アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

232 クロユリ色の世界

 彼女は一人が溶けるとまた一人、どこからともなく流れ着いた人形を膝に乗せて慰める。

「・・・」
「ショックか?」
「・・・まあね。ああ、ショックだ」

 ああ、今君が僕にしてくれた話はかなりショッキングな話だった。まさか君がそんな業を背負った罪の化身だったとはね。正直な所、そんな君がこれから先もずっと同居するという意味を考えると遠慮願いたいし、同時にとても面倒臭く感じるよ。近くて遠い、遠くて近い、赤い水たまりに遮られた今の状況にぴったりだ。 

「僕は誰かから物を教わるのが嫌いだ」
「いきなりなんだ? どうした?」

 でもやっぱり、ほっとけないとも思ってしまうんだよな。酷いもんだな、今の僕も、昔の僕も。

「興味のあることは昔から自分で調べた。何故って僕は学校にはほとんど行ってなかったからね、理由は君も知ってるだろ?」
「全部は見れていない。だが、ザッとは見た」

 水辺だし、湿ったような黒い土なのだが手触りは不思議とサラッとしていて尻は濡れていない・・・時間を圧縮して観れても、全部を見るには相応の集中力がいる。意識を共有し記憶を覗く。それこそ、その時感じた痛みや感情を漏らさずトレースするにはかなり集中して見る必要があるって、ましてや完璧な体験をするのであれば、圧縮せずに同等の時間を費やさなければならないのだとか、いつの日だったか彼女が声を発して喋れる様になってから数日、共有プロセスにつきイデアが偉そうに熱弁してたのをこの黒い土を弄りながら視界の端に映るハイドを見て思い出す。ちょっとニヤリ目が細まって口角が上がったのはご愛嬌だ。

「周りに普通やその体験ってやつを教えてくれる人が極少だった。だから基本は自分で学び、そしてわからないところだけソッと聞いた。だけどやっぱり周りからも教えてもらえないというか、教えられないってこともあってね・・・特に・・・そうだな・・・」

 本から情報を受け取るのは好きだけど、価値観を押し付けられるのは嫌いだ。ただしその価値観が共感できるものならば、僕の興味を刺激するものならば好きなんだな。
 ・・・でもやっぱり、それ以外は一括りに嫌いだ。
 ま、大抵は食わず嫌いでって、自然と自分の興味のある分野へと足を踏み入れているくせに、それに気付かずにつっぱねてたってこともある。
 要するに、天邪鬼が過ぎるんだ。
 先入観が凝り固まりすぎて、時にはタイトルだけで敬遠してしまう。1ページ目に目を通す時間も惜しい。それくらいに人生は限られていると若くして悲観していたとも言えるんだけど・・・、後は・・・、価値観とロジックをぶつけ合って議論する哲学本は好きだが、自己啓発本は総じて嫌いかな。前世では僕は逆子で生まれたらしい、から、この天邪鬼っぷりと来たら天性の肝煎で生粋なのだ。

「そう、例えば性知識。これは教えてくれる人は誰もいなかった。これはまだ幼少の頃に浮かべる夢のようなお伽話から連想される疑問でもない。この疑問をちゃんと疑問として抱いた時は幼稚園生や小学生よりは未熟じゃなかったし、デリケートな時期でもあった。かといって参考書に載っている内容から未知ながら大人たちがこれを隠したい理由があるのだとなんとなく察してもいたから、父さんや母さんに聞くのもなんとなく・・・ね・・・『赤ちゃんってどうやって生まれるの?』って知的好奇心だけで尋ねるには今更過ぎたんだ」
「・・・」

 僕が盲目した心の目で過去に乾いた欲求を満たす術を探すのに苦悩したことを話すと、ハイドの人形を撫でる手が止まり、こちらへと僅かに頭が傾く・・・食いついた。

「なにか言いたいことでも?」
「お前にそんなデリケートな話を面と向かって話せる一面もあったのかと・・・ほら、生殖の話題は少なくとも人間の常識ではそうなんだろ?」
「この手の話は聞くにしても、話すにしてもとてもタイミングを図るのが難しいからね。だから誰でも彼でもに話すわけじゃない。真面目な話、セクハラ野郎にはなりたくないし、幼稚園生に向かって『赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんじゃないんだよ』なんていう無粋な人間にもなりたくない。だけど僕は短時間ながら、君がこの手の話をちゃんと理解できる格があると判断した。というか、そうじゃないと困る」

 ニコニコと、僕は今、欲とは極力切り離した場所に立つ努力をする。これは今も言った通り実に真面目な話だ。また、仮に彼女がこの実直な話を愚直に捉えることしかできない存在なのならば、今後の付き合いに溝ができること請け合いである。

