アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
209 アルフレッド&ティナVSリゲス
「あら。せっかちね」
最初に、衝突したカミラとウォルター達に次いで刃を交えたのは──
「──止められ」
「私。こう見えても防御には自信があるのよ?」
いや、拳と筋肉を交えたのは──
「下がれティナ!」
「──んッ」
「ダストデビル!」
ティナとリゲス、そしてアルフレッドだった。
「あら・・・かよわい乙女に寄ってたかって・・・さては」
「見た目通りの堅牢さだな」
「んまぁ! 見た目通りなんて・・・いやでも逆に、男の子って好きな女子に意地悪するって言うわよね」
「ちがーう! 断じて違う!!!」
己の鍛えられた屈強なマッスルをなぜか認めようとしないリゲス。普通、あれだけ立派なものを持っていたら自慢にもなりそうなものだが──
「自分の姿を鏡で・・・いや今スグにそのゴツい腕や手をみれば一目瞭然だろうが!」
「あら本当ね・・・」
「だろ?」
「美しいわ〜❤︎」
「認めろよ!」
しかし、リゲスは頑なにアルフレッドの指摘を認めようとしない。
「じゃあなぜ鍛えたんだ・・・」
思わずなぜそこまで鍛えたのか、アルフレッドがそんな疑問をポロッと零す。
「まあ、大事なものを守るため・・・かしらね」
と・・・
「あなた達にはある? 命をかけても守りたいと思えるものが」
アルフレッドの呟きにごくごく真面目に答えるリゲス。この返しは意外、「あなた達には絶対に命をかけても守りたい・・・そんな大切な人はいるのかしら?」と、自分の志を挙げてアルフレッド達に問いかける。
「美しさは決して見た目だけで判断するものではないのよ? 表面だけ見て美しさを語るあなた達はまだまだお子ちゃまね」
「いや、別にそう言う意味じゃ・・・」
「じゃああるのかしら?」
「私にはあるわ」と、完全に会話はリゲスのペースだ。
「・・・グッ」
「ポー・・・」
顔を真っ赤にぼーっとする2人。
「まあ2人とも赤くなっちゃって・・・一体誰を想像したのかしら?」
そんな2人を見てリゲスは思わず嬉しくなり・・・
「愛ね」
「う、うるさい!」
からかう。
「・・・」
「おいティナ戻ってこい!?」
「ハッ・・・」
なんともからかいがいのある2人。2人ともとても純粋で真面目。そしてどこまでいっても一途で・・・
「今俺たちは大切な誰かじゃない! 大切な仲間達のために戦っているんだ!」
「・・・うん」
仲間のために、己を犠牲にできるほどの信念と覚悟もある。
「つまり俺たちが守り貫くモノは──」
「・・・同じ」
実に真っ直ぐ。
「いくぞ! とにかくボクが魔法で援護するから・・・」
「うん。もう一回・・・」
真っ直ぐに、挑んでくる。
「獣化・・・ナックル!」
「フラッシュボム!」
そんな献身的で健気な姿を見せられると・・・
「光の目くらまし・・・甘いわね」
「ンッ・・・!」
とても興奮する。
「捕まえた・・・ティナちゃん❤︎」
「足を・・・!」
今自分は彼らの前に立ちはだかる壁なのだ。自分も全身全霊の愛を持って応えねば。
「はな・・・して!」
リゲスに足を掴まれ、ぶら下がり状態のティナがなんとか抜け出そうと暴れる。
「そんなに暴れても離さないわよ?」
しかしもう一本の足で蹴りを食らわせようにも、拳で殴ろうにもリゲスには届かない。
「かわいそうな子達・・・本当にかわいそうでため息が出ちゃうわ」
すると唐突に、暴れても抵抗しても己の手の中から抜けられないティナを見てリゲスがため息を吐く。
「なにがかわいそうだって言うんだ・・・!」
頭の中でティナを助け出してかつ反撃追撃のリスクを極限まで減らす策を案じながらも、アルフレッドが時間の引き伸ばしのためにリゲスの言葉を拾う。
「ねえあなたち。さっきの守りたい仲間には、当然リアムちゃんも含まれてるのよね?」
しかし──
