アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

248 白昼夢のナルシス

「ふあぁあ、外が騒がしい・・・何かあったのかな?」
「おやおや・・・まさかこんな夜中に彷徨ってる者がいるとは」
「ッ!・・・びっくりした。あなたたちは・・・」
「我々はファウスト。そして私の名はシルクと申します」
「ファウスト・・・?」
「ええそうです。私たちはファウスト、神の代理人──ッ!この焦げ臭い魔力、あなたもしや。ククッ、そうですか・・・そレはそれで面白い」
「なにが」
「追いついたぞ盗人め!」
「グハァああ! 己パワーズの傀儡如きが私に傷を!・・・覚えてろ♪」
「え?」
「待てッ!・・・クッ完全に見失った!カルム様ご無事ですか!お体は!?」
「大丈夫・・・だけど」
「流石はハワード家の次期当主様であらせられる。ところでこれからお父様に本件について報告に上がるのですが、よかったらご一緒いただけませんか?」
「父様に?」

 ・ 
 ・
 ・

──パトリックとフランの結婚式より2日後の朝。

「城に賊が入り込んだと・・・」
「それは誠かロミオ?」
「今朝未明のことです。連中は自らファウストと名乗り、聖戦の英雄”探検家レイザーの日記”を盗み逃亡、以前行方はわかっておりません」
「・・・レイザーの日記は宝物庫にあったはず、だが、迅速な対応の結果他の宝は一切手をつけられなかった・・・でいいのだな?」
「はっ。それからファウストの襲来に遭遇しこれを撃退したのがハワード家のカルム様であるとの報告も受けております」
「カルムが? それは信じ難い、ウィリアムやその仲間たちさえ苦戦して取り逃したという難敵を一人で・・・」
「私もにわかには信じられませんが、城の騎士たちが数名現場を目撃していたらしく、彼らを疑うことは私には」
「よいロミオ。お前もまた騎士であるから確信もなしに仲間の忠誠を疑うことは難しかろう。しかし、それは・・・すぐにでも王都に戻った方が良さそうだな」

 国王バルドは客室にて、今日未明に王都の城の宝物庫に侵入者があったという報告を受ける。

「おはようございますウィリアム、アイナ」
「おはようございますアリア様」
「リアムさんは?」
「・・・今日は朝からちょっと出かけてて」
「まあお一人で?」
「ソフィア様、おはようございます」
「おはようございますウィリアム様、アイナ様」
「ウィリアム! 貴様の息子は一体私の可愛い可愛いミリアに何をしでかしたんだ!」
「は? ちょおいいきなりなんだよ!」

 5日滞在する予定だった王族一行の帰りが今日の午前中に繰り上げとなり、朝から城は騒ついていた。一方、今日城に出向かなかったリアムはというと。

「ムム・・・はぁ」

 あれだけの成功を納めて綺麗に事を終わらせることができたのに、なんかスカッとしない、すっきりしない。最高にうまい料理を食べたはずなのに、帰りの車の中で味を思い出そうとするとあれっ? ってなるような、印象並びに余韻が薄い。お腹いっぱい食べ過ぎ? いいや、ちょうど良い満腹感で完璧なる腹持ちであるからそんなことはない。1日空けたからってね、なら今もモヤモヤする理由は何だ?「達成感はなくもないのに、なんか微妙だ」今もそんな感じ。先日の結婚式の後からずーっと一緒、ピークはエリシアとの秘密の演奏会だったかな。いくら周りがめでたい、今日は飲むぞー!って馬鹿騒ぎしようと、1度軽く叫んだだけで熱は大方追憶に冷めてしまったし、雰囲気に呑まれることもなくただただ急患を捌いててずっと冷静で嫌になっちゃう。問題はやはり、追憶か、ならばその日あった不可解を正すことで精算できる。

「ご機嫌斜めですか?」
「そうでもないけど、君がそう言うならそうかもね」

 よくわからないけど、僕って11時から13時、14時くらいまでの時間はあまり好かないのね。だって、ずっとベットの上にいたら日の恵は嫌味以外のなにものでもなくなる・・・まあご飯を一人で食べることが多くなるとか他の理由もありそうなものだがね。
 それよりも、澄んだ朝の空気がまだ残る10時ごろまで、あるいは14時〜夕刻、また、日が落ちてもまだ僅かに青い空が好き。更に雨なんか降ってたらもう最高だな。ちゃっかり伊達眼鏡なんか掛けちゃったりして側には協調性のあるクローバーの様に青い葉を適当に1つだけ摘んで置き、1日中、部屋の照明は消して代わりに窓から入る自然の光か、橙色の光を灯し本を広げてる。橙色といっても電灯で蝋燭の火を明かりにしてるわけじゃないから、完全に闇が降りると寂しさが増してちょっと光が鬱陶しくなるので今日はここまで、然もなくば脳は完全に夜のモードへと移行し次の夜明けまで眠れなくなる。こういう夢想は大好きさ。そして今は昼が憎かったあの頃とは違う。とある山の山頂から、辺り一帯素晴らしい景色を見下ろし深呼吸してみる。太陽が南の空高くにあるというのに、なんとも清々しく瑞々しい空気が肺を占領する・・・気持ちいい、それなのになぜ──。

