88話 優希を食った理由

「それじゃあ、話を聞こうか。クミホ？」



優真はナビとクミホを連れて家に帰った。クミホから優希についての話を聞くためだ。



「う、うむ。」



クミホは緊張しながら、一言だけ短く返事をした。



「うわぁぁぁ、この子が九尾のクミホちゃんかぁ〜。」



「本当に優希さんとは別人なの？見た目は完全に優希さんと同じなのに.......」



「そうですね。ですが、魔力の質は全く違います。」



「うん。でも結構強い。」



「本当に優希に似てるね！」



クミホを見た俺の嫁達は、それぞれ思った事を言った。
だが、その中で心配そうにしてるのは教師である姫だけのようだ。
アルテなんて、いつも通り呑気にしているし、危機感が全く無いように見える。
だが、実際はみんな優希を助けたくて堪らないはずだ。この世界に来て初めて仲良くなった友人だからだ。



「それじゃあ、説明するのじゃ。.......まず最初に言っておくが、優希は儂が食った.......」



気まづそうにクミホかそう言った。何故なら、優真がキレるかもしれないからだ。
だが、俺は別にキレていない。クミホの顔を見たら、何か理由があると分かるからだ。



「なんで食ったんだ？」



「優希が、あの醜い豚に捕まった時、いろんな感情に押しつぶされていったのじゃ。昔、守ることが出来なかった里の者達や父、母.......そしてお前達の事を巻き込んでしまったことへの罪悪感とかのう。」



優希は今まで色々な事を背負い過ぎたのだ。力はあるとはいえ優希はまだ16歳の少女だから、そんな物を長い間、背負っていたら罪悪感などで押し潰されるのは当たり前なことだ。



「じゃから、優希の心が壊れる前に食ったのじゃ.......その前に何とかして、優希が立ち上がる理由を作ろうとしたのじゃが、その前に壊れそうじゃったから、食って優希の意識を切り離したのじゃ。」



まぁ、結局は儂が悪役みたいな事をしただけじゃったのう。



「なるほどな。」



俺は顎に手を当てながら考え事をした。そしたら彩とミーシャが、とても物騒な事を言った。



「クミホちゃんが食べちゃったのなら、腹を切り裂いて取り出せばいいんじゃない？」



「それよりも楽な方法がある。私の邪眼で優希の魂を引っ張り出せばいい。」



ミーシャは相変わらずだが、彩がこんな事を言うのは予想外だ。彩もここに居るうちにみんなに毒されていってるのだろう。



「お前ら.......あまり物騒なことを言うな。クミホが怖がってるだろ？」



優真の言う通りクミホが顔を真っ青にし、体がガタガタ震えていた。



「.......お主の嫁達は物騒なのしかおらんのう.......」



「ま、まぁ、否定は出来ないな.......」



クミホが震えながら言った言葉に、俺は苦笑いしながら答えることしか出来なかった。



「さて話を戻すが、優希を取り戻す方法はあるんだよな？」



「.......うむ。あるにはあるのじゃが.......」



そしてクミホは暗い顔をしながら、優希を取り戻す方法を説明した。