126話 魔術師ヘンリー④

「ひぃーはぁー！！そこの女！中々つぇーじゃねぇか！俺の女にしてやろうか！？可愛がってやるぜ！？」

　ナビが、目の前に居る化け物共を一瞬で消滅させた後、ヘンリーがナビにの事を自分の女にするために近づこうとした。
　しかし、その歩みを優真が殺気を放って止めた。

「おい.......俺の目の前で、その言葉は禁句だ。次、言ったら殺すぞ？.......いや、殺すことは確定事項だけどな。」
「ひぃーはぁー！！どちらにしろ殺すつもりじゃねぇかよー！」
「あぁ.......そうだな。ナビ.......悪いけどコイツは俺が殺る.......お前は、そこら辺で見てろ。」
「分かりました。」

　と言って、ナビは後ろに下がった。
　俺が、魔力を高めて戦いの準備をするのと同時に、ヘンリーも魔力を高めて召喚魔術を発動する準備をした。
　そして先に動き出したのはヘンリーだった。
　優真は、ヘンリーが召喚魔術を使って、また何かを召喚すると思っていたが、自分の身体能力を強化して、こちらに突撃してきた。

「また、何か召喚すんのかと思ってたが.......まさか自分の不利な接近戦を選ぶなんてな。」
「ひぃーはぁー！！なーに言ってんだー！俺は接近戦も得意だぜぇ！」

　ヘンリーが、俺の目の前まで接近した後、何かしらの攻撃をするかと思ったが、それは違った。俺の目の前で気配ごと急に姿が消えたのだ。

「何処に行った？.......」

　恐らく、隠蔽神の能力を使って、自分の姿と気配を隠蔽したんだろうな.......
　召喚魔術は、ただ単に生物を召喚するだけの術ではない。召喚魔術は、召喚者と召喚された生物が契約した時、召喚者は召喚された生物の能力を一部使う事が出来るのだ。
　優真が、ヘンリーの姿を探すために、周りを見渡していたら、腹から激痛が走った。ヘンリーが、優真の腹に向かって右拳で殴ったのだ。
　神々を召喚できるほどの力を持っているだけあって、召喚術士自身の戦闘能力も、かなり高いようだ。いや、召喚術士自身の戦闘能力が高くなければ、召喚された者の力を使いこなす事が出来ないだろう。
　そう考えると、召喚術士自身の高い戦闘能力が必要になるのも当然と言える。

「い、痛てぇ.......召喚魔術使いの魔術師の拳が、こんなに痛いなんてな。まぁ、このくらいなら、いくらでも耐えられる。」

　優真は、自分のお腹を擦りながら、余裕を持った態度をヘンリーに見せた。
　その態度が少しヘンリーの気に触ったようだ。

「ひぃーはぁー！！強がってんじゃねぇよぉ！」
「.......あんまり調子に乗ってると痛い目見るぜ？」

　瞬時にヘンリーの目の前まで走り、優真はヘンリーの右手を掴んだ。
　そして憤怒の力を使って、全力でヘンリーに向かって殺気を放った。

「あ.......あぁ.......！？！？」

　そして、優真の全力の殺気を受けたヘンリーは、恐怖で気が狂って暴れだした。

「俺は、俺の女に手を出そうとする奴は絶対に許さねぇ.......」

　優真は決め台詞を言った後、ヘンリーの腕を離して地面に捨てた。