「じゃあ欲求不満ですね、いやん」
「ねぇ、大自然の雄大さを前にそういうこと言うのは流石に下品だと思わないの? 僕と君の距離感じゃないか」
「・・・失礼しました。私もどうしてこんなこと口走ってしまったのか自分で自分に困惑しています」
「冗談だよ。ちょっとクスリとしなくもなかった」
「どっちですか」
「どっちも。かと言ってやっぱりご機嫌斜めでも欲求不満もない。イデア、ハイド。僕が不満に感じているのは、君たち2人のことについてさ。君らは僕の頭の中が読めるんだから、言いたいことはわかるだろ?」
「えっと・・・」
「・・・」

 常に自分を世界より過小評価していた頃と違って、適宜評価基準を歪ませることで、より人生を楽しめる様になった。ほら、その証拠に皮肉を言われても大抵を冗談にできる友達もできたんだ。君がそうだといえば、僕は違う、これはこういうことだと裏をとる。逆もまた然り、これもまたいつものこと。だけど、今日はこれ以上もうそうはいかない。ほら、ハイドなんてここ一昨日からこの話が始まりそうになると決まって先にダンマリする。だからここまで、具体的には山の天辺まで来たんだ。毎度のことながら安直だけど、雄大な自然に浸ってその感動やら達成感を共有すれば話しやすくなるかなって、話しやすいようにってわざわざこんなところまで足を運んだんだからさ、話してくれよな。

「今日という今日は観念しな。じゃなきゃ僕は頑としてここを動かない。つまり君たちが自分たちのことを話さなければ、僕はここで飢えて朽ち果ててしまうわけだ」
「・・・そんな度胸も根性もないくせに」
「なにを? ほー、だったら我慢比べといこうじゃないか」

 ──2時間後。

「グウウうう、お腹が・・・出掛けが早かったから朝食抜いたんだっけ、昼も食べてないから」
「マスター。とりあえず何か口にしたらどうですか?」
「ふんっ!  敵の助言など・・・僕は君たちが喋るまで食わぬ飲まぬを貫き通す! それがストライキってものだ!」
「・・・無意味極まれり」
「くそっ・・・そう思うのなら、君たちもせめて同じ土俵に立ってくれよ」

 あっ、墓穴掘っちゃった。・・・。ここはコルトのように高い山ではなく、僕の様な子供の足で麓から歩いて3、4時間もあれば頂上に着くような所であるが、山は山である。原因はそれなんです裁判長!今の失言も含めて全てね! 故にしくじった、そういえば今朝はここに足を運ぶために早起きして急いで出てきたから朝食抜いてたんだよな。腹が減ったら休憩がてらおにぎりでも食べればいいと思ってたけど、登るのに夢中になっちゃって気付いたら頂上まで来てた・・・で、達成感と虚しさの紙一重に板挟みとなった2時間前の例の会話に戻る。そしてこの我慢比べ、よくよく考えてみれば実際に苦しむのは僕だけだ。彼らは精神活動体的な存在であり、腹も減らなければ自由に感覚リンクを繋げたり切断できたりするらしいからこの苦しさ、ひもじさはわかるまい。今この土俵に上がって一人相撲してる無意味さが本当に苛立たしく客観的に見れば哀れである。

「君らについて、深く追求しないって決めたばかりなんだ」

 僕は妄想型失調症じゃない。故に彼女は妄想じゃない。なぜなら、彼女のことを僕以外も認識しているから。

「単純なる合算によれば僕の精神年齢は28、もうすぐ30だ。統合失調症が一番発病しやすい年齢」
「だが遺伝的な疾患の裏付けはないだろ? 昔も今も」
「じゃあやっぱり、僕は悪魔付きなのかな?」
「俺が悪魔か・・・?」
「・・・」
「冗談。僕の脳は21世紀グレードだよ?単なるジョークさ」
「笑えないな」
「ハハッ、僕は笑えるけどね・・・君たちは僕の妄想じゃない」
「はい、それは」
「そうだな」
「だよね。けど今となってはもう割り切れないってか、信じられないんだよ。どこの誰が開発して管理してるのか、リソースもわからない、信頼性も望めないステータスとかいう情報だけを根拠(アテ)にするのももううんざりだ。今まで疑問に思いながらあまり話題にしてもこなかった自分が悪いのかもしれないけど、これでも一定の注意を払って君たちには、特に付き合いの長いイデアには特に配慮してきたつもりだった」
「なら、そのバランスを崩したのは俺か?」
「そうは言ってない。今まで微妙な距離でバランスを保っていたから、この問題は崩れるべくして崩れた。誰がとか、誰のせいがとかない。三つの心が介在しようと僕らが同位体にある事実は変わらない。だからもし誰かが悪いとすれば、みんなが悪い」