「でだ、そんな僕はどんな人間だったか。人間不信だったり、孤独な時間が好きで好きでたまらない。短くも一時期はある子のおかげでちょっと安定したり、けどリバウンドしたり、それでも常に不安定な僕のことを父さんと母さんは理解してくれていたし、そのことも頭では理解していたのに、周囲へのイライラに歯止めが効かない乱暴な時期ってのがあった・・・」

 本質的には、一旦答えが出た問題についてずっと議論しているのが好きなんだ。価値観を押し付けられるのは嫌いだが、自分からは共有したくて、変わることを望んでいるのに、一方で変わらないことが好きなんだ。もちろん、その時の議論に参加していたのは、僕ただ一人。

「今でこそ、無邪気を演じようとしているが、体がだんだん大人に近づくにつれてそれも辛くなってきてる。もしかしたら健康な体を手に入れたように、コレが昔の僕がなりたかった潜在的なものかと思ったけど、最終的に僕は自分の正体をバラすことを決断した。それから思うに、確かに今の僕は僕だけど、昔の僕も僕なんだと両方捨てるにはあまりにも自分自身すぎる」
「大根以下と言っていいほど、演じきれてはいないがな」
「まったくその通り。これは処世術とは違うけど、僕が周りから学んだ、数少ないコミュニティの中で自分の位置を確かめるための価値ある結晶だ。加えて今は、君たちがいるしね」

 今の僕は昔の本質を完璧に受け継ぎきれていない。社会は地球も、こっちの世界でも多次元的に複雑である。こっちの世界ではアウストラリアという国のノーフォーク公領に住んでいて、ウィルとアイナの息子、姉妹には姉にカリナがいて、妹のようなティナがいる。一方で、過去の世界にも父さんと母さんがいて、まだ小学校にあがらないくらいの歳の離れた妹がいた。日本という国に住んでいて、僕はそこで一回死んだ。
 これだけツラツラと、過去と現在の自分の身近であり身近だった要素を並べておいて、環境が、生活が、家族に、人間関係に恵まれていたかどうかなんて比べるつもりはないんだ。だけど、これだけはどうしても比較してしまう。過去の世界での僕の体は、強すぎるといってもいい今の体と比べて、とても弱かった。
 ・・・こういうことを言うのも、自分を偽善者と貶める価値観の強要も嫌いだ。だけど、そうやってると、やっぱりそれを嫌いと思っている自分も嫌いになるわけで・・・嫌い嫌いのループに嵌って、最終的にはどうでもいいやって結論に落ち着くのが僕なんだよな〜・・・昔の僕は、そうだったんだよ。

「だから押し付けがましいのも好かない・・・だけど、あえて君にこう尋ねることにするよ・・・僕の言いたいこと、わかってくれるかな?」
「それこそ、悠久を約束されていた俺だと考えもしなかっただろう。昔の俺と、今の俺か・・・似ているようで、全く違う世界に生きる別の生き物ってことか?」 
「・・・そ。それこそが時間の流れと環境の変化が生んだ影のウイルス。ウイルスってものの進化は不安定で著しく且つ危険なものであり、まさに異世界で一つの人生を終えた僕は、この世界では君とおなじような存在で危ういよ。今でもしばしば、前の世界とこの世界の自分の存在について考えさせられる」

 今の僕は昔以上に危うく不安定である。それは肉体ではなく、心の問題。このままだと、僕はまた同じことを繰り返してしまいそうだ・・・それも今度はハンデなんて言い訳も効かない。
 この問題を客観的に分析するために、さっき挙げた今のループってやつを仮にループαとしよう。で、そんなαを繰り返していると、なんの前触れもなく、閃きの様にある日気付くんだ。僕は誰かからそういった目で見られるのが怖くて、こんなことを考えてしまっていたんだとね。だけど数日か、あるいは数週間もすれば僕はその気づきを見事に忘れちゃって、また自己嫌悪のαを繰り返す。
 そんなプロセスループA(n = A ∋ α)に陥ってることを自覚しながら、抜け出せないんだから救いようがない。このループから抜け出すには、自分の決断と行動が不可欠である。だから前の僕は諦めて、これは死ぬまで治らないんだろうなと思ってたら、前世(ナオト)では本当にそうなっちゃった。でも、自分で言うのもなんだけれど、時間が解決してくれるとそんな楽観的な考えに着地した僕も嫌いではなかったし、寧ろそれに気付いて立ち直ったんだから及第点をあげたいね。

「誰かが〜とか、時間が〜、っていう気休めは言わない。待っていたら其の内死ぬ。パンデミックには、特効薬が必要だ。そしてそれを作れるのは、自分だけだ・・・それとも親身になって側で慰めてほしい?」
「いいや、もう十分だ。自分の事ながら、何故俺はこんな無意味な懺悔(コト)をしているのかと不思議でしょうがなかったが、おかげでこの虚構の正体が見えてきた。いや、虚構なんかじゃなく、この俺もまた俺だったのだと、ぼやけていた視界のピントが合い始めた」
「なら僕とは正反対な性質の問題だけど、根っこは一緒だったってことかな」
「そうだな。だからお前がそっちの経験がなくて助かったよ。通りで慰め上手なわけだ」
「そ、そんなことほっといてくれ! 僕は頑固だけど、身勝手ではないよ! ただそれだけのことで・・・」
「いいや、これは重要なことだぞ? お前は今、俺相手に墓穴を掘ったんだ。俺はだ。多くの命をこの手で奪った・・・そんな俺のいうことを何故お前は信じられるのか、どうして信用してしまった?」
「えーと・・・それは・・・」

