異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

S・R

148話 元太の修行物語21〜元太の異能〜

「今じゃ!一気に畳み掛けるぞい!」
「「おう!」」
「うん!任せて!」

 ソードが、邪神の首を切り飛ばした瞬間、マリフォイはチャンスを見逃さないように、全員に喝を入れる。
 そして、邪神討伐の道筋が見え、元太たちの士気が上がった。

 まずは、照子が宣言通り「自分に任せろ!」と言いたげな目で仲間たちに視線を流し、邪神に接近する。
 そして、右手で腹パンをキメた。
 破壊の魔力と、圧倒的魔力量で強化された身体強化から放たれる腹パンは、とんでもない威力を持ち、直撃を食らった邪神は頭部を置いて後方へ吹き飛んだ。

 そこでソードが待ち構える。
 ソードは、腰を下ろし、抜刀術の構えを取った。
 そして、目の前まで邪神が近づいた瞬間、目を"カッ!"と見開き、剣を鞘から抜いて目にも止まらぬ早さで邪神の体を真っ二つに斬る。
 しかし、それだけでは終わらない。

 上半身と下半身が別れて尚、邪神は自身の持つ圧倒的な再生力によって、体の再生を行う。
 それを防ぐために、マリフォイは魔法を発動する。

能力凍結アビリティ・フリーズ

 マリフォイが魔法を放った瞬間、邪神の再生能力が止まった。
 『能力凍結アビリティ・フリーズ』とは、文字通り相手の能力を凍結させる能力である。
 マリフォイは、邪神の再生能力を凍結させて、体の修復を強制的に止めたのだ。
 しかし、相手は邪神なので長くは持たない。

 そこで、現れたのが元太だ。
 元太は、邪神の目の前まで接近した後、上半身を空高く蹴り上げる。
 元太は、追い掛けるように飛び上がり、握り拳を作って右腕を引く。
 そして、元太の右腕が黄金色に輝いた。

「オラァァァァァァ!!!」

 邪神の上半身の目の前まで接近した瞬間、元太は雄叫びを上げながら黄金の右ストレートを放つ。
 邪神の上半身に、元太の拳が触れた瞬間、空が黄金色の光に包まれ、戦闘していたのを忘れるほど美しい光景が広がった。

 しかし、それも束の間。
 今度は、邪神の苦痛の叫びが空に広がったのだ。
 その叫びは、全ての人々に恐怖と絶望を与え、全ての人間に絶対の死を与える存在だと改めて認識させるほどの威圧感があったが、それを包み込むかのように黄金の輝きが増していった。

「もう、お前には勝ち目はねぇよ!」

 そう叫んだ瞬間、邪神の胴体は、光の粒子に包まれて、あっさりと消滅した。

「す、すごい.......!あれが元太の異能!」

 照子は、元太の"異能"の力を見て驚愕した。
 そして、ソードとマリフォイは、邪神の一部を消滅させる事に成功し、少しだけ頬を緩めたが、直ぐに気を引き締める。

「照子殿、戦いは終わっていない。気を抜くな」
「うむ。むしろ、ここからが本番じゃ。」

 マリフォイを中心にして考えた作戦は、邪神の力を少しずつ削ぐことである。
 その作戦の中心人物が元太。
 何故なら、元太の"異能"が、邪神に最も有効な攻撃手段だからだ。
 元太は、最初の邪神戦で"異能"を覚醒させていたのだ。
 その名は『黄金の右腕』。
 効果は"右手で触れた神秘的力を全て無効化する"である。

 邪神の体は、優真の"魔力"と"神力"という神秘的力で構成されている。
 つまり、元太は右手で触れるだけで倒すことが出来るのだ。
 しかし、"異能"が発現したばかりなので上手く使いこなせていない。
 だから、少しずつ邪神の力を削いで、少しずつ邪神の体を消滅させることにしたのだ。

 邪神の胴体が消滅し、残るは頭部と下半身のみ。
 邪神は、自分の胴体を消されて危機を感じたのか、急いで肉体の再構築を始めた。

「させないよ!」

 照子は、それを防ぐために邪神の頭部をオーバーヘッドキックで、元太の方に蹴り上げた。

「おっしゃぁぁぁぁぁぁ!俺に任せろ!」

 元太は、飛んできた邪神の頭部を破壊する為に、空中を蹴って目にも止まらぬ早さで突っ込んだ。
 そして、邪神の頭部の目の前まで接近した瞬間、光り輝く『黄金の右腕』を放つ。
 邪神は、それに対抗するように、口を大きく開いて、高密度な魔力の光線を放つが、時間稼ぎすら出来ずに、頭部も破壊されてしまった。

「残るは下半身のみじゃ。邪神の力は3分の1程度しかないが油断は禁物じゃぞ」

 どこか油断していた元太と照子は、マリフォイの警告で気を引き締め直した。

 元太たちが警戒心をより一層高める中、邪神は自身の肉体の再構築を続けていた。
 元太が、頭部を破壊している一瞬の間に、下半身のみで肉体の再構築を行っていたのだ。
 そして、それは今終わる.......。

 — グォォォォォォォ!!!

 そこには、ただ破壊を求めるだけの怪物ではない.......自分に初めて痛みという物を与えた存在への憎しみを燃やす化け物がいた.......。

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