 この問題は絶妙とか、臭いものとかじゃなくていろんな意味で微妙なんだよね。そして問題が微妙な原因は明らかに、同じ体に独立した精神が3つも存在する複雑な関係にあり、こんな酷い問題を今までぼんやりとなるようになれで直視してこなかったこと、尤も、肉体的に素体となっている僕だけは他の2人からして思考は裸も同然らしいけど、でもだからこそ僕には知る権利があるよね・・・君たちを一人、一人の友人として見たい。冷たくあしらい排除したくないし、ちゃんと互いの立場と言うものを確認したい。君たちはもう僕の家族も同然だ。

「イデアは精霊だった。それは間違いない」
「そうですね」
「じゃあハイドは、ドラゴンだっけ?」
「俺は・・・そうだ」
「はい、出揃いました。精霊とドラゴン。うーんたしかにファンタジーの王道の存在同士ではあるけれども、実に摩訶不思議な組み合わせ。じゃあどうして君たちは僕の中、あるいは僕と一緒にいるわけさ。僕は君たちをどう認識するべきなのか、君たちが僕に何か隠してることは? これからもずっと一緒にいるのなら、絆が壊れる前に話してほしい。こういう言葉はあまり好きじゃないけど、僕らは多分運命共同体なんだろ?」
「運命共同体か」
「その表現は間違いではありません。それに今まで私たちに疑念を持ちながらも無闇に追求をせず静観していただいていたことには感謝しています。しかし」
「しかし?」
「私自身、自分が精霊であることを思い出したのはつい最近のことなんです。それに」
「仮にお前との絆を失うほどの秘密が俺らにあったとして、後で話すのも今話すのも解決の過程(タイミング)に差が生じるだけで結果はほぼ同じになるだろ? ならむしろ今話さないで墓まで持って行ったほうが利口だろ」

 どうして、僕たちは今こんな話をしてるんだろうか。僕は我が身が可愛いから自分を守りたい・・・が、同じくらい君たちも守りたい。だから自分の身を危険に晒すような秘密あれば話して欲しかっただけなのに、君たちのことをもっと知りたいと思ってるだけのはずなのに、その実容疑者を取り調べる警察のように彼らの罪を疑っているようにしか聞こえない。話がジレンマ染みてきたと言うか、この問題の厄介さが顔を出したと言うべきか。

「この話の本質は利口とか、利口じゃないかってことではなくて、君が秘密を墓まで持っていくとして苦しくないか、また秘密にすることによって余計な傷を負う可能性が出てくるんじゃないかっていう謂わばそれを避けるための一環だ。だから第一に関係の崩壊を心配する必要はない。僕の親しい何かを傷つけてない限りは、今回はほとんどの事に目を瞑るつもりだよ・・・例え君たちの仮面の下の正体が死の天使でも、血塗れの悪魔でもね」

 親しい何かが具体的には何なのかと言えば、例えば前世の僕の家族とか、今の家族に友人たちだ。余程のことがない限り、僕は害されても良い、しかしこういう時、ついつい予防線を張っちゃうのが僕の悪い癖なんだけどそれはお互い様だよね。友情があるからこそ、無闇に相手を傷つけないようしてる努力の裏返しだ。
 だが今、言ってしまえば傷は軽くて済む。ただししゃべらなければ墓に入るまで君は嘘に苦しむことになり、然もなくば罪の重さに耐えられずバッドタイミングで告白してしまうか、自害してしまうか、最悪なルートを辿る可能性もある。意地悪な言い方だけど選択肢はあげてるつもりなんだよ?でもまさか、友情やらは所詮崩壊を目前にすれば呆気なく終わる空想であり、愛より下級なものであり、時に崩壊せずどちらか一方を失えば現実より乖離し他の記憶と同じように美化されて──、白昼夢のようないっときの希薄な関係に過ぎないのだと言うのならば、もうやるせないよ。絆を散々馬鹿にしてきた僕が同上の名目を掲げて、期待に譲歩する時がくるなんて前世の頃からすれば考えもしなかったことだ。要求することが従来の僕なら妥当だろうにな、呈示するだけに留まるとは。

「これはブレインストーミングの応用だ。抑圧された感情からアイデアを解放するには、その恐怖誰かに受け入れてもらって共有するか、克服するかしかない。そして今回の場合アイデアは秘事に代替される。さあ、舞台は整えた。君たちは一体どういう構造で僕の中にいる?精神的な乖離性の人格として脳に寄生してるのか、それとも魂そのものが僕の中に混じってるのか」