 やってしまった・・・らしくなく、偉そうに学者っぽく振る舞うんじゃなかった。
 そうだよね、僕は性知識を教えてくれる人がいなかったと言った。でもこの手の話を真面目に話すだけの歳は積み重ねたが、如何せん気の利いた冗談(ジョーク)にできるほど経験を積んだわけじゃない。
 まったく・・・次から次に問題が絶えないな、課題だらけだ。
 純粋な探求者になるのも難しい。だが愛染、どうかまだ後50年くらいは愛河で僕を染めていてくれ。肉体は齢9だが、精神年齢は別として魂年齢はもう30近いのです。特殊なケースのため、この肉体の歳を重ねるごとに精神は近情禍々しく、それくらい貪欲じゃないと僕は枯れてしまうんじゃないかと、最近密かに心配です。

「さて、それじゃあMrs.カルマ? 君は僕の体を使って何をしようとしているのかな?」
「・・・やはり気づいたか」
「そりゃあね。だって僕がここに来る前に一体何をしていたか、ステージの上でAct戦う演説してたんだ。だけど気づいた時には僕はここにいて、それまでの間の記憶がない。僕の現実はそこで途切れた。ここは君の懺悔室だ。ついでにこうして、自分の罪を告白した相手に嘘を吐くって言うのは辛くないかい?」
「じゃあ、お前がさっき言ったことも適当だったってわけか・・・?」
「半分正解で半分不正解・・・ってのはちょっと違うかな。ハイド、僕はどちらにも本気だった。割合でいえば100% vs 100%ってとこ」
「・・・そうか」

 僕は慌ててハイドの質問を誤魔化した。しかしハイドに知って欲しいと漏らしたこの気持ちに、嘘はない・・・だけどなんだよMrs.カルマって・・・でも、”悪と”と”Act” を偶然だが掛けたのはちょっと・・・どこの勘違い紳士野郎だ。結局僕が大根だったって新しい証拠を付け足ししただけじゃないか!

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 神の存在を肯定しない癖に、宗教ストーリーやフィクションに陶酔する半端者よ。君の座標はこの大きな星の中のどの点か、未だ不明であることはこの沈黙こそが、物語っている。

「・・・だが誤魔化すなリアム。背くことを正当化しないことも、正しいことだと少なくともティナの時や今回のことでお前は行動で証明している。お前は先にした俺の質問にまだ答えていない」
「その件については、どうせ僕はここで体験したこと忘れるんだろ? 大丈夫。仮に心の奥底に引っかかっていたとしても、その時は・・・イデアが僕を止めてくれるさ。ついでに君も一緒に助けてくれるとありがたい」

 ここは前世ともさして変わらないな。相変わらず異常なほどに楽観的で他人任せだ。
 だけど都合よく物事を考えられるほどの図太さがなければ辛い。それに僕の損失は彼女にとっても損失のはずだからね。いくら自分が清くあろうとも、きっと周りが灰汁を生み出す不信感が世界にはある。
 
「この世界が僕らに優しくないだけに、自分を愛してやる」
「じゃないと、灰汁の波に立ち向かえない・・・溺れてしまう」
「時の満ち引きに敏感であり、他人の生み出す波に柔軟でなければならない。・・・自分を中心に地球が回っているってアレ、惜しいけどいい考えだよね。僕はナルシストじゃないはずだけど、だからこそ、ならこの世界には他に星を回している人がいるのか?って・・・それだと僕は誰かの生み出した風や波に転がされ続ける砂粒じゃないか・・・この黒い土と一緒だ。そう思うと悔しくて悔しくて、それを考えるだけでゾクゾクするし、やる気が出てくる」
「やはりお前の考えは甘々の甘ちゃんだ。どうせその後は、”だから自分が地球を回してやるんだ”とか言うんだろ・・・笑わせるなよ? 仮にお前がその黒い砂粒と同じだとしても、お前を転がす波の下には必ず陸がある。いわば海とはでかい水たまりに過ぎず星の根本となるものは陸だ。つまり最初からお前は、星を廻す一部だった。それなのに今こうして、赤く染まった水たまりの上で中途半端に混じり合えない俺がどうして再び生を謳歌する許しを得られるのか・・・俺は中心でもなく、一部でもない」

