異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

S・R

141話 元太の修行物語14〜元太VS邪神〜

「これなら負ける気がしねぇぜ!」

 元太は獰猛な笑みを浮かべて、邪神の方へ飛んでいった。
 そして第2ラウンドが始まった。

 元太と邪神が見つめ合って、約数秒後、両者共に目にも留まらぬ速さで突っ込んだ。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 —ゴァァァァァァァァ!!

 元太と邪神は、叫びながら同時に拳を放った。
 そして、元太と邪神の拳は、お互いの頬に当たり、同時に吹き飛んだ。

「す、すごい.......。早すぎて動きが見えない」
「俺は見えるが、あの戦いに割り込むことが出来そうにないな.......。高次元過ぎてヘタに割り込んだら、元太の邪魔をしかねん」

 照子は、元太と邪神の動きを全く見ることが出来ないが、大気中で弾けている圧倒的な魔力量を感じ取り、目の前の戦いを見て戦慄していた。
 そしてソードは、自分が教えた"奥義"を、元太が昇華させる事に成功し、新たな"最終奥義"を編み出したことに、少し嫉妬し、しかし、それ以上に弟子の成長を見て嬉しさが、胸の奥奥底から湧き出してきた。

 パワーは、ほぼ互角か.......でも、あいつ邪神は『憤怒』の力で、馬鹿みたいな勢いで魔力と身体能力が上昇してやがる.......俺も身体能力は上昇しているが、魔力は増えてねぇし、相手の方が上昇率は上だ。
 しかも、魔力が増える度に、身体強化の魔法の効果も上がってるな.......。

 邪神は理性の無い化け物じゃないのか?
 これマジで無理ゲーだろ。
 ふざけんなよコラ。
 元の世界に帰ったら、優真に文句言ってやる。
 力では勝てないから、あいつを煽るだけに済まそうか。

 と、くだらない事を考えながら、元太は、素早く邪神の能力を分析していた。

「うわっ!もう身体能力を越されちまった!」

 元太は、「おっとっと」と言いながら、両手を上げて、邪神の拳を避けた。
 そのまま、両手を合わせて拳を握り、元太は邪神の頭に拳を振り下ろした。
 元太の拳を受けた邪神は、そのまま頭から地面に落ちた。
 見事なカウンターである。

「元太の攻撃が直撃したよ!結構なダメージ与えられたんじゃない!?」
「あ、あぁ!あの攻撃は、かなりの威力があったぞ!」

 と言って、2人は握り拳をしながら、喜んだ。

「こらっ!フラグ立てんじゃねぇ!」
「大丈夫だよ!物語の世界じゃないんだから、実は邪神には少しのダメージも与えられてません!なんて事あるはずないでしょ?」
「うむ。私は誇らしいぞ。我が弟子が邪神を圧倒してるなんて後輩たちに自慢できるな!ガハハ!」

 こいつら.......!?照子は馬鹿だから怖いもの知らずなのは分かるが、師匠もなんてこと言いやがんだ.......。
 それに、かなりギリギリの戦いだぞ?
 一発一発の攻撃が大ダメージものの威力があるとかシャレにならん。

 しかも、初めての街に邪神が現れるとか、クソゲーにも程があんだろ!
 普通、ラスボスがいる場所は、雷が降り注ぎ、植物は枯れ、邪神の眷属がウジャウジャ蠢いている荒地とかだろ?
 これをゲームに例えると、"始まりの街"にラスボスが、いきなり現れるようなもんだぜ?

「忘れているかもしれないから言っておくが、ここは優真の世界だぜ?この程度で邪神にダメージが入るわけねぇだろ。しかも、あいつは優真の神力の残りカスだ。何も無かったかのように起き上がんだろ」
「あ.......ここって天草くんの世界だったね.......。忘れてたよ。うん、あの程度の攻撃じゃ、かすり傷も付かないよね!」
「おいコラ、さりげなく俺ごときの攻撃じゃ、ダメージを与えられないって言ってんじねぇよ。頑張ってんだから少しは褒めたらどうなんだ?」

 と言って、元太は照子にジト目を向けた。

「だって事実でしょ?」

 見よ、この曇りなき眼を。
 なんの悪意もなく言ってるから余計に質が悪いぜ。

創造神様優真のことは見たことないから、よく知らないが、さすがに、あの攻撃は効いただろ」

 と、ソードが言った瞬間、邪神が落ちたところから、黒よりも暗い漆黒の光の柱が現れ、中からは"無傷"の邪神が現れた。

「まずいな.......。俺も限界が力から、やべぇぞ」
「私が囮になるから、お前ら今度こそ逃げるんだぞ」

 元太は限界が近づき、今にも倒れそうな程ふらついて、ソードは死の覚悟をして鞘から剣を抜いた。
 シリアスな雰囲気が漂っている中、照子が気の抜けるような事を言い出した。

「よしっ!みんなで逃げよう!」

 元太とソードは、照子にジト目を向けた。

「え.......その目は何!?だって私、死にたくないし、お家に帰って布団でゴロゴロしたいの!」

 うわー、こいつ有り得ねぇ。
 うしろには街があんのに、自分だけ逃げるとか、こいつクズだな!
 しかし、死にたくないのも事実だ。
 マジで、どうしよ.......。

 元太は顎に手を当てながら、全員が生き残る方法を考えた。
 その時、突然、空が光り輝き、超絶美少女が現れ.......

「ほっほっほっ.......儂は賢者じゃ。助けに来たぞい。勇者殿と破壊魔法の使い手よ」

 否!現れたのはヨボヨボの婆さんだった!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品