 寄生状態として僕は後者に近いのだろうと予測している。なぜなら彼らの名前が僕のステータスのスキル欄にあるからだ。対等ならば彼らも別にステータスを持っていてもおかしくないのに、僕のステータスに《魔力契約:エリシア》の様な契約項目や、称号があってもいいのにそれはなく、君らはあくまでもスキルであって存在としての定義がとても曖昧である。《トランス》(進化前)からの《リバーシブル》(進化後)にしたってそうだ。僕は君らに取り憑かれているのか、それとももう、取り憑かれるを通り越して君らは僕の一部なのか。

「もちろん!マスターの大切な人や・・・親しい人を」
「・・・」
「どうしたの?」
「いえ、その・・・なんでもありません」
「いや、なんでもないことはない。そこでだリアム、ひとつ聞きたい。仮にお前の大切な人が俺たちがお前の中に存在することやその過程によって傷ついていて、しかしやはりそうなったのにはやむを得ない理由があったのならお前はそれを許すか、それとも罰するか」
「罰するだろうね。迷う余地なし」
「そうか」
「そうさ、罰するとも。そして相手が罰に順じ償えば、いつの日かは許す・・・と思う。じゃあ君たちは僕に罰せられることが怖いのかな?」

 はは、随分と具体的な例え話だね。ああそうさ、僕は当然罰するとも。それで所詮は綺麗事か、いいやそれは違う。被害者による審判は酷いことに復讐と同義であろうが、今回の場合それならそれでいいと思う。復讐を果たしたとして自己中心的だと言われようが、いつの日かまた君たちと仲良くできる可能性が僅かにでも残るのなら。
 さて、ここからはさっきの1日のどの時間が好きか嫌いか、またどう好きか嫌いかの話の続き。本を閉じなきゃいけないからって、夜は夜で大好きだ。何より、見たくないものが闇に紛れるのがいい。現実、動態、喧騒、活気。どれをとってもパーフェクト。たまに車道を走る車の音にワクワクする。頭の中では 緊張感溢れる ホラーやミステリー系の音 楽が流れたりしてね。昼はあんなに鬱陶しいくせに。

「僕はこの世界が好きなんだ!ああ間違えた、言い直さなきゃ。僕は、この世界の綺麗なところだけが好きなんだ。 aa、今の僕はなんて醜いんだ・・・最悪だ」
「突然どうしたんだ?」
「マスターは醜くなどありませんよ。ただ、優しすぎるだけで」
「なんてね」
「ふざけるなよ、今はそんな雰囲気じゃないだろ」
「地球の神話にはね、ナルキッソスってやつがいて、他人を愛することができなくていろんなものを傷つけてね。その罰として神ネメシスに皮肉られ罠に嵌められた彼は水面に映る自分に恋をして、やがて周りが見えなくなって痩せ細り、溺れて死んだ。こんな哀れな末路を辿ったせいかナルシシズムの語源にもなってる」
「リアム」
「神話でありながら寓話らしい側面を持ってるわけ、特にナルシシズムは協調を謳う風潮が強めだった日本では肩身狭めだったけど、でもやっぱり自己愛だったり自己肯定ってのは足りないところを埋めなきゃっていう強迫的な自己脆弱さの嫌悪と対を為す成長の素因だと思うんだよね」
「おい、いい加減に」
「だから正直わかんない。彼に常識からして悪い部分があったとすれば、彼に恋した人に思いやりを持てなかったことで、でもだからどうしたとも思う。彼を愛するなら、そんな彼の性格まで愛してやればいいのに侮辱さえも愛するか然もなくば諦めるか」
「リアム!」
「なんだよ! お願いだから待ってくれ! 黙って聞いて流してくれ!・・・僕は、命を拾ったっていう自覚が足りなすぎると思うんだ。そんな僕が真実から逃げようとする君たちに見たものは何か、苛立ちと、そして同情だ。苛立ちは言わずもがな、だが今回はこれでもだいぶ抑えてるつもりなんだ。僕は柔軟なエゴイストだからさ、時にナルシシズムを大事に今も何とか苛立ちを抑えようと努力してる。傲慢にも、同情する。ごめんね、偉そうで・・・でも、命を拾った自覚が足りなすぎる一方で自分だけじゃなくて誰かに愛されたいって思う欲求は人一倍強くなった。なんて自分本位な奴なんだと、ほとほと嫌になる・・・最低だ、最悪だ、闇に陥る一歩手前でギリギリ持ち堪えている・・・なら、お前が落ちるのを私が手伝おう」
「マスター?」
「ハッハッハハハッ!──はぁ」
「おい、リアム?」
「嫌いだ!!! この世界が私にしてきたことを見ろ!全てだ! しかし君は愛してるよリアム!」
「本当にお前どうしたんッ!?イデアどうなってる! リアムの様子が可笑しい・・・クク、ナははははは俺に逆らう奴ら全員皆殺しだ!」
「ハイド!?・・・これはまさか──!・・・マスターの心があるべき場所にない!ハイドの深層心理の中に引き摺り込まれた! だけど引きずり込んだのはハイドじゃない・・・ダメです今の私じゃ強固に閉じられたハイドの壁に干渉できない!」
 