 最後には空を仰いで僕に僕の言葉の間違いを熱弁するハイド。・・・その目の潤いが言葉を一つ一つ吐き出すたびにだんだんと増しているから、強がっているのだと、虚勢を張って無理やり演じているのだとわかる。だけど何故か落ちないんだよね。重力によって落ちるはずの涙が、絶対に流れたはいけないと目に張り付いたままだ。

「それに比べて、俺は羽を休めることを許されず、ずっと同じ軌道を飛び続ける・・・意味がない、・・・つまらない、・・・また俺はあの苦痛に支配されてしまう」

 熱い説教も束の間、自らが指摘した間違いだけに視野を狭めてしまったハイドは自責を始める。自責する彼女は今、僕を見ていない。見ているのは、赤い水面の代わりに自分の表情を写す膝の上に乗せた罪の権化、ようやく落ちた一滴が、虚像の被害者の頬を伝い、再び太腿を、膝を、肌を伝うと3秒間の美しい波紋を生み出す。

「ああ・・・ア゛」

 彼女の涙を頬に受けた人形は、ソレが通った場所から蒸気のような煙を発生させ肌を爛れさせると、やがて全身にも同じ現象が広がる。そして最後には先ほど同様骨となって、力ない彼女の手の中から溢れ落ちるよう骸は海の中へと沈んでいった。

「そだね。うん、確かに君の言った通り僕は烏滸がましかった。・・・そうだ。だから・・・」

 ・・・辛い。
 ・・・かなしいな。
 いくら自分で犯した罪とはいえ・・・それは悲し過ぎるよハイド。ハイド・・・この世界を造ったのは君だ。この赤は憎しみの再現で、かといって泥沼でもない血溜まりに脹脛が半分埋まってしまった程度で抜け出せないのは、君の葛藤なんだろう。君に心があることは、優しさは・・・今まさに、君が行動で証明している。
 だけど価値観を共有したからって僕はこれまで口にしてはいけない。雑草は根っこから抜けっていうだろ? 許しが欲しい君に、一つ多く許しを与えてしまっては、その分一つの禍根を残してしまうからだ。

「・・・!? ヨセッ!!! こっちに来るな! 堕ちるぞ!」
「大丈夫さ。この海は君の心象が生み出した像だ・・・ましてや波もない。そんなところでどうやって転ぶっていうんだい?」

 こうして水面を歩き、ハイドの前に立ってみると、彼ら(人形)を膝の上に乗せて慰めるためだけではない。彼女は罪悪感のあまり自ら作り出した見えない断罪者に立ち上がれぬよう背中を押さえつけられて、抗う事を諦めへたり込んでいるかに見える。その何者かは彼女が立とうとするたびに、自分を押さえつけられるほどの強者で、おそらくその正体は対話の秩序性を知った今の君なのだろう。

「また一つ、証明された。甘ちゃんでも、君にエールを送るくらいはできる」
「強か過ぎるぞリアム・・・しかしお前も、足りないものはこれから学び、吸収していけ。歳は時間と決して合同しないのだから」
「頑張るよ」

 現在の君は憎まれるべき破壊者であるが、今の君は悪徳を悟った殉教者(アンチテーゼ)だ。僕もこんなに大胆になったのは、今の僕になってからかな。僕ももっと頑張らないとね・・・根っこが悪辣な者同士、だから互いの贖罪のいく末ができるだけ円満なものになるよう願って、握手だね・・・ハイド。

「・・・」
「・・・」
「・・・でだ。甘いと言えば、お前の記憶にあったプリンという食べ物か。俺は一度あれが食べてみたい」
「記憶じゃダメなの? 僕が食べた中で一番美味しかったのは、カラメルって店のだからその日の記憶を探して・・・」
「そこは生で体験したい。あの滑らかでいてプルンと跳ねる物体は興味深い。ましてやあれで甘いなど想像がつかない・・・未知との遭遇はやはり直接じゃないとな。記憶へのダイブは、その後からで十分さ」
「でも僕は現実(あっち)に戻ったらここのことを忘れるんだろ?」
「間違いなく、な。あいつと違って俺とお前の過ごした時間は浅く短すぎる・・・壁がある。今回は俺が無理やり引っ張り込んだが、それこそこの壁の問題は時が解決してくれると期待する。だからお前が現実(そっち)に戻った後で催促する。これもついでに心の奥底に引っ掛けておけ」

 ま、善処するが、忘れるというのだからこればっかりは約束できないな。ちょっと先の未来の僕が、君の言うがままにプリンを作ってあげるくらい、まだまだ甘ちゃんであることを願っておいてくれよ。それくらいなら、大した遅れにはならないはずさ。