「そうよね。だって彼はあなたたちのリーダーであなたにとっては1番の友人。そしてティナちゃんにとってはおそらくこの世界で一番大切な人・・・なんじゃないかしら?」
それが彼らに悪夢をみせるスイッチとなった。
「それが・・・どうした」
一体リゲスは何を言いたい・・・いや、今はティナを解放することが優先だ。
「図星ね」
何かいい策は・・・って待て、図星って表情に出てたか? ポーカーフェイスにはちょっと自信があるのだが。
「そんなに顔を真っ赤にしちゃって・・・本当あなたたち彼のこと、好きよね」
「ばっ! ティナはまだしもボクの顔はいたって平静だ!」
あ・・・反応してしまった。
「だけど果たしてリアムちゃんは、果たしていつまであなたたちの傍にいてくれるのかしら?」
だが──
「一体何をいってるんだ・・・?」
反省したばかりだというのに、リゲスの意味深な台詞に反応せずにはいられない。
「リアムちゃんはとても不思議な子・・・子供ながらに大人が顔負けするほどに賢く、また圧倒的な強さ、才能と誰しもが欲しがる能力を持っている」
リゲスが語る。リアムのその──
「強さ・・・それがあるだけでカリスマが生まれ人は彼に着いて行きたくなる」
強さが生み出すモノを。
「才能・・・それがあるだけで能力が認められ人は彼を欲しがる」
才能が生み出す新たな出会いと繋がりを。
「正直言って選り取り見取りよね」
リアムが選ぶことのできる未来の選択肢を。
「だから何が言いたい!」
「鈍いわね・・・いや、実際はよくわかっているからがっつくのかしら。今自分たちが置かれている現状を。そして・・・彼が自分たちを置いてどこかへ行ってしまうんじゃないかという恐怖を」
「・・・ッ!」
言い返したい。だが言い返せない。さっきからティナも抵抗をやめ、大人しく2人の会話を聞いている。
「貴様にあいつの何がわかる・・・」
「よくわかるわ。だって彼を最初に鍛えたのは私なんだから」
「ならなおさら、リアムの性格は・・・!」
「ええよく知ってるわ。彼は誰もが羨む知恵、強さ、才能の3拍子を持っていながら今尚進化しようとしている。ただそれは同時に・・・」
最近。切実に肌に感じることがある恐怖。このダンジョンの攻略はあと一回のボス戦で終わる。そして──
「まだ満足していない。その証拠として彼はとても努力家で、また夢追い人よね。あらゆることに敏感で、常にそうあろうとして」
『あいつはそういう奴だ。なにかを成し遂げたと思えば失敗もして、しかしそれを取り返すのにも必死になって』
リアムは隣で息を切らして一生懸命並んで走っているのに、気がつけばあいつは後ろでのんびりと寝ていたり・・・また今度はいつの間にか先に一人で突っ走って行こうとしたりする困ったやつだ。
「故に謙虚だけど実は一本、結構太い芯が彼には通っているわ。そんな彼が次に一体どこに行こうとしてるのか・・・あなたたちは知ってる?」
「・・・知らん」
「そうね。ただ真っ直ぐなあなたたちじゃわからないわよね」
未だ掴めきれない親友の心。また同時に感じるのは、まるで自分の心の中が丸裸にされて凝視されているような不快感。
「じゃああんたは知ってるっていうのか」
「あら? 一番リアムちゃんの近くにいるあなたたちが知らないんだから、私が知るわけないじゃない」
怒りのせいで言葉遣いも、だんだん苛立ちを含んだものとなり──
「なぜ・・・そこまでボクたちの心が読める」
「そりゃあ人生の先輩だもの。あくまで客観的に見た意見だけど、正直言ってあなたたちのパーティーって違和感の塊なのよね」
「・・・・・・」
尚更に、一つ冷静なのか怒りが自分を惨めにする。
「先日のあなたたちの戦い。私も観客席で見てたわ」
力が器いっぱいに吹き出してくるのに、片っぱしからそれが喪失していくかのようなもどかしさ。
「まあそれだけじゃなくて、あなたたちの戦いはこれまでにも見てきたけれけど・・・」
なにが言いたい・・・またそう言って答えを求めてやりたい。
