ソシャゲの相棒(♂)は異世界転移したら美少女だった!?

雨夜☆ドリー

〜第三章〜 迎撃戦 城塞都市ザルホザーツ【六】

 僕とレインが城塞都市ザルホザーツの西門をくぐると、大勢の観衆が出迎えてくれる。

 「ギルド《大鴉の尻尾レイヴンテイル》バンザ~イ!」
 「すげーぞ!お前さん達!」
 「ありがとうねぇー!」

 僕らは思いもしなかった大歓声に恥ずかしくなる。
 大観衆の中にマーチンさん達ギルドメンバーも手を振っている。
 「ご苦労だったね、二人とも」
 「まぁ、私たちに掛かったらこんなもんよ」
 「正直、マダゴランが三体いるとは聞いてなくて少し焦りましたけどね」
 「あぁ、それはサクラくんが広範囲索敵を掛けてくれたから、わかっていた……が、最悪私が出張らなければならないかとは覚悟していたぞ」
 「マーチンさんが出てこない方が上手く行くこともあるわよ」
 レインは笑いながら、アレ見ちゃうとね!と城塞都市周りの無数の穴ボコの方を見る。
 「あれ、やっぱりマーチンさんの仕業暴走か」
 僕も調子に乗ってマーチンさんを弄る。

 「新魔法の実験の成果だ………」

 マーチンさんの魔導書課金魔法の事の顛末は後でサクラとスズから詳しく話された僕とレインだった。



 ギルド支部に戻り、改めてギルド支部長ヘンドリック·ラッセンからお礼を言われる。
 「ありがとう。ギルド単体で街の防衛、凶獣マダゴラン三体の撃破、更には魔人ヴァンデルの撃退……君たちには何とお礼を言っても言い足りない。ありがとうございました」
 「いえいえ、全て依頼の範疇ですから、当然の事をした迄ですよ」
 「ありがとう。それとこの手紙をグラン·カルロリムのギルド協会会長に渡して貰えないだろうか?」
 そう言うと一通の手紙をマーチンさんに差し出した。
 「了解した。渡しておこう」

 挨拶を済ませ、僕らは今までの戦闘経験値を網膜鑑定してもらう。クエスト報酬はまた王都グラン·カルロリムで網膜鑑定をしなければならないらしい。
 魔人ヴァンデルと対峙した四人の成長力は素晴らしかった。

 「さぁ、グラン·カルロリムに帰ろうか?」
 帰り支度を馬車に詰め終わり皆に声を掛ける僕。
 「リョウマくん、すまないが先に帰ってくれないか?」
 「マーチンさん、何かやる事でも?」
 「うむ、ちょっとした野暮用だ。まぁ、用事を済ませたら直ぐに追いつくさ」

 「わかったわ、じゃあ帰りましょ」
 レインの号令で王都グラン·カルロリムへ………。


 僕らを見送るとマーチンさんは医療所へ向かう。
 「失礼する。アスマくんはいるかな?」
 医療所の窓口でアスマさんを呼ぶ。
 「マーチン様どうなされました?」
 「うむ。この前の話を詳しく聞きたくてな」
 「でしたら、こちらへどうぞ」
 アスマさんはマーチンさんを部屋に誘う。

 「才器の事ですよね?」
 「あぁ、頼む」
 アスマさんからの話はこうだ。
 「まず才器が何なのか……ここから話したいと思います」
 マーチンさんはアスマさんの話を静かに聞く。
 「才器はSランク以上の冒険者のみに覚醒する神器です。神器とは大袈裟ですが、才器とは、その方の才能の器……つまり隠された能力です。なので人格同様、人それぞれな様に才器も同じ才器と言う事は有り得ません」
 「Aランクでは発動しないのか?」
 「いえ、稀にAランク冒険者様でも発動する方はいますが………」

 「ふむ。なるほど、して才器の疲労度とは?」
 「才器は才能の器と話した通り、初めは器に才能が入り切らない為に才器発動者が最初に打ち当たる壁なのでございます」
 「ふむ。なら四人は才器発動の際に自らの器に才能が溢れてしまったと……」
 「えぇ、またマーチン様やレイン様リョウマ様は器が足りていたという事になります」
 「なるほど……その器は大きくなったりするものか?」
 「はい。ある程度は……経験値を積み大きくする事は可能です。然しながら才能の器なので、その人の限界値以上は無理だと思われます」
 「うむ。ありがとうアスマくん。勉強になった」

 アスマさんにお礼を言い医療所を後にし、僕らの後を追いかけるマーチンさんだった………。

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