 イデアは焦る。リアムとハイドが側からいなくなって、突然一人ぼっちになってしまった。いったいなぜ、どうしてまだハイドにあの方が干渉できるのか・・・わからない。


「何よりも得体の知れないものへの恐怖。害を与えるもの。それに恐怖を抱くのは当然のこと」

「我慢ならない」


「お前は、優しいだけだ」


「知識はあるけど教養はない」

「召喚に成功したぞ!」
「神様から事情は聞いてる。あなたが巫女?」
「はい、私が巫女の・・・」

「お前は私の一部であって一部ではない。偽りの世界に生きるお前でもわかるように言うとダークサイドか、しかし乖離した存在ではなく、かと言ってお前とはわずかにずれた存在・・・いわゆる真実」

「量子力学? それとも哲学の話?」

「健康な自己愛の発達不全、信頼感の欠如」

「どうしてそんな嘘を・・・!」

「ベル、神も矛盾したことを言える。だからヴェリタスは危うい。ナイフが自分を突き刺すんだ」

「なら、私が望むのは再会。世界を救った代わりに、いつの日かもう一度会いたい。約束した、だからきっと彼も約束を覚えてくれてると信じてる」

「次を望まねば、連れてはこれぬ。それでもよいなら」

「ふざけるな! じゃあ今までお前は僕と世界を騙してたのか!!!」

「頼む、希望はもうお前だけなんだ」

「僕は僕だ! それを認めずして何が真実か!」
「私は真実、お前は嘘つき。お前→私、私が認めず貴様が認めるものは偽!!!」

「お前が愛してくれて、俺たちは幸せ者だな・・・」

「やめてくれぇええええ!──ア!」
「さようならだリアム」

「イデア! ハイド!・・・お願いだ君たちまでいなくならないでくれ!」

「ありがとうリアム、私たちのために泣いてくれるなんて」

 なんだこれ、僕は今、めまぐるしく全てが混ざる渦の中にいる。過去から──。

「未来であるか、だが未来とは決して定まらぬし過去の改変も不可能ではない。時間とは真理を軽んじた実に憎い現象だ」

 そう、過去から未来までの僕とあともう一人誰かの・・・これは記憶だ。

 ──ダンッ!
「イッタァ! ・・・クゥ! 響く!足から頭頂まデ──フレスパイラル!ッンー!」

 一瞬にして連続、景色が大いなる力によって吸い取られ新しく作り替えられていくのを早送りに凝縮したような音だった。・・・訂正、不明な轟音とともに僕は謎の・・・いや、見覚えのある空間に放り出された。で、着地の瞬間足からアプローチできたのは良いものの、膝を曲げてクションにしたりとか綺麗には着地できるはずもなく、裏の平から見事に痛みが頭頂までを貫いてさ、別のこと考えてないと地面をのたうちまわることになりそうだ。それからいったいさっきのはなんだったのか、 たしか僕はイデアとハイドと登山に行って心の中を晒す、暴く、洗うセラピーもどきを開いていたはずだったんだけど、ここは、前世に僕の住んでいた街にあった文化ホールの建物の外だ。図書館や美術館も併設されており、中央広場にある噴水は夜にはライトアップされて美しく彩られる。

”こっちだ”
「あっちか」

 頭の中に怪しげな声が響くか聞こえるか、どちらにしても反発する気は起きない。まるで記憶を読む様に無意識に語りかけられている感覚だ。そんなことを考えるのも、馬鹿馬鹿しい。

”真理を重んじるが故に真実をねじ曲げる? 不完全な、嘆かわしい。我ならこの憎き存在も含め全てを消し去れる。我こそが真理”
「・・・」

 そして、僕が辿り着いたのは建物の中──。

「ナオトこっちこっち」
「母さん」
「遅刻だぞナオト、今日はお前が待ちに待った日だ」
「父さん」
「ほらほら座ってリアム」
「・・・母さん」
「今日はお前が待ちに待った日だ」
「父さん」

 そこにはみんながいた。前世の父さん母さん、現世(アナザーワールド)の父さん母さん、それに周りには見覚えのある顔ばかりが楽しそうに席についてパンフレットらしきものを広げたり、何かの開演を楽しみに待っている。みんながいる。そっか、そういえば今日は待ちに待った楽団と神様のピアノ協奏曲を聞きに来たんだっけ。けど──。