「それからもう一つ、お前に重大なことを伝えておく。これはお前が現実に戻った後にもう一度警告するつもりだが、今回俺が突然覚醒した理由は、ファウストの奴らがアメリアに仕込んでいたあの種子だ・・・あれはおそらく、俺たちの種族にまつわる何かだ。だが今となっては異空間に隔離され、お前と俺の適合度もまだまだ低いから、あれに再び干渉しない限り俺は眠りにつくだろう」
「そうなの? 折角こうして心内を共有できたのに、ちょっとさびし・・・」
「じゃあ俺のためにまた、お前が眠ってくれるのか? そうだな・・・今度はおそらく3年もあれば80%はいけるだろう」
「それは・・・」
「一方で、お前が器の鍛錬に集中しなくてもいずれ成人に、強い肉体を獲得していくにつれ俺との適合度は自然と上がっていくだろう。俺が混在した時点でそのための因子は既に魂に刻まれている」
「・・・からかったね」
「そうだな。だがこのことはイデアには内緒にしておけよ?・・・現状昨日の今日だ。妙な所で堅物なあいつが自分の設計に異物が混入してることを知って、どんな行動に出るかわからないだろ?」
「えっ・・・じゃあそのうち羽が生えてきたり皮膚が鱗化したりするわけ?」
「素体はあくまでもお前だから、出産以外で異種族の肉体を細胞レベルで無理に合わせるとなると手術かスキルが必要になる。だから安心していいぞ。別に下り坂を全速力で駆ける訓練も、緊急時の正しい自由落下の仕方や魔法による応急マニュアルを考える必要はない」
「・・・」
 
 前世も合わせて30年近く、この肉体構成で過ごしてきたんだ。慣れた肉体に羽とか尻尾とか鱗とか、余計なものが付くのは不便と思う反面、もしかして、かっちょいい竜羽が背中から生えてそれで自由に空を飛ぶ自分を想像してしまった。・・・また、ハイドに揶揄われた。

「そんなに怒らないでくれ、これもまた一つのきっかけだ。・・・俺はお前の心の深層に住んでいる。きっかけとは恐ろしく強い理由であり、興奮を奮い立たせる感情アトムの一つ・・・お前が本気で呼べば、本来の力にくらべれば微々たるものだが俺は力を解放する。またこうして引き摺り込まれないよう精々怯えながら日常を送るといい。その時は、是非お前のマニュアルを参考にさせてもらうさ」
「詩的で、モダンで、そして何よりロマンチックだ・・・いい例えだね。これなら僕も思い出せるかも」
「・・・さて、帰り口はあっちだ。だが忘れるとはいえ、最後にこれだけは言わせろ・・・」
「なに・・・?」
「・・・俺も、本気だった」
「わかった。じゃ、名残惜しいけど僕は一足先にこの美しいクロユリ色の世界を出て待つことにするよ」

 結局、彼女はこの血の海に僕が足を踏み入れるのを阻止するために睨んだ時以来、一度も目を合わせなかった。・・・握手をした時もね。だけどそれはきっと彼女の優しさが故のことなのだと、僕は信じたい。共感によって混じりはしなかったが、共有はできたんだから上々さ。だから──



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 ゃ   
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 ま
 た
 ね 
 ハ
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 ド
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「お前は確かに強いが・・・だが、だからこそ俺が脅し方を教えてやらなくちゃならない。俺にはそれしかない」

 リアムの体を乗っ取ったハイドはとある聖堂を上空から見下ろしていた。

「お前には俺の罪の影像を見せたが、深層の心象のことだ。きっともう、忘れているだろう」

 また、そんな意味深な独白をしながら、キョロキョロとあたりを探る素振りを見せる。

「臭いな・・・裏で法だけじゃなく信仰までも売った奴だ、ゲスの悪臭がプンプン漂っている」

 そしてハイドは、丘に立つ教会の中でも特に眺めのよさそうな大きなガラスの窓がある一室に目をつけた。

「ケホッ! な、なんだ!?」
「禿頭に見せつけんばかりの立派な宝石があしらわれた指輪や飾り・・・ビンゴ! お前がこの教会の司教ブルネッロだな?」

 窓なんて関係ない。屋根から一気にダイブし天井を崩して堂々と侵入する。

「何者だ! ・・・って何だ小僧か。おいガキめ、ここがどこで私がこの教会の司教と知っての狼藉か! 無礼だぞ! 今私は別の厄介ごとで忙しい! わかったら直ぐにヴェリタス神の名の下に膝まづ・・・どうしてガキが天井から降ってくるんだ?」

 そこには祭服を着て尻餅をつくいかにもな男と、その側の床にぶちまけられた金貨を口から零す袋、同じく金銭的価値のある何かが入っているのであろう壺の5つほどが絨毯がベロンとめくれた秘密の床下に見て取れた。
 それを見たハイドは益々容赦ない。あれだけ派手にやったんだ。こいつはこの街で一番の権力者であるから、さっき山が一つ吹っ飛んだとこを見た、またはかなり考えにくいがあるいは知っているはずで、どちらにしても為政者として取るべき行動があるはずなのにこいつはいったい、今何をコソコソとしていたのか・・・想像できるから嫌になる。犯罪者という分類ではこいつと同じと思うと、尚更に。