「先日のアレは特に最悪だったわね」
だが・・・それはまた同時に自分の弱さに負けるということで・・・。
「・・・いつまでそうやってる気だ・・・ティナ」
「ンッ」
「・・・あら。無視?」
「さっさと戻ってこい!」
だったら今は──
「ガブッ!」
「イタイッ!!!」
何もかも、無視してやる。
「ナイスだ」
「別に・・・自分の失敗を自分で取り戻した・・・だけ」
自らの腹筋を使い手に取り付いて噛み付く。あれだけぶら下がっていたから、上を向きたくなるというものだ。
「・・・・・・」
「てぃ・・・ティナさーん?」
「・・・・・・」
鋭い眼光。まるで狩で獲物から決して狙いを外さない獣のよう・・・ぶら下がっていたついでに怒りでも頭に血が上っていたのだから、尚更に。
「んもぉイッターイ!・・・結局信じちゃうの? アルフレッドちゃんは」
「うるさい。仲間なのだから信じて何が悪い」
無視しろ。
集中しろ。
それを認めるために必要なのはまず目の前の勝利だ。
「だいたいリゲスさんの言ってることはあくまでも客観的な意見だ。オレたちの本物の絆が全部見えるはずがない!」
それにこの人が言っているのはあくまでも映像越しに観て評価したに過ぎない批評。
「でも事実よ。そしてそれを経験に基づき評価したいわば経験則から得た・・・」
「経験則がなんだ! 周りがそんなだからどうだっていうんだ!」
助言(それ)を信じる必要は決してない。
ただ信じるのは仲間のみ。
そして壁の向こうにいる彼ら、その壁を越えるための定石がないなんていうのなら──
「くつがえす!!! なーにが悲しくてこんな時まで自己嫌悪しないといけないんだ!!!」
逆立ちしてでも転がりながらでもその壁にぶつかりに行ってやる。
やってみなくちゃわからない。挑戦してみなくちゃぶつかってみなくちゃわからないことだってあるさ。
「それに・・・その時がきたら、その時さ」
また対話(けんか)・・・何度もそれが必要なほどにボクらの人生は若く、まだまだ長い。
最初に、衝突したカミラとウォルター達に次いで刃を交えたのは──
「──止められ」
「私。こう見えても防御には自信があるのよ?」
いや、拳と筋肉を交えたのは──
「下がれティナ!」
「──んッ」
「ダストデビル!」
ティナとリゲス、そしてアルフレッドだった。
「あら・・・かよわい乙女に寄ってたかって・・・さては」
「見た目通りの堅牢さだな」
「んまぁ! 見た目通りなんて・・・いやでも逆に、男の子って好きな女子に意地悪するって言うわよね」
「ちがーう! 断じて違う!!!」
己の鍛えられた屈強なマッスルをなぜか認めようとしないリゲス。普通、あれだけ立派なものを持っていたら自慢にもなりそうなものだが──
「自分の姿を鏡で・・・いや今スグにそのゴツい腕や手をみれば一目瞭然だろうが!」
「あら本当ね・・・」
「だろ?」
「美しいわ〜❤︎」
「認めろよ!」
しかし、リゲスは頑なにアルフレッドの指摘を認めようとしない。
「じゃあなぜ鍛えたんだ・・・」
思わずなぜそこまで鍛えたのか、アルフレッドがそんな疑問をポロッと零す。
「まあ、大事なものを守るため・・・かしらね」
と・・・
「あなた達にはある? 命をかけても守りたいと思えるものが」
アルフレッドの呟きにごくごく真面目に答えるリゲス。この返しは意外、「あなた達には絶対に命をかけても守りたい・・・そんな大切な人はいるのかしら?」と、自分の志を挙げてアルフレッド達に問いかける。
「美しさは決して見た目だけで判断するものではないのよ? 表面だけ見て美しさを語るあなた達はまだまだお子ちゃまね」
「いや、別にそう言う意味じゃ・・・」
「じゃああるのかしら?」
「私にはあるわ」と、完全に会話はリゲスのペースだ。
「・・・グッ」
「ポー・・・」
顔を真っ赤にぼーっとする2人。
「まあ2人とも赤くなっちゃって・・・一体誰を想像したのかしら?」
そんな2人を見てリゲスは思わず嬉しくなり・・・
