香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 74

「ああ、なるほど。そういうことか……。
 ただ、久米先生のお母様は看護師『風情ふぜいとバカにするレイシストなんだよなぁ。
 ウチは二回目の結婚なんで、夢も希望もないみたいな感じであっさりと許されたんだが。
 ううむ、そういう深窓の令嬢上がりの令夫人に見下されるのを覚悟で家内が承知するかが問題だ」
 差別主義者レイシストって酷い言い方だけど、確かに職業差別はしているのも否定出来ない事実だし、言い返すことも出来なかった。
「確かに奥様はわざわざ久米先生の実家に行って、その上白眼視しながらも看護師の地位向上を訴える義理も義務もないですからね……」
 田中先生も何かを考えるような感じでそう言っている。確かにその通りだし、柏木看護師とは手術室で会釈をする程度の仲でしかない。
「ないなぁ……。そんな正義感溢れるタイプじゃないし、休日は楽しくショッピングをしたり友達と映画やお芝居を見に行ったりする方が好きな普通の人だ。
 まあ、『看護師の地位向上を目指す戦士』みたいに下手な野望を持っている方がオレとしてもやりにくいからそれで良いのだが。
 ただ、久米先生のお母様に嫌味めいたことを言われて――そういうのって男性には絶対に分からない嫌がらせとか有るらしいぞ?――帰り道に不機嫌になったら厄介だし。
 アイツも一度ご機嫌斜めになってしまうと、家庭内の空気が冷えるし、おかずも一品減らされるとか、デパ地下のお惣菜じゃなくて、庶民的なスーパーの出来あいのお惣菜に変わっていたりするからな。
 ああ、それかビールじゃなくて、発泡酒に替えるとかの嫌がらせかも知れない……。
 そういう『家庭内の危機』を招くようなことはしたくないような……」
 結婚生活ってそういうモンなんだなぁとシミジミ思ってしまう。
 何だか、綺麗なエプロンを着けた――しかも、その下は何も着て……――いや、この際そんなことはどうでも良い、とにかく綺麗な女性が「お帰りなさい。ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?」って肉じゃがを持って出て来るイメージなんだけど。
 庶民的なスーパーの惣菜とかビールじゃなくて発泡酒とかそういう貧乏チックなのが「過酷な現実リアル」ってやつなんだろうな、多分。
「この際、香川教授にお願いしてみませんか?医局の平和とか結束の固さが良い手技を生むことを良くご存知ですので、久米先生の問題も、医局一丸となって取り組む方が良いかと思います」
 それって?

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