転生凡人は天才悪役令嬢を幸せにしたい

かごめ@

3

神官長について行きさっきお母様と別れた場所へ戻って来た。するとお母様が立っていて、私を見つけた途端満面の笑みを浮かべて手を振ってきた。私はそれが何故か恥ずかしいような気がして俯いてしまった。前世の親の記憶もあるせいか、たまにお母様やお父様との距離がとても掴み辛く感じてしまう時があった。そこはとても申し訳ない。
「レイ、どうでしたか?私にも早く紋章を見せて下さい。」
そう言ってお母様は私の両方の手の甲を見た。
「早く出してごらん。」
そうお母様が言った。
正直、私はいつのまにか紋章が消えていることも気づかなかった。
「お母様、紋章の出し方が分かりません。」
そう私が言うと、お母様はハッと気づいた様子で、
「そう、教えて無かったわね。
自分の紋章を思い浮かべながら好きな方の手に力を込めなさい。そうすれば出てくるはずだから。」
私は言われたとおりに右手に力を込めた。すると、ホゥと紋章が浮かび上がってきた。お母様はそれを見て
「まぁ!水属性なのね。髪や瞳の色は私と同じなのに属性はお父様と一緒なのね!」
そういいながら私の手の甲をお母様は優しく撫でた。
そう言えば私、お母様にそっくりだったなぁとかどうでもいいことを考えながら手の甲を見ていると後ろから咳払いする声が聞こえた。
「ゴホッん、もうそろそろいいですか?」
神官長だった。
そういえばいたね、忘れてたよ。
「えぇ、ありがとうございます神官長。」
お母様が綺麗なお辞儀をしながらそう答えた。
「いえ、仕事ですからね。当然です。」
そういいながら神官長はポケットから小さな本を取り出した。そしてそれを私の前に差し出した。私は訳も分からないままその本を受け取った。
「では、私の仕事は終わりですね。これにて失礼します。」
そう言って神官長はどこかへ行ってしまった。
私は受け取って本をまじまじと見つめていた。するとそれに気づいたお母様がそっと教えてくれた。
「これは紋章について書かれた本です。後でゆっくり読んでお勉強をしましょうね。」
あぁ、そういう事か。納得しながらも今から勉強だと思うととても気分が下がってしまった。
「では中央の役所へ行きましょう。」
そう言ってお母様は私の手を引きながらさっき通った大きな教会の門をくぐって外に出た。外には馬車が待機しておりさほど歩く事なく馬車に乗る事ができた。
私は馬車で移動している間に次に行く中央の役所で何をするのか聞いておく事にした。
「ねぇ、お母様。次は何をするのですか?」
「そうね、次は中央の役所へ行って貴方の紋章、魔力、そして家の位を登録するわ。」
家の位か、どういうものだろう。
「お母様、家の位とは何でしょうか?」
「そうね、この国でどの位偉いかという事を示すものよ、
王様→大公→公爵→侯爵→辺境伯→伯爵→男爵→騎士→平民→奴隷の順番よ。私たちは伯爵で、上のものには絶対的に従わなくてはならないのよ。」
伯爵か、まぁ、平民や奴隷よりましだがあまり高くはない、
……前世と一緒か、不足は無いが上には行けない中途半端な位置。というか、奴隷か、気になるな。だが奴隷について興味を持つ子供って怖いかな?怖がられたら元も子もない、後で自分で調べよう。
考え込んでいるとお母様が声をかけてきた。
「もう着くわよ。準備してちょうだい。」
なんと!もう着くのか、もっと聞きたい事もあったのに。まぁ、いいさ、また後で聞けばいい。
「さぁ、着いたわよ。」
馬車を降りてみるとさっきの教会とは違って見た目からきらびやかな建物があった。またしても私が気圧されているとまたお母様が手を引いてくれた。ドアマンがいてきらびやかなドアを開けてくれた。中に入ってみるとさらにキラキラとしていた。でも不思議と人は居なかった。建物の前にはそれなりに馬車が止まっていたはずなのに。
するといわゆる執事服というやつを着た男性が来て私たちの前まで来た。
「ようこそ中央役所へ、位と要件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
男性がそう尋ねるとお母様が
「伯爵位で、この子の登録に来ました。」
と、答えた。
「承知しました。お部屋へご案内します。どうぞこちらへ。」
なんと!貴族は部屋で座りながら登録をするのか。さずがだな。
通された部屋は私の部屋と同じ感じの雰囲気の部屋だった。
「こちらでお待ち下さい。」
そう言って男性が部屋を出ると入れ違いでメイド服の女性が紅茶を持って来た。紅茶を飲みながらぼーっとしているとさっきの男性が石版っぽい物を持ってやってきた。
「ではここに手を置いて下さい。」
私は言われ通りに石版の上に手を置いた。すると石版の上に模様が浮かび上がり紋章が勝手に浮かび上がった。しかしふっとすぐに模様が消えてしまった。
「はい、ありがとうございます。」
男性はこう言って石版に何か打ち込みはじめてた。
こんなもんなのか、案外あっさりしていると思ってしまった。
その後お母様が何か言っていたが興味ないので私は窓の外の街を延々と眺めていた。するとお母様が、
「もう行くわよ。」
と、声をかけてくれた。
私は慌てて椅子から立ち上がってお母様と手を繋いだ。
「では、ロビーまで案内します。」
そう言って男性がドアを開けた。
私はお母様に手を引かれながら廊下を歩いていた。そしてロビーに出たその時、私は彼女に出会った。いや、出会ったというより私が一方的に見つけた感じだ。艶やかな黒髪に金の瞳、間違いなく私が画面の向こうで見た“悪役令嬢ルージュ・シーモンド”、その姿だった。私は唖然として立ち止まりそうになったがお母様が手を引いてくれていたお陰で止まらずに済んだ。

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その後、なんとか馬車に乗る事が出きたが、夕食の時も上の空で結局お母様やお父様に心配をかけてしまった。私はそのつぎの日から勉強の予定が組まれていたが延期になってしまった。

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