「まだ死ぬなよ?」
「・・・グァアアア!?」
「お前が神の名を語るんじゃねぇよ。あいつらは物好きだがお前みたいにちっぽけな辺境の街でセコい商売する汚職者になんて興味は持たない」
「私は神聖帝国に正式に認められた司教だぞ・・・そ、それにお前が神の何を知って・・・」
「よーく知ってるさ。あいつらには色々と狂わされたこちとら被害者だ」

 神の名を語り自分を弁護しようとした司教に突進し、そのままドンと壁に衝突したところで胸に足を当てたまま押さえつける。

「ええい警察はどうした!? 衛兵は!!! クソッ・・・殺して、殺してやる!!!」
「善神との仲介者が安易に死を宣告するとは聞いて呆れる。そして生憎だったな・・・そんな憎々しい目で俺を睨めつけてもこれっぽっちもビビらない」
「まさか・・・さっき山が消し飛んだのも貴様の仕業か・・・!」
「俺を殺したいんだったな? だがそれは叶わん。俺を殺せるのはそれこそ、その神か・・・」

 しかし、ハイドがその先を口にすることはなかった。危ない危ない。うっかりと、我が同棲者の身を危険に晒すところだった。

「・・・またな」
「・・・なんだ? 一体誰に別れを告げて」

 また、シリアスな展開が、そんなハイドの突飛な別れの言葉でも一旦中断される。

「ハイド!!!」
「起きたか・・・タイミングピッタリだな・・・」
「いきなり僕を変なところに引き摺り込んで君は何をして・・・あれ、その後の記憶がな・・・へあ!? なんで僕見知らぬおじさん踏みつけてるの!?」

 ・・・が、その中断も束の間、次に始まったのは醜い口喧嘩である。

「す、すみません。今、足を退けて・・・」
『離すなリアム! そのまま踏みつけてろ!』
「な、なんで!?」
『そいつはな!俺たちを散々な目に合わせた奴隷商とグルのこの街の司教だ!』
「この人が!?」
「ヴゥ・・・」
「言われてみればそれらしいけど」

 一体何故、リアムがこの太っちょのおっさんを右足で踏みつけているのか、その経緯と理由の状況説明がハイドからなされる。

「あなたもしかして、ブルネッロさん?」
「だからさっきもそう言っただろう!・・・す、すまない! 今のはなかったことに・・・どうか慈悲を、助けてくれ・・・!」

 リアムに再び名前を尋ねられてブルネッロがキレるが、この街の御神体であるお山を一瞬で消し飛ばし・・・これはまだ仮だが、それでも、石の天井を突き破って侵入し、子供の体で自分のブヨブヨについた贅肉を無視し体の芯にダメージを与えるくらい強く踏みつける力を持つ明らかな異常性、そのリアムに逆らうような発言をした自分の馬鹿で愚かな行為を正すとともに、彼は自分に慈悲を求め始めた。

「たくさんの子供たちの人生狂わせといて、なんで慈悲を求められるの? 介入するのに介入はされたくないって、それを望むのは明らかに違うでしょ・・・」
『そうだリアム・・・いいぞ。その調子でこのままこいつを、殺してしまえ』

 悪魔の囁きが、僕の頭の中を駆け抜ける。

「な、ならば お前はどうなのだ! この教会は国によって管理される建物だ! その建物をここまでめちゃくちゃにしたのだ! だのに貴様には全く罪もなく、自分は清廉潔白な存在であると言えるのか!?」 
「まああなたよりは・・・」
「・・・・・・」

 リアムの返しに、文句の一つも言えないとはとても情けない。子供に力でも、口でもコテンパンにされたブルネッロは完全に消沈する。

『どう言うこと!? 』
『チッ・・・自分の罪を棚上げしやがって』
『やっぱり君がやったんだね・・・ああもう国税で運営される公共施設を破壊するとかどこのテロリストだよ!』
『うるさい! そもそもその税金の使い方を決めてる奴らが定期的にちゃんと監査を入れてこいつの悪事に気づいていればこんな目に遭う必要も、事が大きくなることもなかったんだ!』
「それはただの責任逃れだろ! 今! ここで!君=僕がルールから逸脱した行動をとったんだ! それじゃこいつらとやってることは変わんないよ!」
『じゃあお前はどうするって言うんだ? このままこいつを見逃すと? 今! ここに! 目の前に俺たちをコケにするどころか奴隷にしようとした奴が』
「違う! 俺たちじゃなくて、俺だろ! そして俺たちじゃなくて僕だ!」 
『いいや違わない! 他の違法に捕らえられていた奴らに、お前も含めて”俺たち”だ!』
「じゃあ勝手に体を奪うなよ!他の子供たちの事は百歩譲ったとしてもだ!」
『クソッ!・・・ついでだろついで! もうここまでやったんだ! 毒を食らわば皿まで食っちまえよ!』

