リスタート!!〜人生やり直し計画〜
プール開き!
2004/6/30
遠足の外堀が冷めたころ、拓哉も有沙も学校に復帰してしばらく経ったころ、拓哉たちの学校ではプール開きがあった。
  浮き足立つ周りの反応とは逆に拓哉には頭を悩ます問題が2つもあった。
  1つは例の転校について。
  理由は先生も詳しくは喋ってくれなかったが、どうやら全国でトップクラスの成績を誇る拓哉は国立の小学校へ、ということらしい。
拓哉はもちろんずっと断り続けていた。
有沙の近くで、彼女を見守るために死にかけてまで戻ってきた過去でまた彼女から手を離す訳にもいくまい。
2つ目は…
「有沙ちゃん。おはよう」
「あ、たくやくん…おはよう…」
当の彼女が何だか元気がないことだった。
退院してからずっとである。
「なあ、お前らケンカしてんの?」
そんな中に口を挟んできたのは啓太だった。
有沙は浮かない顔をしたまま、教室から出て行ってしまった。
「してない…と思う……思いたい」
「? どっちなんだよ」
「わかんないよ。学校戻ってきてからずっとああなんだよ。僕何かしたかな?」
「それよりつぎプールだぜ。はやくきがえようぜ」
啓太に促されて、拓哉は水着に着替えつつもブツブツと悩みについて考えていた。
(何かしたかな…特に何もしてないと思うんだけどな…)
考えながらも、さっさと着替えて、教室から出た。
小学校低学年では着替えは女子も男子もなく、同じ教室にて着替える。
色々と危ない気がしたので、早々に着替えてその場から去ることにしていた。
特にプールはヤバい。
水着に着替えるのを男女で分けないのは中学生高校生でやったら犯罪現場になりかねない。
拓哉は人生経験は豊富とはいえ、このシュチュエーションはさすがに経験はない。
「おまたせ〜いこうぜ!」
「うん…」
着替えを終えた啓太が教室から出てきた。
念願のプールにウキウキしている側で拓哉は力なくとぼとぼと歩いていた。
「はい!じゃあみんなプールに入って〜〜!」
青い空の下、相沢先生が声を張り上げる。
中高とは違い教科専門の教師などおらず、基本担任の先生が全てを請け負っているため、プールの授業であってもそこにいるのは相沢先生であった。
(まあ、悩んでても仕方ないか…せっかくだから楽しもう)
指示通りに水に入る生徒たちと共に拓哉も入水。
足から入ったプールの水はとても冷たく、暑いこの季節にはとても気持ちいいものだった。
浅めのプールだったが、小学校1年生の肩くらの深さがあった。
「じゃあ次はプールの中に頭まで潜って〜〜!」
段階を踏んで水に慣らしていくのは事故が起きないために毎回行われることだが、周りも正直面倒くさいという態度だった。
中には、かねてから水泳を習っており、早く泳ぎたいという生徒もいた。
もちろん拓哉も泳ぎの経験は前の人生で何度もしているため、十分経験者と言えるだろう。
しかし、水に潜った途端、拓哉の心臓がドクンと高ぶった。
(なんだ⁉︎これ)
先ほどまで透明に透き通り、そこが見える綺麗な水であったはずが、その瞬間、拓哉の目には泥水のように黒々と濁った風景が映る。
その光景はあの日、橋から落ちた川の中で薄れゆく意識の中での景色とぴったりかさなった。
その水は拓哉の手から、足から、身体から力を奪い、身動きが取れなくなる。
「ゴ、ゴボッ……」
口からは耐えきれなくなって大量に空気を吐いてしまう。
段々と目の前の泥水は姿を消し、拓哉の視界は真っ暗になった。
次に拓哉が目を覚ますと保健室のベッドの上だった。
ゆっくりと身体を起こす。
「目が覚めたのね」
ベッドの横には相沢先生が座っていた。
「水に入った途端、急に溺れたからびっくりしたわ。よかった、とりあえず無事で」
相沢先生は拓哉を労わるように優しく笑った。
拓哉も今は落ち着いて、先生の方に照れくさそうに笑顔を向けた。
「水中が苦手なの?」
「ええ、おそらく。前に死にかけたことがあったんで…」
拓哉には事故の原因に思い当たる節があった。
以前、ドブ川に落ちて死にかけたことがあった。
その際の恐怖がトラウマとなったのだろう。
拓哉はあんな時にさえ、死ぬことが怖かったのかと自分に落胆しつつも先生に話した。
が、先生から帰ってきた言葉は拓哉が予想もしていなかったものだった。
「ーーーそんなことあったかしら?」
「どういうことですか?」
先生の明らかに不自然な言動に拓哉は食いついた。前々からおかしく思っていたことはいくつかあった。
それらが重なりあって今の矛盾にもすぐ気付くことができた。
「なんで小学校で始めて会ったはずの先生が、昔から知っていたようなこと言うんですか?」
「いや、その間違えたのよ…」
「前から色々と不自然な点はあったんですよ。例えば、入学直後のテストとか、国がどうとか…」
「気のせいじゃないかしら?」
「転校の話が絡んでるんじゃないんですか?」
そこまで言うと、先生は観念したように一度息を吐いた。
それから、拓哉に向かって話し始めた。
「あなたは本当に賢いわね。さすが1位ね」
「だから1位って何なんですか⁉︎」
「話すわよ。それも、全部」
先生の顔から笑顔や感心などの感情が消えた。
まっすぐに拓哉の目を見ると、「とりあえず…」と切り出して話し始めた。
「さっき、あなたの転校がほぼ決定したわ」
