香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 148

 田中先生が付けたあだ名通りのーー正直あの先生は、言語能力も高いし文学的センスもあると内心感心していたーーアクアマリンの清楚な笑いを浮かべてくれた。
 その彼女の透明感溢れる笑みを見ているとホワンと頬が緩んでしまっていた。
 オレの部屋に並んでいるフィギア達なんて霞んでしまうほどに綺麗だし、何より「リアル」な女性なんだなぁと、ここが病院の会議室なのを忘れてしまった。
 いや、いけない!田中先生が作ってくれたデートのシナリオを必死に思い出そうとする。
 この会議室用の台本なんて当然なかったけれども、そこは応用問題だと思うことにしよう。それに一応「言葉の天才」とあがめている田中先生という基礎は一応ある。その基礎から応用ーーオレだって一応応用問題も得意だったし。オレは今まで勉強しかしてこなかったけど、田中先生は恋愛と勉強を両立させていたような話しぶりだったし、そういう「先人の知恵」みたいなものはドンドン活用しようと思った。しかも、連戦連勝という実績も持っている「先人」っぽいので。
 ただ、この場所に相応しいセリフはっと???と思って内心アワアワしてしまう。
「そうですよね。やっぱり、猫とか犬にあんなコトを仕出かすなんてやっぱりおかしいですよね。
 田中先生と出会えて、その上久米先生とこうして一緒にコーヒーとケーキを食べているなんて夢みたいです」
 「夢みたい」なのはこっちのセリフで、田中先生のマニュアルにはこういうシーンって有ったっけ?と背中に汗をかきながら必死で考えた。
 すると天啓のように香川教授の言葉が閃いた。「会話のキャッチボールが出来る医師を我が医局では求めています」とか何とかおっしゃっていた!!
 田中先生の「歯の浮くような」珠玉のセリフは「デート♡」当日まで取っておくことにして、この際、香川教授の有難いお墨付きまで貰った会話術(?)のようなモノで取り敢えずは話そう。
「いえいえ、お邪魔したみたいですみません。
 でも、同じ新人同士、色々と分かり合えることもあるかと思います。そういうのを言い合いっこするのも良いかと思いますよ?
 なんだか脳外科は大変みたいですね。戸田前教授の後始末とか……。私物のPCに患者さんのデータを入力するとか、もう滅茶苦茶としか言いようがない気もしますが……」
 そう話を振ってみた。
 すると。

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