 念話で喧嘩を始めた・・・興奮の余りに途中から、自分でも気付かぬ内に口から出してしまっていた命に値をつけようとする傲慢な審議が、魔力の漏洩とともに大気に振動をもたらす。

「か、金なら・・・」
『・・・殺せリアム 。そいつはあろうことかこの俺を奴隷へと辱めた呼吸する価値すらないクズだ』
「いやだ・・・僕は・・・人を殺したりなんか・・・」

 命の重さはよくわかっているはず・・・なのに──何故、迷う。

『あれだけ大量のモンスターは殺せてたかが腐敗した宗教の成れの果ても殺せないとは情けない』
「・・・モンスターは生きるための糧になる。素材にもお金にもなるし、生活を豊かにする」
『違う! お前はこれまで楽しいからモンスターを殺してきた! ゲームと同じだ! 自分が強くなるため、自尊心と狩りの欲求を満たすためにモンスターと戦っていたはずだ・・・命の重さなど、再び蘇ったお前はまだ知らない!!!』

 人間だろうと魔族であろうと、獣人に妖精族だろうと、精霊だろうとモンスターだろうと、星にだって寿命がある。それが人と魔族、人とエルフの混血であろうと、竜であろうと・・・この尊い炎を狩る理由は、消火し薪を奪って己の炎をより強く、長く保つため・・・つまりは自尊心と、自己満足のため。

「・・・それでも全く違う世界で蘇った僕の気持ちなんて」
『わかるさ。まだ一方通行だが、俺はお前の思考、認識、記憶、感情にアクセスできる。俺が真に覚醒しお前が心を開いてくれれば、イデアとお前がして見せたように柵を取っ払うこともできるはずさ・・・まだまだ時間は必要だろうが』

 ・・・きっとこうなるから、僕は直接この男に会いたくはなかった。関わりたくないと嫌悪する反面で、僕を食い物にしようとした事に腹が立って、滾ってしょうがない。

「お前ができないってんならせめてもう一度俺に体を明け渡せ! 俺が代わりにトドメを刺してやるから!」

 ついに、ハイドが体の主導権を一瞬だが奪った。それほどまでに、この瞬間にリアムの心は限界近くまで大きく揺れて、振れた。

「こんな山羊1匹手にかけるなど容易い!」

 廃れた宗教の象徴を、再びリアムの体を乗っ取ったハイドの手刀が、脂汗のヌメリが酷いブルネッロの首を刎ねようと襲う。しかし手刀は皮膚が触れ合う3センチほど離れた場所で止まると──
 
「何のために法がある・・・何のためにルールがある」
『俺とお前の間にはルールがあるのか?・・・ならば言い方を変えよう。こいつはクズであることに違いない。こいつはあろうことかこの俺とお前を奴隷へと辱めた罰せられるべき悪だ。お前にはこの愚者を裁く権利がある』

 そうだ。そういえば、ハイドの言う通り、彼女と僕の間にルールなどない。なら、彼女が僕にとって変わりこの男を殺そうと、僕には関係ないんじゃないかという甘言が、胸を激しくざわつかせる。

『さぁ、殺そう。本能のままに、怒りのままにこいつを殺せ』
「・・・違う」
『・・・なんだと? 何が違うと言うのだ・・・お前はこいつを罰する権利を持ち、また、殺せるほどに強い! ・・・強くあれリアム! お前は自らの価値を低く見積すぎ』
「違う。君のソレは、ただの我儘だ」

 だけどね・・・やっぱりソレは、違うんだよハイド。

「僕は神でも獣でもない・・・人間なんだ!!!」
『グッ・・・!言ったなリアム! 人間なぞコントロールできぬ怒りに振り回される低俗な愚かな者だ! ただし怒りのコントロールは抑圧などでは決してない! 怒りを発散することにこそ、それを実現できる力にこそ本質がある! 貴様はそれを諭されてなお、愚かな人間の枠に準じようとするのか!留まるのか!』

 ハイド。君が僕を一つ上の世界へ連れて行こうと言葉を並べるほどに、君の中に何か別の隠し事があるような気がしてならない。

「ああ言ったさ! わかるまで何度だって言ってやる! 僕は人間だ! そしてこの枠組みだけは絶対に譲らない! だって僕は──」

 だって僕は転生者、2つの世界に生まれ、故郷を2つ持ち、異世界の存在を知り、新しい世界で生きて成長している最中で、吸収し、混ぜ合わせ、誰にも見つけられない新たな可能性を見つけられるかもしれない幸運な人間だ。

