香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 1

「話が違う!!」と思ったのは何回目だっただろうか。少なくとも両手両足の指を使っても数えきれないくらいだった。
「勉強が出来れば、女の子にモテる」と、高校の時にサッカー部のレギュラー、しかも万年地区大会では良いトコまで行くけれど予選落ちという進学校のMFに言われたのが初めてだったように思う。
 そんな彼も校内の女の子はもちろんのこと、地区大会で戦った相手の高校の女の子から手紙とか手作り!クッキーなどを貰っていた。
 運動神経にはからっきし自信がなかったので「俺の強みは勉強だ!」と女の子からの激励を待ちつつも必死に勉強した。
 その分、成績だけは上がって行ったし、第一志望のK大学医学部には「A判定」という輝かしい模試の結果が毎回舞い込んできた。
 それはそれで嬉しかったが。
 ただ、彼女が欲しい。いや、彼女でなくともガールフレンドでも良い。時々デート(?)して他愛のない話しをする。それが俺の野望だったが、この進学校一の成績を取っても――何しろ男子校というのがネックだったのかもしれない――女の子は褒めてくれない。
 唯一女性で褒めてくれたのは、そして模試の結果でA判定を取る度に手の込んだ御馳走とか、昔から馴染みのレストランで祝ってくれるのはお母さんだけだった。
「医学部に行けば、女の子が死ぬほど寄ってくる!」
 そう言ってくれたのは、医学部専門の予備校の先生だった。
 確かに、予備校のA判定で名前が思いっきり細かい字で載っても、知らない苗字だと女の子の記憶に残らないのかな……と思った。
 だったら、せっかく不動のA判定を――合格可能性80%だ――貰っている上に、家からも近い「超有名国立大学」しかも「医学部」の学生になれば女の子なんて選り取り見取りのような気がする。
 しかし、大学のカリキュラムは――医学部専門の予備校の先生とかチューターが言っていた「楽勝」なんて嘘っぱちで――朝から夜中まで大学に居るのが当たり前といった感じで、培養している菌とか研究用のラットなどの都合に合わせて大学への寝袋持参の泊まり込みまで有る始末だ。
 ただ、それでも近所のお嬢様大学とか、神戸に有る超有名なセレブ女子大生が通う大学からの合コンの誘いは割とひっきりなしに来ていたので、時間が許す限りは出席して、彼女を作る!という野望がむくむくと大きくなった。
 ただ、気合を入れて合コンに参加したものの、最初の自己紹介で「趣味は乙女ゲームと推しフィギアとか、抱き枕を集めています。どうか宜しくっ」
 元気溌剌として、そして笑顔も忘れずに言ったのに、女の子の反応が妙に冷たかった。
 俺がいわゆるイケメンでないことは鏡を見れば分かるので、愛嬌で勝負してみたのに…………。どうして女の子がよそよそしくなるのか全く分からなかった。

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