「あれ? 誰か足りないな」

 たしかに、僕の知る限りの人たちが席についていたはずだった。それなのに、誰か、それも複数足りない。それもみんなとても大事な人のような、厳密には3人か・・・だがそこまでわかるのに誰が足りないのか思い出せない。病院のお医者さんや看護師さん、数えられるほどしか会ってないから面識の薄い前世の学校の先生までいるのに、一体誰が足りない?
──わからない。
 そうして僕が頭を悩ませていると、会場中がワッと拍手が包み込む。今日の役者たちがステージへと入場してきたのだ。しかし、またもや僕は入場してきたオケを確認した後、指揮者同様後から入場してきた主役の姿に首を傾げることとなる。

「・・・」

 ピアニストは文字通り白く光り輝いてるというか、白そのもの、謎の光の未確認体か・・・かなり珍しいスタイルだ。だとすると、後ろに控えているオケや指揮者と普通の格好の人たちが間違ってるのか、──いや、どっちが正しいとか、間違いだとかはきっとないんだ。

『管楽器の息吹が厳格にはじまりを告げる。そしてピアノの美しくも強い旋律に震え、優雅なバイオリンとの調和がなんとも言えない』

 僕の疑問が見事に晴れると同時に拍手が鳴り止むとついに待ちに待った瞬間がやってくる。この曲は・・・。

「そういえば 、鈴華・・・が好きな曲はなんなの?」
「へっ?」

 あっ、一人誰が足りなかったのかがわかった。でもそっか、そうだよな、彼女がここにいるはずもない。日登 鈴華は、・・・もう死んだ。

「僕はラフマニノフ弾いて見せたし、メヌエットも一緒に弾いたけどできればもっと語れればなって・・・」
「・・・そうね。うん、同じ協奏曲ってなるとチャイコフスキーのバイオリン協奏曲かな」
「作品35のニ長調?」
「そう!あの曲を聴くとこう、私生きてるーッッッて生命力に溢れるっていうか!途中弓で弦をひっかく様な荒々しい面もあれば、全体的には風の様に軽快なボーイングが求められるからすごくアクティブなんだけど、その実は旋律の紡ぐ音の構成はもっのすっごく感慨深くて!特にこの曲一番の見せ場ではオケのバイオリン奏者の総力戦、もうギャップの波が涙腺を刺激するオンパレード!後、途中フルートに主旋律を譲る場面!そこからのまたバイオリンへの移行があまりにもスムーズで、とにかく、バイオリンが主役だっていやってほどわかる曲なのに弦楽器はじめ参加してる全部の楽器と調和するのがもう!・・・もうね!はぁ・・・この曲でコンマスができたら、ものすごく緊張するだろうけど気持ちいだろうなー」
「チャイコフスキーか・・・ならピアノ協奏曲の第1番第1楽章は知ってる?」
「ふっふーん!もちろん知ってるけど、でも一番はバイオリン協奏曲よね?」
「なにを〜! ・・・って言って勝負したいところなんだけど、強く反論はできないのがイタい。ピアノ協奏曲は本当ラフマニノフと一緒できっとピアノを弾いてるだけでオケの音がイメージできるくらいインパクトがあっていつかは絶対に手をつけたい曲だ。けど本音をいうとバイオリン協奏曲もピアノ協奏曲に負けないくらい好きって言うか、チャイコフスキーは本当に両方とも」
「ヤバい・・・実は私もどっちも好き」
「・・・」
「ちょっと何か言ってよ!一人だけいい顔してズルい!」
「・・・やっぱり僕たち気が合うのかもしれない」
「そうね、やっぱりそうよ!」

 この2曲に共通するのはオケの見せ場でおしげもなく楽器を贅沢に使うところだろうね。本当に、おしげもないって言葉がぴったりなくらいに集団の息吹を感じるし、この曲を耳で、目で、肌で、温度で楽しめる贅沢さは異常だ。・・・変ロ短調op.23、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番第一楽章か──あの時はまだ、時間が足りなくて弾けなかった曲。

『・・・けど、一人なのにどうしてオーケストラが』

 オケも周りの観客も皆次々と消えてしまったのに、奏者の残ってるピアノの音ならまだしも他の楽器の音は一体どこから聞こえてきているのだろうと首を傾げずにはいられない。だって明らかに、僕の見てる方からしてステージの上から音が聞こえてるってのに、楽器ごとオケは消えてしまったのだから。

「・・・」
「・・・」
「・・・ふぅ。どうだった。我の演奏は」
「素晴らしかったと思いますけど」
「そうか。お前もステージに立つか?」
「・・・いえ、遠慮しておきます」
「そうか、なるほど。人であるお前が我以上に素晴らしい音楽を奏でられるはずもない。恥をかかせる様な真似をした」

 未確認体が鍵盤の蓋を閉じる。なんかメッチャムカつくんですけど。恥をかかせる様な真似をした、からの〜「すまない」やせめて「許せ」くらい言ってもいいだろ。あなたの演奏はたしかに素晴らしかったけど、言うて温かみがないというか、この曲にしては淡々と虚無的だったというか。

