無理だからな。
もうこれくらいしか方法がないんだ。あとは奇跡が起きるのを…

カツン
「クックックッ…!まさかそれで本気の攻撃などと言うまいな?」
すんません、それが渾身の一撃なんです。
「笑止…!ならばこれで遊びは終わりだ。」
「…泰知…あなただけでも…」
「白鳥、少し待ってくれ。俺に考えがある…!」
「…考えって…?」
「少し待ってくれ」
確か俺の称号には<神のお気に入り>とかがあったはずだ。だったら——

神様助けてください。なんでもしますから助けてください。チート能力でもチート武器でもなんでもいいからなんかください。てゆーかとりあえず会わせてくださいお願いします…



——気づくと真っ白な空間にいた。どうやら成功したようだ。
「神様、なんかチート能力ください。お願いします!まじでピンチなんです!」
「あのねぇ。久しぶりに神界に来た第一声がそれ?礼儀知らずにも程があるわ。」
「それはわかってますけど、そんな事やってる場合じゃないんです!助けてください!こうしてる間にも…」
「あぁ…そこら辺は大丈夫よ。あっち• • •の世界で死んだ一部の人間の魂をこっち• • •の世界に転生させるチャンスを与えるのが私の本来の役割なんだから。」
「つまり…?」
「今のアンタは称号の効果で魂しか神界に来てないの。だったらアンタの魂を少し過去• • • •の下界のアンタの肉体に戻すなんて簡単よ。」

簡単にまとめると、つまりは俺が下界から神界に来た瞬間の時間に戻れるって事か?要はここで1時間でも1ヶ月でも1年でも過ごしててもあの時間に戻れるってことか?
「まぁ簡単に言うとそうね。」

「あ、それと前から気になってたんですけど、俺がここに初めて来た時後ろに誰かいたような気がしたんですけど…」
「それはまた今度説明するわ。それより、今はドラゴンを倒す事を集中しなさい。」
「そうだ!チート能力!!」
「はぁ…いくら神様でもそんなホイホイチート能力あげれたら今頃この世界は平和よ。」
え。じゃあどうすればいいの…?
「アンタが持ってた剣を軽量化しといたわ。ついでに強化といたから、これでまともに戦えるはずよ。そうだ。ついでに防具も強化しとくわ。」

いや割とチートだと思うんですが…
「強化したって言ってもたかがしれてるわよ。まぁ今までよりはマシだろうけど。」
「それであのドラゴンに勝てるのか?」
「100%無理でしょうね。」
即答かよ…
「でも安心して。手は打ってあるわ。」
「それってどういう…」



——気がつくとさっきまでの場所に戻ってきていた。


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