異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

S・R

130話 元太の修行物語3〜元太のライバル!?〜

 目を開けられないほど強い光に包まれ、次に目を開いた時には、予想通りの場所にいた。
 目の前には縦の幅が小さい階段があり、その上には玉座に座っている人が5人いた。
 そして、周りには貴族と思われる人たちがいた。

「おー!勇者様の召喚に成功したぞ!」
「これで世界は救われる!」

 この世界の貴族と思われる人たちが、涙を流しながら大喜びしていたが、俺は、それどころではない。
 あいつ、まじで俺を勇者召還に送り出しやがった.......
 俺が、これからどうするか考えている時、玉座に座っている人達が立ち上がって階段を降りた。

「余の名はデヘル・シュナイツ。シュナイツ王国の王である。勇者殿、まずはお詫びをさせてくれ。急にお呼び立てして申し訳ない」

 と言って、1番大きな玉座に座っていた男が頭を下げた。
 あの.......国のトップに頭を下げられると息苦しくなるから止めて欲しいんだけど.......
 俺が焦って大量の汗を流している時、隣から居るはずのない聞き覚えがある人の声がした。

「別にいいですよ!私は勝手に着いてきただけですしね!」

 俺は"ギョッ"と隣を見た。
 そこには異世界組のクラスメイト、西野 照子がいたのだ。

「.......何でてめぇがいんだよ!」

 そして西野 照子は、その言葉を待っていたようで、元太に向かって"ビシっ!"と指を指し、予め考えておいた決めゼリフを言った。

「ふふん!元太だけ強くさせないからね!なんてたって君は私のライバルなんだから!」
「はぁ.......照子、勘弁してくれよ.......」

 照子が言ったことに、元太は溜息を吐いて額を抑えながら首を横に振った。
 これは、元の世界では普段通りの光景だ。
 照子は元太をライバル視しているのだ。
 照子が、元太をライバル視している理由は、元太は守ることに特化した力を持っているが、対して照子は"攻撃"ではなく"破壊"することに特化した力を持っているのだ。
 間違えないで欲しいのでもう一度言う。
 "攻撃"では無く"破壊"に特化しているのだ。

 異世界召喚された時、照子は自分の力に絶対的な自信を持っていたが、模擬戦で元太に楽々攻撃を防がれてしまったのだ。
 それから元太は、照子にライバル視されている。

「話が見えんのだが.......知り合いなのか?」

 国王は、2人の言い合いに入り込めず、しばらく待っていたが、話がいつまで経っても終わらなそうなので無理やり入った。

「クラスメイト.......別の世界で一緒に戦った仲間です.......」
「こいつは私のライバルです!」
「な、なるほど.......」

 国王は、2人の空気の落差に戸惑っているようだ。
 無理は無いだろう。
 初めて、この2人の会話を聞いた人は皆、こんな感じなのだ。

「それで話を戻してもいいか?」

 そこで俺と照子は、国王の会話を遮っていた事に気がつき、慌てて頭を下げて謝罪した。
 そして、やっと話を進められるようになったので、国王は続きを話し始めた。

「お主たちは別の世界で一度、勇者召還されている事は"シヴァ様"から聞いている。」
「"シヴァ様"ってどなたですか?」

 元太は首を傾げながら、疑問に思ったことを聞いた。
 "シヴァ"という名前を初めて聞いたのだろう。

「シヴァ様とはこの世界を創造して下さった偉大なる主神だ」

 そこで俺は"主神"という言葉が頭の中に引っかかった。
 しばらく考えた後「あっ!」と言って手の平を叩いた。

「天草くんの事じゃない?」
「俺が言おうとしたのに先に言うなよ.......」
「ふっ.......勝った」

 特に勝負はしていなかったけど、照子にドヤ顔されると無性に腹が立ってくるぜ.......女だけどシバいてもいいよな?
 そして俺は、指を"ゴキゴキ"と鳴らしながら照子に近づいた。

「あ!もしかして私にスケベなことをしようとしてるの!?先に言っておくけど元太はタイプじゃないからね!」
「どこをどう見たらスケベな事をしようとしているように見えるんだよ!?」

 照子の言ったことに元太は鋭くツッコミを入れた。
 良いツッコミだ。
 しかし、周りにいる貴族や王族からは、まるで変態を見るような、冷ややかな視線を注がれていた。
 .......あれ?また涙が出てきたぜ.......
 誰かは分からないが近くにいる貴族が言った。

「男の涙とか需要が無いから泣くな。情けないぞ」
「やっぱここはあいつが作った世界なんだな!」

 一言だけ言わせてくれ.......もう帰りたい.......

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