遠足の外堀が冷めたころ、拓哉も有沙も学校に復帰してしばらく経ったころ、拓哉たちの学校ではプール開きがあった。
  浮き足立つ周りの反応とは逆に拓哉には頭を悩ます問題が2つもあった。
  1つは例の転校について。
  理由は先生も詳しくは喋ってくれなかったが、どうやら全国でトップクラスの成績を誇る拓哉は国立の小学校へ、ということらしい。
拓哉はもちろんずっと断り続けていた。
有沙の近くで、彼女を見守るために死にかけてまで戻ってきた過去でまた彼女から手を離す訳にもいくまい。
2つ目は…
「有沙ちゃん。おはよう」
「あ、たくやくん…おはよう…」
当の彼女が何だか元気がないことだった。
退院してからずっとである。
「なあ、お前らケンカしてんの?」
そんな中に口を挟んできたのは啓太だった。
有沙は浮かない顔をしたまま、教室から出て行ってしまった。
「してない…と思う……思いたい」
「? どっちなんだよ」
「わかんないよ。学校戻ってきてからずっとああなんだよ。僕何かしたかな?」
「それよりつぎプールだぜ。はやくきがえようぜ」
啓太に促されて、拓哉は水着に着替えつつもブツブツと悩みについて考えていた。
(何かしたかな…特に何もしてないと思うんだけどな…)
考えながらも、さっさと着替えて、教室から出た。
小学校低学年では着替えは女子も男子もなく、同じ教室にて着替える。
色々と危ない気がしたので、早々に着替えてその場から去ることにしていた。
特にプールはヤバい。
水着に着替えるのを男女で分けないのは中学生高校生でやったら犯罪現場になりかねない。
拓哉は人生経験は豊富とはいえ、このシュチュエーションはさすがに経験はない。
「おまたせ〜いこうぜ!」
「うん…」
着替えを終えた啓太が教室から出てきた。
念願のプールにウキウキしている側で拓哉は力なくとぼとぼと歩いていた。
「はい!じゃあみんなプールに入って〜〜!」
青い空の下、相沢先生が声を張り上げる。
中高とは違い教科専門の教師などおらず、基本担任の先生が全てを請け負っているため、プールの授業であってもそこにいるのは相沢先生であった。
(まあ、悩んでても仕方ないか…せっかくだから楽しもう)
指示通りに水に入る生徒たちと共に拓哉も入水。
足から入ったプールの水はとても冷たく、暑いこの季節にはとても気持ちいいものだった。
浅めのプールだったが、小学校1年生の肩くらの深さがあった。
「じゃあ次はプールの中に頭まで潜って〜〜!」
段階を踏んで水に慣らしていくのは事故が起きないために毎回行われることだが、周りも正直面倒くさいという態度だった。
中には、かねてから水泳を習っており、早く泳ぎたいという生徒もいた。
もちろん拓哉も泳ぎの経験は前の人生で何度もしているため、十分経験者と言えるだろう。
しかし、水に潜った途端、拓哉の心臓がドクンと高ぶった。
(なんだ⁉︎これ)
先ほどまで透明に透き通り、そこが見える綺麗な水であったはずが、その瞬間、拓哉の目には泥水のように黒々と濁った風景が映る。
その光景はあの日、橋から落ちた川の中で薄れゆく意識の中での景色とぴったりかさなった。
その水は拓哉の手から、足から、身体から力を奪い、身動きが取れなくなる。
「ゴ、ゴボッ……」
口からは耐えきれなくなって大量に空気を吐いてしまう。
段々と目の前の泥水は姿を消し、拓哉の視界は真っ暗になった。
次に拓哉が目を覚ますと保健室のベッドの上だった。
ゆっくりと身体を起こす。
「目が覚めたのね」
ベッドの横には相沢先生が座っていた。
「水に入った途端、急に溺れたからびっくりしたわ。よかった、とりあえず無事で」
相沢先生は拓哉を労わるように優しく笑った。
拓哉も今は落ち着いて、先生の方に照れくさそうに笑顔を向けた。
「水中が苦手なの?」
「ええ、おそらく。前に死にかけたことがあったんで…」
拓哉には事故の原因に思い当たる節があった。
以前、ドブ川に落ちて死にかけたことがあった。
その際の恐怖がトラウマとなったのだろう。
拓哉はあんな時にさえ、死ぬことが怖かったのかと自分に落胆しつつも先生に話した。
が、先生から帰ってきた言葉は拓哉が予想もしていなかったものだった。
「ーーーそんなことあったかしら?」
「どういうことですか?」
先生の明らかに不自然な言動に拓哉は食いついた。前々からおかしく思っていたことはいくつかあった。
それらが重なりあって今の矛盾にもすぐ気付くことができた。
「なんで小学校で始めて会ったはずの先生が、昔から知っていたようなこと言うんですか?」
「いや、その間違えたのよ…」
「前から色々と不自然な点はあったんですよ。例えば、入学直後のテストとか、国がどうとか…」
「気のせいじゃないかしら?」
「転校の話が絡んでるんじゃないんですか?」
そこまで言うと、先生は観念したように一度息を吐いた。
それから、拓哉に向かって話し始めた。
「あなたは本当に賢いわね。さすが1位ね」
「だから1位って何なんですか⁉︎」
「話すわよ。それも、全部」
先生の顔から笑顔や感心などの感情が消えた。
まっすぐに拓哉の目を見ると、「とりあえず…」と切り出して話し始めた。
「さっき、あなたの転校がほぼ決定したわ」
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