「それはそうだ。ここは偽りに満ちた世界なのだから」
『心を読まれた!?』

 世界が一気に暗転する。ただし唯一色を変えなかった未確認体の輪郭がよりはっきりとした。まるで世界と隔絶している様に。

『さっきから目まぐるしいな・・・曲の感想を尋ねてきたんだから、もう少し浸らせてくれてもよかったんじゃないの?』
「それから、我が誰かに許しを乞うなど決してあり得ぬことだ」 

 うわぁ今度は無視ですか。これは・・・めんどくさい。この光の未確認体、ナルキッソス以上に傲慢でナルシ・ナルシシズムしてる。いくら周りが真っ暗で自分だけ真っ白だからって、そんなにくっきりと世界から独立しちゃってさ、本当何様って。

「さて。ナオトよ」

 ッ!? どうしてこいつ僕の名前を!それも前世のッ!・・・でもここはそもそも僕の前世にあったコンサートホールだ。あれ、どうして母さんと父さんが? って何でアナザーワールドの父さんや母さんやみんながここにいたんだ!? どっちがいることが正しいんだ!いや、そもそも僕が今ここにいること自体おかしくないか!?・・・何でそのことを演奏が終わるまで今の今までちっとも疑問に思わなかった?というかみんなはどこに消えたんだ!?!?

「・・・」
「我の前で沈黙を選ぶとは良い心掛けだ。動揺しながらも現実には産み落とさなんだ。流石は我が使徒なり」
「使徒?」
「・・・まあいい、許そう。人間が一々コミュニケーションなる概念のもと伝達という手法を用いなければ他者を理解できぬ愚鈍な生き物ということは既に知っている」
「そりゃあ、どうも」
「・・・」

 ホンッッット気に触るな。それも皮肉らせてもらうと一々──。

「痴れ者が! 我が神託を述べているのだから黙々と! 傾聴!せよ! あろうことか私語を唱えるなど恥と知れ!」

 急にキレたんですけど!?・・・最近自分の精神状態で悩んでる僕が言うのもなんだが、この未確認体絶対にヤバイ奴。関わり合いにならない方がいいタイプだ。

「あのっ・・・申し訳ないんですけど、用がないなら僕はそろそろお暇をさせていただいて」
「誰が傲慢で、偏屈で、堅物で、偏見強そうで、へそ曲がりで、罪と罰で、逆行的で、暴君で」

 あっ、やっぱり今のも聞こえてらしたんですかぁ。そうそうその調子だ・・・ならついでにあの言葉も言っちゃおうよ!

「そして──Supercalifragilisticexpialidocious だ!!!」
『Um diddle diddle um diddle ay。はい、よくできました』

 子供から大人にまで愛される名作メリー・ポピンズより魔法の言葉を唱えさせてもらいました。とても長過ぎる言葉だけど、どんな時にも忘れないでどうぞ!ユーモアに溢れた本当に素晴らしい、素晴らしさそのもののを表す言葉だ。だから僕は現実を単に避けたわけじゃない、うん、そうだとも。これはきっと夢だ。夢だと自覚できるほどはっきりとした明晰夢。

「お前はこれまでに我が出会った他次元の生命と随分と違うな。シエルともベルとも、それから──」
「ここにいたかリア──ッ!!?」
「ククッ。アンバーとも」
「お前ヴェリタスかッッッ!?」

 シエル? ベルは知ってるけどシエルって・・・なんか聞いたことある様な・・・フランス語か何かで空とかって意味だったっけ?いや感嘆詞でもあったような・・・まあわからないことをグダグダいつまで考えていても仕方ない。そもそもこんなやつの言うことを真に受けて分析するのも事だ。会話だけ覚えておいて必要になった時に分析すればいい。あんな長ったらしく自分の音楽を強制したこいつ、普通僕は大抵の音楽演奏者並びに愛好家には敬意を払うけれども、どうもこいつにはそういった態度を取る気にはなれない・・・ヴェリタス!?それにアンバーって?

