香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 2

「医師になれば、女の子にモテること請け合いだぞ。今まではほら、医学生っていう半人前なんだし、それに医師国家試験にも受かっていないじゃないか。
 医学部を出て、医師にならないなんて人生詰んでいるだろ?
 そういうのも女の子は見てるからな……。それにさ、好きなモノはゲームとフィギアじゃなくてさ、ピアノとかバイオリンとかオペラ鑑賞、乗馬とかワインとかそういったものが無難だぞ。
 なんたって深窓のご令嬢が集まる合コンなんだから、そういう『高尚』な趣味を並べておいた方が、ドン引きされなくて済む……」
 俺も確かに「深窓のご令嬢」は大好きだが――だからこそ「聖☆桜花女学院」のゲームにハマっている――でも、そこに出てくるメインの女の子はあんなけばけばしい化粧もしていなかったし、髪の毛もツインテールとか三つ編みで、母親に無理やり連れて行かれた宝塚大劇場の「ベルサイユの○ら」のマリーアントワネット様みたいな髪の毛をくるくると巻いたり、王冠を載せても大丈夫みたいな感じで髪の毛を盛っていたりする「深窓の令嬢」は嫌だぁぁぁぁ!と思ってしまう。それにお化粧も宝塚ほどではなかったけれど、睫毛がバチバチだったし、頬も不自然なほどに赤い。それに口紅は今の流行りなのか、真っ赤な上に何だかその上に油分でテラテラと光っていて、女の吸血鬼かと思ってしまうような女の子ばかりだったし。
「ピアノとバイオリンは小学生の時に止めたのでもう弾けないと思う。オペラは、たいていが肥った小母さんが主人公を演じるだろう?『椿姫』とか『蝶々夫人』とか。綺麗でスレンダーな人が歌ってくれるならともかく、あんなに肥った高級娼婦なんているのかよとか思うと一気に白ける。乗馬は馬に一度振り落とされた苦い経験があるので、それっきり行ってないし……。
 ワインよか日本酒の方がよっぽど美味しいので、親と行くレストランではソムリエお勧めのを呑んでいるけど、銘柄なんて覚えていない。だから当分合コンはパスすることにする」
 正直に答えると、同級生はこれ見よがしに盛大なため息をついていた。理想の彼女ゲットが出来ればそれに越したことはないけれど、医師になったからといって、清楚でしっかりしている女性が目の前に現れてくれるのだろうか……。何だか医学部に行ったらとか医師になったらとか「たら」ちゃんばかりというのが先行き不安だった。

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