105話 祓魔師ヒデキ

「俺達はヒデキって奴をやっつければいいんだよな？」
「うむ。じゃが、所詮は人間じゃし、優真も何も言っとらんから、そこまで警戒する必要は無いじゃろう。」

　ヒデキという男は祓魔師だ。クミホの言う通り特別な力を持っているわけでも無いし、才能に恵まれている訳でもない。だから、そこまで警戒する必要は無いのだ。つまり、ただの凡人だ。
　だが、全く警戒しない訳にはいかないので少しは警戒するだろう。

「その言い方だと俺もただの人間になるんだけどな.......」
「ただの人間じゃろ？」

　元太は確かに、ただの人間だが、普通なの人間と違うところは異世界に召喚された勇者一行というところだ。

「まぁ、いいや。確かヒデキって奴は京都に居るんだよな？」
「うむ。儂の故郷でもある。」

　とクミホはどこか悲しそうに言った。それを見た元太は珍しく空気を読んで黙った。

「ここからだと京都まで少し時間がかかるな.......どうやって行く？」
「儂は転移を使うことが出来るから、それで行く。」
「転移なんて使えたのか！？」

　と言って、元太は驚いた。
　優希は転移などの高等技術などが出来なかったから驚いているのだ。だが、今の人格はクミホだ。クミホは優希の全ての力を引き出すことが出来るから優希の隠された力なども使えるのだ。

「それじゃあ、転移するから儂の肩に捕まるのじゃ。」
「分かったぜ。」

　元太はクミホの肩を掴み、クミホは一言「京都へ転移」と言って転移した。

◇

「本当に転移って便利だなぁ。」

　クミホと元太が転移した場所はそれなりに深い森の中だ。

「一度行った事がある場所なら、何処にでも行けるから便利じゃぞ。それに儂は京都なら行ったこと無い場所が無いからのう。」

　転移とは基本的には1度言った場所にしか行けないのだ。だが、1度言った場所なら何処にでも行けるという便利な術なのだ。
　しかし、一部の例外はある。例えば異世界への転移などだ。

「確か、ヒデキという男は、この近くにある小屋に住んでいるのじゃろ？」
「そうだ.......」

　と言って、元太は周りを見渡した。
　そしたら近くに一人分なら住めるくらいの大きさの小さな小屋があった。

「お！あの小屋じゃないか？」
「うむ。あの小屋じゃろうな。」
「それじゃあ、行こうぜ！」

　元太はクミホに目配せをし、小屋の扉を"トントン"と2度軽く叩いた。
　そして10秒くらいで扉が開き、20代後半くらいの男性が出てきた。

「俺の家に何か用か？」