異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

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140話 元太の修行物語13〜元太の覚醒〜

「お、お前たち!回復し終わったら王国へ戻れと言ったはずだぞ!」

 目の前に元太と照子が現れ、嬉しさ半分、怒り半分で叫んだ。

「馬鹿野郎!師匠を置いて俺たちだけで帰れるわけねぇだろ!」
「そうだよ!今度は私たちが助ける番だからね!」

 2人は黒い太陽の中で苦しみながらも、満面の笑みでソードを必ず助けると言った。

「.......ふっ、お前たちのようなバカに何を言っても無駄だな」
「あったりめぇだろ!」
「うんうん!バカは叩いても治らないからね!」
「いや、褒めてないから威張るなよ.......」

 大陸を滅ぼすほど威力がある黒い太陽の中にいるのだが、元太と照子とソードは不敵な笑みを浮かべながら闘志を燃やしていた。

「照子!この黒い太陽を跳ね返すぞ!」
「うん!破壊魔法 破滅の太陽デリート・ソラー!」

 太陽には太陽で迎え打てばいい。と考えているのだろうか。
 照子は、赤黒い太陽を放って押し返した。
 しかし、完全に押し返すことは出来ず、黒い太陽から脱出する事しか出来なかった。

「おい!まだ押されてんぞ!」
「ふっふっふ.......この天才魔法少女 照子ちゃんをナメちゃいかんよ?異能発動!『強化』!」

 照子は、異能で『破滅の太陽デリート・ソラー』を強化し、邪神の黒い太陽に対抗した。
 照子が放った赤黒い太陽は数秒だけ邪神の黒い太陽を止めることに成功したが、やはり邪神の力には勝てず、一瞬で黒い太陽は赤黒い太陽を飲み込んでしまった。

「くっ.......やはり照子殿でも勝てないか.......」
「ちっちっちっ.......ソードさんもまだまだ、だなぁ」

 と言って、照子は不敵に笑った。

「ま、まさか!まだ奥の手があるのか!?」
「いや、無いよ」

 照子が、あっけらかんと言ったので、ソードは空中でズッコケるという器用なことをした。

「今はふざけている場合ではないぞ!」
「ふざけてないよ」

 ソードは怒鳴って怒ったが、照子の真剣な眼差しを見て息を飲んだ。

「だって元太がいるじゃん」
「.......!?」

 この時、ソードは気付くことが出来なかった。
 元太と照子が、黒い太陽の中に入って尚、無事だった理由.......元太が、いつの間にか黒い太陽の目の前まで迫っていた事.......そして元太の体から僅かに黄金の魔力が現れていたことに。

「俺には、輝のようなカリスマ、静香の流れるような綺麗な剣術、彩のように魔法の才能なんて一切ねぇ.......」

 それは幼馴染たちに対する嫉妬だ。
 元太は、ただ頑丈というだけで特別な才能など持っていなかった。

「そして優真の圧倒的な力も、照子のような圧倒的な魔力量を持ってるわけでもねぇ.......!」

 元太の言っていることは、ずっと前から感じていた劣等感だ。
 周りには凄い才能を持った奴が沢山いるのに、自分には何も無い.......。
 元太は嫉妬していたのだ。

「確かに才能なんて無かったけどよぉ.......でも最高な仲間たちに囲まれたんだ.......」

 そして元太は、"カッ!"と目を見開き、叫んだ。

「今、負けたらアイツらに顔を合わせらんねぇ!それに何より"漢"が廃るぜ!」

 元太は、大きく声を吸い込み、もう一度、大声で叫んだ

「最終奥義 修羅悪鬼 極!」

 元太は、ソードが持つ奥義を使った。
 否。
 元太は、ソードの奥義を進化させ、新たな奥義を生み出したのだ。
 その名も『修羅悪鬼 極』。
 この技は、血液と魔力の流れに神力を混ぜた技だ。

 元太は、ソードの元で地力を上げると共に、『修羅悪鬼』も学んでいたのだ。
 この技に必要なスキルは、身体機能を掌握するスキル『身体掌握』、魔力を掌握するスキル『魔力掌握』が必要なのだ。

 この技を取得する事は出来たのだが、まだ熟練度が低く、ソードのように一瞬で発動することが出来ないのだ。
 しかも、『修羅悪鬼』が通用しないのは目の前で見た。
 そこで考えて行き着いた答えが、人間では神に勝つことが出来ないのなら、自分も神の力を使えば良いんじゃないのか?だ。
 そして、神の力を使うには、どうすればいいのか考えて思い付いたのが、優真の加護を媒介にして優真から神力を奪えば良いんだ!である。
 思考が犯罪者のソレだ。
 
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 元太は、腕を90度に曲げて、血液と魔力と神力の流れを加速させた。
 元太の体からは、黄金の"何か"が溢れ出し、ソードとは比べ物にならない程、身体能力が上昇していった。

「これなら負ける気がしねぇぜ!」

 元太は獰猛な笑みを浮かべて、邪神の方へ飛んでいった。
 そして第2ラウンドが始まった。

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