「フー・・・フー・・・!」
「ゆ、許してくれぇ・・・!」
「僕は・・・僕は・・・今を、生きてるんだ・・・ッ!」

 ・・・そうだ。僕は2度目の人生を手に入れたとても幸運な人間で、再び人間として、今を生きている。

「こんな奴のために大切なこれからの僕の人生を汚してたまるか・・・!」
『結局、お前は見ず知らずの赤の他人が作った法に頼るのか? それではあまりに弱い・・・弱すぎるぞ!』
「論点をすり替えるくらいわけないさ。僕は人の営む社会の中で生きている人間で、孤独じゃない。さっきも言ったけど、僕は神様じゃないんだから」

 全知全能の神様の真理ってヤツが狂ってしまえば、世界全体の構成が上書きされてしまう大規模なアップデートが必要となるだろうからね。逆に、そんな柵を無視できることが人間の良さであり、強みだと言える。常に危険と未知を天秤にかけている。

「それに、造ったものを好き勝手していいっていうのも、違うよね。心があるのならば、なおさらに、この程度の問題で僕は革命者になり得ない」

 これは僕個人が決めていいことじゃない。人間としてのプライドは辱められたが、僕は傷一つつけられたつもりはない。それよりも、彼を殴りたい人はもっとたくさんいる。僕らよりも前に、あの商会で売られていった子供たちだ。彼の処遇はコミュニティが決める。社会の意思って奴がさ。

「これは・・・!」
「やはりテロか!? さっきのお山の焼滅といい 一体今この街で何が起こっているというんだ!」
「警官がきた・・・警察であろうと自警団であろうと、国か、街が、より良い治安を守るために運営する独立した公的な組織だ。ここまで大きな騒ぎとなれば原因の究明は避けられない。さもなければ、この街で生を営む人々が黙ってない」

 これだけの騒ぎが秘密の悪の巣窟で起こったんだ。きっと芋づる式に次々と彼らの悪事が明るみに出ることだろう。話を聞く限りこの司教が違法に奴隷認可の許可を出していたのはあくまでも独断で、職権の濫用に当たる。仮に国の中枢に近いところまで腐っていたとして、彼がトカゲの尻尾切りになるのが容易に想像できるがそんな闇に首を突っ込むなど御免被る。それも他国のお国事情だ。そこまではカバーできないし、義理もない。・・・あーあ。態々こんなところに来なければ、差別して、見ないフリして、簡単に僕のエゴから隔離された場所へとこの男を葬れたはずなのに。

「そのために都合の良い正義なんて言葉があるのではないのか・・・本当に殴らなければならなくなった時に、殴れなくても知らんぞ」

 利己主義って素晴らしい・・・本音では最近恋しいよ。ここまで僕の心を揺さぶるとはやるな、ハイド。
 でもハイド、君も言うほど自分の感情に素直だと言えるのか?・・・僕と君はきっと似ているんだね。こうして互いの価値観をぶつけ合って火花を散らせるほどに・・・あ、・・・あんたは違うよ、ブルネッロ。こうして関わってしまった後だが、僕とあんたはxで座標は同じ社会でも、yの上下高低で次元が違うからね。

「・・・帰る」

 でも僕が誰かを裁くにあたり無力だと今認めたばっかりだ。国の治安安定の役目を担う警察関係者に姿を見られるのはよろしくないし、早いところジョシュたちと合流して当初の予定通り、ゆっくりと勝利の余韻に浸るとしよう。

「た、助けてくれ! 悪魔だ! 悪魔が私を殺しに来る!!!」
「お、落ち着いてください!ブルネッロ様!」
「儂が全て悪いんだ! 全ての罪を告白する! イドラの子だ! ああイドラの使徒よ。罪深き私は己の罪を認め償いに一生をかけます!だからそちら側に連れて行くことだけはどうか、どうか・・・!」

 ただし、警官がブルネッロを発見し、その後どんなやりとりをするかまでは隠蔽で気配を断ちながらみさせてもらう。この人達までもが腐っていたら、また後々の筋書きが狂っちゃうからね。

「気絶している・・・」
「泡吹いて・・・一体どんだけ怖い目にあったんだ?」
「それだけの脅威があったと言うことか?  既に最高レベルの警戒中だが全員警戒を限界突破だ! 山の方に出向いた偵察部隊からの情報を待ちながら我々は崩壊した教会の中に何か手がかりがないか調べるぞ! 今日から3日は敵の強襲に最新の注意を払いながらの徹夜確実だから覚悟しておけよ!」

 どうやら大丈夫そうだね。それにしても、3日徹夜って・・・おそらく交代制も取り入れながらのってことだから、実質的な警戒は1週間は続くんだろうな。・・・でもさ、違法商売も含めこの事件が起きた原因には、あなたたちが司教の犯罪に気付けなかったこともあるんだし、この街の膿を代わりに絞り出したってことで一つ等価交換で相殺してね。・・・あ、それと後から違法奴隷の子たちの帰宅やらの手続きも待っているから、半年、下手すれば1年以上はこの事件の真相究明及び雑務に追われることになるかも・・・ うん、やっぱり僕も被害者ってことで、そういうことで、一つよろしく。じゃ、・・・テレポート。

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