「ヴェリタス・・・それって」
「我が使徒よ、いや、元か。だがイドラが偽を操り世界を欺くが如く、我も偶には戯曲を書いてもよかろう。お前ほどの力ならば、また我が受け入れてやらんこともないぞ?」
「フザケルナ・・・ダレガお前みたいなイかれ野郎に。残りカスが、もう貴様の神気が俺に介入できることは今後一切あり得ない」

 人間の形態をとっていると言うのに、怪物らしくハイドの口から蒸気が漏れ始める。今にもその口から、怒りのブレスが弾け飛び出しそうだ。

「ならば大人しくしていろ。我に屈辱を与え続ける世界に対する裁定計画について、新しき使徒候補と歓談中だ。有意義にな、ふん、我ながらいい洒落を言った。兎にも角にもお前は然るべき世界の運命を定めるゲームからもう脱落したのだ。しゃしゃり出てくるな」
「俺がゲームに負けた、即ちお前の敗北だろ」
「笑止! 我はプレイヤーであり貴様は駒に過ぎない!ツークツワンク、 次にどの駒を取ろうと次に次に貴様らの状況が悪化するばかりだというのに我が負ける道理がどこにある! 貴様らはもう悪手を打つことしかできずに、またこの流れは連鎖(ループ)する。骨折り損の無駄駒の集まりである貴様らに、勝利のスパイラルを得た我が負ける道理はなし!そして来たるべきその日、我はついに連鎖を終わらせるべくチェックを唱えキングをとり勝利する!」

 ヴェリタスと呼ばれた未確認体がスパイラルによって裏付けされる勝利をここに宣言した。だがそもそもいつ奴は宣戦布告したんだか、しかしその宣告に対しハイドのとった行動は意外にも冷静だった。

「ククッ」
「何がおかしい、アンバー!」
「・・・支離滅裂だな」
「なんだと・・!」
「パレート最適。現時点において、俺とリアムの相性は考えうるに最高だ。状況が悪化する原因(コト)があるとすれば、どちらかがどちらかを捨てることを望んだ場合の話。だが、もし俺たちが互いに互いをずっと尊重しあえれば──」

 尊重しあえれば? どうなるっていうんだい、僕もその先を是非聞きたいな。チェスには犠牲しかない。とるか取られるか、君は僕をどうしたい・・・なるほど、このイカサマ野郎め──だが、嫌いじゃない。

「・・・貴様、何を言う気だ」
「お前みたいな一人ぼっちのキングにはわかるまい」
「ヤメロ。・・・ヤメロ!死兵がまだ生きる駒を奪うなど、絶対にアリエない!!!」
「クハハ、貴様のクラウンは紙の様に薄っぺらい、あ、ここ笑うところな」
「ヤメロと言っている!!!」
「クック・・・」
「ヤメロォおおおお!!!」

 ハイドは静かに笑いながら、僕に手を差し伸べる。そして僕がその手を取ると、深呼吸するように深く息を吸い、まるで息を深くなど吸っていなかったかの様に、おかまいなしに、とても悪い顔をして、悪態を確信に添えるが如く先に続く言葉を口にする。

「最強」
「貴様ァあああ!!!」
「ハイド、あいつって・・・」
「──王手だ。じゃあな、ヴェリタス」

 言葉の続きを口にして、最後まで言い切ったハイドに激昂する未確認体。ハイドは初めからあの未確認体と別のステージにて戦っていた。滑稽に吠える未確認体を審査席から見下ろし、ようやく小物と評価された自分の立場を奴が理解し、怒り、狂い、こちらへと猛スピードで近づくアレなど空気中に漂う埃か塵であるかのように認知だけしながら佇む。そして奴の歯牙にかかる寸前で見えぬ自分の影に飛び込む様に足を浮かすと僕ごと同空間から消える。

「アンヴァあああぁああ!!!」

 とてつもない怒りの咆哮が虚無に広がる、──が、時は巻き戻って数秒前。

「貴様ァあああ!!!」
「ハイド、あいつって・・・」

 あの場から離脱した今となっては、怒り狂う奴には”最強”までが質問に対する解答だったのかもしれない・・・だけど、答えには続きがあった。あれはハイドが王手を宣言する束の間のこと、魂で繋がる君と僕だからこそ聞こえたんだと思う。

 ”俺たちが組めば異論を唱える隙さえも与えない、論破の余地なくたしかに生物最強だ。もちろん俺はもう覚悟した、お前が俺を受け入れた様に俺もお前を受け入れる。しかしもし、元世界の調律者としての義務感に揺れるあいつまでもが狭間から抜け出し真にこちら側の和となれば、最早それは──”

 ・・・それは、ハイドの出したその先の答えを僕だけが知っている。

「──王手だ。じゃあなヴェリタス」

 結局、ハイドの深層から抜け出した今となっては”あいつ”が誰のことを指していたのかは聞けず仕舞いだが、まあ大体予想はついたよ。しかし薄れゆく意識の中で出した返事で良いのなら、僕の予想が当たっているとするならば、君の言った通りたしかにそれは──”無敵”だと。

「・・・夢を見た」

 次に起きた時、僕は自室のベットの上にいて目視して確認する必要もなくびっしょりと汗をかいている。

「・・・夢?夢ってどんな夢だっけ?」

 たしかに、夢を見た。そしてその内容不明の夢を見る前にはハイドやイデアと話すために近くの登山に手頃な山へと出かけていたはずなのに、目覚めると其処は僕の部屋のベットの上、夜の帳も降りた真夜中のことである。

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