異世界に召喚された殺し屋は自由に生きる

S・R

6話 訓練1

 俺が自室で、この世界の歴史や常識、そして強くなる方法を調べている時、"トントン"と扉が叩かれる音が聞こえてきた。

「どうぞー」

 俺は迎えに来たメイドに、中に入ってきてもいいと許可を出した。
 そしてメイドは「失礼します」と言って、中に入った。

「おはようございます。お食事の時間になったのでお迎えに上がりました。お着替えの手伝いをさせて頂きます」

 な、なんだと.......!?着替えの手伝いをしてくれるのか!
 ちょっとエッチな展開を妄想しちゃったけど、思春期真っ只中の男の子だし仕方ないよね!

 元殺し屋にだって性欲はあるのだ。
 まぁ、もちろん断るけどな。

「もう着替えてあるよ」

 ハニートラップに掛かって、数種間後に認知して下さいなんて言われたら困る。

「では食堂にご案内致します」
「はいよ」



 メイドに案内され、俺は食堂に着いた。
 そして、食堂の圧倒的広さに少し驚いてしまう。

「へぇー、ここが食堂かぁ.......めっちゃ広いな」

 学校の体育館の倍以上の広さはあるんじゃないか?こんなに広くする必要ないだろ。
 いくらかかったのかな。

「天草君おはよう!よく眠れた?ベットふかふかで、凄く気持ちよかったよね!」
「おはよう。よく眠れたよ。確かに、あのベッドは良かったね。今までで1番かもしれない」

 食堂で姫乃に話しかけられたので、笑顔で対応した。

 本当は寝ずに【叡智之神】を使って、この世界の歴史、常識、低いステータスを補う方法を探してたんだけどね。
 だから俺は少し寝不足で眠い。この後の訓練に着いていけるか少し心配だ。

「それは良かった。ねーねー、天草君も一緒に食べない?今日の朝ごはん、パンとステーキだよ。あそこの席で座って食べよ!」
「いいよ」

 朝食の誘いに二つ返事で了承して着いていくと、天童達もやって来た。

「僕達も一緒に食べていい?」
「みんなで飯を食った方が美味いからな!」
「確かにその通りね。あなたも偶には良いこと言うじゃない。異世界にいきなり連れてこられて天草君も不安でしょうからね」

 相変わらず天野さんは優しいっすねぇ。

 その優しさに思わず涙を流しそうになるが、何とかこらえる。

「なんだと!?たまにはってなんだよ!俺にだって良い事を言う時くらいあるんだぞ!」
「はいはい、分かりました。早く食べましょ」

 才剛は"ぎゃーぎゃー"と騒いでいたが、天野は適当に流していた。

「そうだね、早く食べよ。もう、お腹ペコペコだよぉ〜」

 そして俺達は手を合わせ、声を合わせて言う。

「「「「「いただきます」」」」」

 俺はパンとステーキに手を付けた。

「確かに上手いな。だけどパンと肉が少し固いな。文明レベルが低い分、食文化もあんまり進んでないのか。だったら他のも.......」

 と、俺が考え込んでいると、姫乃に話しかけられた。

「そんなに考え込んじゃって、どうしたの?今は食事中だから、ご飯に集中しないとダメだよ」
「あ、そうだね。ごめんごめん」

 姫乃に言われた通り行儀も悪いし、メイド達が一生懸命作った朝ご飯だから、味を楽しんで食べるべきだろうと思ったので、素直に謝って食べた。

「そろそろ、みんな食べ終わる頃だし食器とか片付けようか。」

 俺達が、食器の片付けを始めようとした時、メイド達に止められ、メイド長らしき人がクラスメイト全員に聞こえる声で言った。

「この後、この国の騎士団団長と剣の訓練をするので訓練所までご案内します」



 俺達は適当に動きやすい服装に着替えた後、訓練所の広場に集まった。
 ちなみに、着替える場所は、ちゃんと更衣室だから男女は別だ。

 クラスメイトが、全員着替え終わった後、身長190cm位ある大男が現れた。

「俺はフィーナ王国騎士団団長グラドだ。よろしくな。訓練はかなりきついがみんな頑張ってついてこいよ!」

 ムキムキなオッサンがやって来た。
 しかも、そこそこ顔が整ってやがる。

 俺は「だが、俺の方がイケメンだ!」と、心の中で呟く。

「まずは、この訓練所を10周だ!」

 いきなりの鬼畜メニューで、クラスメイト達は顔を引きつらせた。
 この訓練所は食堂の倍以上はありそうな程の広さがあり、さすがの俺でも少しキツイかもしれない。

 あれだな.......あのオッサンは俗に言う鬼教官ってやつだ。

「私運動は苦手だけど頑張らないと。天草君も頑張ろ!」

 姫乃は握り拳をして、気合を入れていた。

「うん!一緒に頑張ろ」

 と言った直後、姫乃は顔を真っ赤にしながら「一緒に.......一緒に.......」と、両頬に手を添えながら、体をクネクネさせていた。
 正直言って、少し気持ち悪い.......。

「なら、全員で競争して、誰が1番早いか勝負しようぜ!負けたやつは罰ゲームな。」

 と、才剛が提案した。

「それいいね。やってみようか。僕は絶対負けないからね!」
「それだと天草君が不利じゃない?ステータスが1番低いし」

 確かに俺が、クラスの中で1番ステータスが低いが、必ずしも負けるとは限らない。
 だから.......

「俺は別に構わないよ。勝つのは俺だから」

 と言って、不敵に笑った。
 元殺し屋ナメんなよ?



「いえーい!俺が1位ー!あっれぇー?言い出しっぺの才剛君がビリですかー?」

 と言って、俺は才剛に挑発していた。

「くそっ、負けたぁー。なんでそんなに速いんだよ。ステータスでは勝ってるのに」
「確かに不思議だよね。僕も頑張ったんだけどなー。」

 才剛と天童は、俺が1番早く走れた理由が分からず、疑問に思った事を口に出した。
 そして、それに天野が答えた。

「動きに全く無駄がないからよ。それに比べて私達は最後の方は疲労で速度が落ちてた。まぁ、それだけではないだろうけどね.......」

 天野の言う通り、俺の走りには全く無駄な動きがない。
 だが、それだけでは1番早く走れないので少しズルをした。

 さすがにステータスで圧倒されている状態では勝てない。
 だから脳のリミッターを外したのだ。
 人間は本来、10%程度しか力を発揮できていないのだが、一部の人間は任意にその枷を外すことが出来る。
 俺は一部の人間の中の一人だ。

 それにしても.......天野が、最後に言っていたこと気になるな.......もしかして、裏側の世界の住人か?.......まぁ、いっか!また今度、考える事にしよう。

「へぇー、天草君って凄いんだね!」
「あはは.......ありがとう姫野さん」

 姫乃が自分の事のように嬉しがっていたから、思わず苦笑いしてしまった。

「全員終わったか。次は剣の訓練をやるぞ!そこに、刃を落としてる剣があるから取ってこい。他に使いたい武器があれば剣以外でも構わないぞ」

 そしてクラスメイト全員、大きな声で「はい!」と返事をして、自分に合った武器を取りに行った。

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