「愛ね」
「う、うるさい!」
からかう。
「・・・」
「おいティナ戻ってこい!?」
「ハッ・・・」
なんともからかいがいのある2人。2人ともとても純粋で真面目。そしてどこまでいっても一途で・・・
「今俺たちは大切な誰かじゃない! 大切な仲間達のために戦っているんだ!」
「・・・うん」
仲間のために、己を犠牲にできるほどの信念と覚悟もある。
「つまり俺たちが守り貫くモノは──」
「・・・同じ」
実に真っ直ぐ。
「いくぞ! とにかくボクが魔法で援護するから・・・」
「うん。もう一回・・・」
真っ直ぐに、挑んでくる。
「獣化・・・ナックル!」
「フラッシュボム!」
そんな献身的で健気な姿を見せられると・・・
「光の目くらまし・・・甘いわね」
「ンッ・・・!」
とても興奮する。
「捕まえた・・・ティナちゃん❤︎」
「足を・・・!」
今自分は彼らの前に立ちはだかる壁なのだ。自分も全身全霊の愛を持って応えねば。
「はな・・・して!」
リゲスに足を掴まれ、ぶら下がり状態のティナがなんとか抜け出そうと暴れる。
「そんなに暴れても離さないわよ?」
しかしもう一本の足で蹴りを食らわせようにも、拳で殴ろうにもリゲスには届かない。
「かわいそうな子達・・・本当にかわいそうでため息が出ちゃうわ」
すると唐突に、暴れても抵抗しても己の手の中から抜けられないティナを見てリゲスがため息を吐く。
「なにがかわいそうだって言うんだ・・・!」
頭の中でティナを助け出してかつ反撃追撃のリスクを極限まで減らす策を案じながらも、アルフレッドが時間の引き伸ばしのためにリゲスの言葉を拾う。
「ねえあなたち。さっきの守りたい仲間には、当然リアムちゃんも含まれてるのよね?」
しかし──
「そうよね。だって彼はあなたたちのリーダーであなたにとっては1番の友人。そしてティナちゃんにとってはおそらくこの世界で一番大切な人・・・なんじゃないかしら?」
それが彼らに悪夢をみせるスイッチとなった。
「それが・・・どうした」
一体リゲスは何を言いたい・・・いや、今はティナを解放することが優先だ。
「図星ね」
何かいい策は・・・って待て、図星って表情に出てたか? ポーカーフェイスにはちょっと自信があるのだが。
「そんなに顔を真っ赤にしちゃって・・・本当あなたたち彼のこと、好きよね」
「ばっ! ティナはまだしもボクの顔はいたって平静だ!」
あ・・・反応してしまった。
「だけど果たしてリアムちゃんは、果たしていつまであなたたちの傍にいてくれるのかしら?」
だが──
「一体何をいってるんだ・・・?」
反省したばかりだというのに、リゲスの意味深な台詞に反応せずにはいられない。
「リアムちゃんはとても不思議な子・・・子供ながらに大人が顔負けするほどに賢く、また圧倒的な強さ、才能と誰しもが欲しがる能力を持っている」
リゲスが語る。リアムのその──
「強さ・・・それがあるだけでカリスマが生まれ人は彼に着いて行きたくなる」
強さが生み出すモノを。
「才能・・・それがあるだけで能力が認められ人は彼を欲しがる」
才能が生み出す新たな出会いと繋がりを。
「正直言って選り取り見取りよね」
リアムが選ぶことのできる未来の選択肢を。
「だから何が言いたい!」
「鈍いわね・・・いや、実際はよくわかっているからがっつくのかしら。今自分たちが置かれている現状を。そして・・・彼が自分たちを置いてどこかへ行ってしまうんじゃないかという恐怖を」
「・・・ッ!」
言い返したい。だが言い返せない。さっきからティナも抵抗をやめ、大人しく2人の会話を聞いている。
「貴様にあいつの何がわかる・・・」
「よくわかるわ。だって彼を最初に鍛えたのは私なんだから」
「ならなおさら、リアムの性格は・・・!」
「ええよく知ってるわ。彼は誰もが羨む知恵、強さ、才能の3拍子を持っていながら今尚進化しようとしている。ただそれは同時に・・・」
