異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

S・R

143話 元太の修行物語16〜賢者さんの失敗談〜

「一つだけ言っておくがのぅ.......儂の前世は超絶美少女だったんじゃぞ?」

 ここで出てくる仰天情報。

「おぉ!マリフォイさんって転生者だったんだ!」
「そして前世は超絶美少女だったのか.......何故、今世は超絶美少女ではないのだ?」
「ソードよ.......お主は、いつも無意識に失礼なことを言うな.......コホン、今世の顔も前世と似て超絶美少女だったのじゃが、魔法の実験で失敗して、こんな顔になってしまったのじゃ.......てへぺろ!」

 このアホな賢者さんは、数十年前にやった実験に失敗して、醜い顔になってしまったようだ。
 実験内容は小さい胸を大きくする魔法の実験である。
 昔の賢者さんは、超絶美少女であったが、お胸が小さい.......いや、無いと言っていいほど平べったいのだ。

「そんなくだらない理由で自分の顔を歪めんじゃねぇよ.......」

 と言って、元太は呆れた顔をした。
 そしてソードは、遠い目をして昔のことを思い出していた。

「賢者殿は、よくアホな事をすることで有名だからな。私も若い頃は、よく実験体にされていたものだ.......」
「それは大変だったんだねぇ.......」
「師匠とマリフォイさんって昔からの知り合いだったんだね!」

 ソードは小さい頃、孤児で食べ物を食べることすら命懸けで、大変な人生を送っていたのだが、ひょんなことから賢者に出会って、どんな事でもするから養って欲しいと土下座して頼んだそうだ。
 そして養う条件として、ソードは賢者の実験体にされたのである。
 とはいえ、もちろん命や人体に影響の無い実験しかしていない。
 賢者さんは、お胸の実験で反省したのである。

「賢者殿と一緒にいた時は、魔法を教えて貰っていたのだが、属性魔法の才能が全く無くてなぁ.......。結局、出来るようになったのは魔力の掌握と剣術くらいだ」
「師匠の『修羅悪鬼』は、賢者さんの元で培った魔力操作が生きて、編み出された技なんだな!」
「まぁ、そんな事は置いといて、邪神は直ぐ此方に向かって来るから、その対策を練らねばならないぞ」

 ソードは、これからやるべきことを提案した。

「確かにそうじゃったのぅ」
「どうしたの?そんなことで悩む必要ないじゃん」
「どういう事だ?」

 ソードは、照子の言っている意味が分からず、質問した時、元太が前に出た後、握り拳を作って大声で言った。

「俺たち4人で真正面からぶん殴る!作戦なんていらねぇ!」
「そうだよ!そもそも邪神には小細工は効かないだろうしね!」

 元太のアホな考えを聞いた瞬間、マリフォイとソードは呆れた顔をしたが、照子が邪神には小細工は意味が無いと言ったら、2人は頷いて納得した。

「確かに、邪神相手に小細工は意味をなさないだろうが、何かしらの用意はした方が良いだろう」
「うむ、その辺は儂に任せるのじゃ。えげつない罠を数え切れないくらい設置しておいてやろう」

 元太と照子の意見に、マリフォイとソードは納得したが、一応、罠くらいは用意した方が良いと言って、邪悪な笑みを2人して浮かべた。

「な、なんか2人の笑顔が、どことなく天草くんに似てない?」
「た、確かに.......あいつが何か企んでる時の笑顔に似てるぜ.......ここが優真の世界だから、その住民も創造主に似るってことか?」
「.......その説あるよ」

 元太と照子は、何かを思い出したのか、足をガクガクさせながら震えていた。

 それから時間は、あっという間に過ぎていった。

 ソードは、自分の魔力を効率よく操作できるように、体調を整えていた。
 マリフォイは、怪しげな罠や設備を「キヒヒ」と、不気味な笑い声を上げながら設置していた。

「師匠の魔力の練り上げの練度が、俺とはケタ違いだ.......」
「だね!でもマリフォイさんは、なんか気持ち悪い笑い方しながら、罠とか設置してるけど、あれを見ると前世と昔の姿が、超絶美少女とか信じられないね!」

 ソードが行っている魔力の練り上げに、元太とは舌を巻いたが、逆にマリフォイの気持ち悪い笑い声にドン引きしていた。
 一応、マリフォイは、この世界で一番の魔法使いではあるのだが、顔に関係なく気持ち悪い行動をよくするので、周りの人たちは全員ドン引きするのである。
 本当に凄い人物ではあるのだが、行動がいちいちキモイのだ。

「照子よ、お前の気持ちに共感はできるが、あまりそういう事を大声で言うのは、どうかと思うぞ」
「私の声は大きいから、しょうがないよ!それに元太の声も結構大きいから聞こえてると思うよ?」
「お主らは、本当に失礼な奴じゃのぅ.......まぁ、ノリで言ってるのは分かるから良いが、この世界の住民には、あまり通じんから気おつけるのじゃぞ」

 と言って、マリフォイは2人に諭した。
 そして、マリフォイは、チラチラと2人を見ながら言った。

「まぁ、できれば止めてくれると嬉しいのじゃがのぅ.......」

 そして、元太と照子は、声を合わせて.......

「「無理っす」」

 と言った。

「お主らも"優真殿"と似ておるわい」

 誰が、あいつ優真に似てるだ。
 ぶっ飛ばすぞ?
 俺は女にも手加減なしの紳士だからな。
 甘く見てると火傷するぜ?

 とりあえず、俺と照子は目を合わせた後、同時に叫んだ。

「俺を、あんな悪魔と一緒にするな!」
「私を、あんな鬼畜と一緒にしないでよ!」

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