最近。切実に肌に感じることがある恐怖。このダンジョンの攻略はあと一回のボス戦で終わる。そして──
「まだ満足していない。その証拠として彼はとても努力家で、また夢追い人よね。あらゆることに敏感で、常にそうあろうとして」
『あいつはそういう奴だ。なにかを成し遂げたと思えば失敗もして、しかしそれを取り返すのにも必死になって』
リアムは隣で息を切らして一生懸命並んで走っているのに、気がつけばあいつは後ろでのんびりと寝ていたり・・・また今度はいつの間にか先に一人で突っ走って行こうとしたりする困ったやつだ。
「故に謙虚だけど実は一本、結構太い芯が彼には通っているわ。そんな彼が次に一体どこに行こうとしてるのか・・・あなたたちは知ってる?」
「・・・知らん」
「そうね。ただ真っ直ぐなあなたたちじゃわからないわよね」
未だ掴めきれない親友の心。また同時に感じるのは、まるで自分の心の中が丸裸にされて凝視されているような不快感。
「じゃああんたは知ってるっていうのか」
「あら? 一番リアムちゃんの近くにいるあなたたちが知らないんだから、私が知るわけないじゃない」
怒りのせいで言葉遣いも、だんだん苛立ちを含んだものとなり──
「なぜ・・・そこまでボクたちの心が読める」
「そりゃあ人生の先輩だもの。あくまで客観的に見た意見だけど、正直言ってあなたたちのパーティーって違和感の塊なのよね」
「・・・・・・」
尚更に、一つ冷静なのか怒りが自分を惨めにする。
「先日のあなたたちの戦い。私も観客席で見てたわ」
力が器いっぱいに吹き出してくるのに、片っぱしからそれが喪失していくかのようなもどかしさ。
「まあそれだけじゃなくて、あなたたちの戦いはこれまでにも見てきたけれけど・・・」
なにが言いたい・・・またそう言って答えを求めてやりたい。
「先日のアレは特に最悪だったわね」
だが・・・それはまた同時に自分の弱さに負けるということで・・・。
「・・・いつまでそうやってる気だ・・・ティナ」
「ンッ」
「・・・あら。無視?」
「さっさと戻ってこい!」
だったら今は──
「ガブッ!」
「イタイッ!!!」
何もかも、無視してやる。
「ナイスだ」
「別に・・・自分の失敗を自分で取り戻した・・・だけ」
自らの腹筋を使い手に取り付いて噛み付く。あれだけぶら下がっていたから、上を向きたくなるというものだ。
「・・・・・・」
「てぃ・・・ティナさーん?」
「・・・・・・」
鋭い眼光。まるで狩で獲物から決して狙いを外さない獣のよう・・・ぶら下がっていたついでに怒りでも頭に血が上っていたのだから、尚更に。
「んもぉイッターイ!・・・結局信じちゃうの? アルフレッドちゃんは」
「うるさい。仲間なのだから信じて何が悪い」
無視しろ。
集中しろ。
それを認めるために必要なのはまず目の前の勝利だ。
「だいたいリゲスさんの言ってることはあくまでも客観的な意見だ。オレたちの本物の絆が全部見えるはずがない!」
それにこの人が言っているのはあくまでも映像越しに観て評価したに過ぎない批評。
「でも事実よ。そしてそれを経験に基づき評価したいわば経験則から得た・・・」
「経験則がなんだ! 周りがそんなだからどうだっていうんだ!」
助言(それ)を信じる必要は決してない。
ただ信じるのは仲間のみ。
そして壁の向こうにいる彼ら、その壁を越えるための定石がないなんていうのなら──
「くつがえす!!! なーにが悲しくてこんな時まで自己嫌悪しないといけないんだ!!!」
逆立ちしてでも転がりながらでもその壁にぶつかりに行ってやる。
やってみなくちゃわからない。挑戦してみなくちゃぶつかってみなくちゃわからないことだってあるさ。
「それに・・・その時がきたら、その時さ」
また対話(けんか)・・・何度もそれが必要なほどにボクらの人生は若く、まだまだ長い。
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