アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
204 くじ引き
「なんでパパが・・・」
一番驚いていたのはエリシアだった。
「ふむ。実は私は少し昔、リンシアとここにいるカミラ殿とエドガー殿と共に臨時的な簡易パーティーを組んだことがあってな。その時の縁、そしてウィリアム殿にアイナ殿、リゲス殿との親交もあり今回この闘いに参加させていただいた次第だ」
ヴィンセントが、驚きを隠せないメンバーたちに講釈をたれる。
「さて第2世代。俺たちはこのヴィンセントさんに助っ人ととして特別枠に出てもらう。ならばそっちの特別枠は──」
ウィルがクジ引きの前の特別枠選出について第2世代に尋ねるが──
「私よ!」
それに応えたのは、第2世代のリーダーであるリアムではなかった。
「おい待てエリシア! 何もわざわざお前が戦わずとも!」
避けられる戦いだと、もう一人の特別枠候補者であるアルフレッドが警告する。
「パパ・・・お父様は今、参加させていただいたって言った。いただいた・・・つまりは自分からこの戦いに参加したということじゃない?」
考える時間は一瞬だった。
「だったらその目的はきっと私。そして態々宣告までしていたのだから、それに応えるのは私でなくちゃいけない」
「もう一つの可能性はもう潰れているしね」と誰にも気づかれない様にコッソリと呟きつつも、しかし相応の覚悟を持ってヴィンセントとの闘いにエリシアは立候補する。
「決まりだな」
エリシアの揺るぎない視線と熱意を受けて、ウィルが特別枠のプレイヤーが誰かと悟る。
「それじゃあ、こっちの箱に違う色の魔石を4つ、もう一つの箱にそれぞれの色と同色のものを2つずつの計8つを入れます。対象のメンバーは前へ。ブラームス様。失礼ですが組み分けの発表をお願いしてもよろしいですか?」
「うむ。任された」
エドガーが穴が空いた2つのボックスと4つと8つの魔石を見せて、それぞれの箱に入れる。
「それぞれ魔石を引いたら手に持って全員が引くまで待て。発表は一斉にするとしよう」
「答え合わせは一気にやったほうが楽しいからな」と、大役を任されて少し上機嫌なブラームス。
「緊張する〜・・・」
「私も・・・」
「・・・」
「緊張しますぅ!」
「落ち着け。どうせ誰と当たろうと勝ちに行くことに変わりはない」
「全くだな! さぁ俺の踏み台となる不幸な相手は誰だ!」
「踏み台・・・確かにそれ、いい響きね!」
「どうか母さんだけとはゴニョゴニョ」
「まあどいつと当たっても? 私たちの勝ちは絶対だな」
「もうそんなこと言ってカミラったら・・・レイアちゃんと当たったらどうするの?」
「ウッ・・・!」
「って言ってもアイナ、この中でいえばあなたが一番確実に勝つ可能性があるじゃない」
「私はまあ、手加減するわよ。本気で戦うと疲れるしそれでも負けないもの」
「君が本気出しちゃうとあたり一帯が大変なことになるからね」
緊張を素直に口にする者、自信満々な者に念仏を唱える者まで、ある程度は落ち着きまとまった反応を見せながら魔石を握りしめる彼ら。
しかし──
「・・・気のせいか」
一瞬、あるメンバーたちが魔石を引いた時に魔力がざわついたようなそんな気配を感じたのだが、そよ風が頬をなでる程度のなんてことはない変化。まさか抽選で相手がイカサマなどしてくるとも考えにくいし。
「それでは! 皆私の合図で一斉に己の魔石を掲げよ!」
ブラームスが、魔石掲揚の準備の呼びかけを行う。そして──
「いくぞ! せーのッ!」
コール。同時にくじ引き組のメンバーたちが一斉に自分が引いた魔石を高く掲揚する。
「まずは白! 回復の魔石で レイア&ラナ 対 エドガー」
「お父さんと・・・」
「姉妹親子対決・・・」
「よろしくね。2人とも」
「続いて無色! 無属性の魔石で アルフレッド&ティナ 対 リゲス」
「バランスは悪くない。よろしくな」
「はい・・・」
「あら強敵。正統派の組み合わせね」
「3組目は黄色! 光の魔石で ウォルター&ゲイル 対 カミラ」
「ゲェッ! 神はいないのか・・・」
「おいしっかりしろウォルター!」
「ゲェッ!って母親に向かって失礼な。しっかりしろ年長者だろ。ククッ」
「そして最後はもうわかってるな。赤で火の魔石! ミリア&フラジール対アイナ!」
「珍しい組み合わせね。でも普段はよく知った仲よね! フラジール」
「ははははい! よ、よろしくお願いします」
「ミリアちゃんにフラジールちゃんが相手ね・・・これはちょっとマズイかも」
組み合わせが出揃った。あとは順次戦闘場所を振り分けて散らばるだけ・・・
「ちょっと待ってよ! 異議あり!」
だが──
「おいおいリアム。なんだ異議ありって」
「イカサマだ! ・・・だっておかしいじゃない! 初代のメンバーは全員。自分の得意属性の魔石を引いてる」
リアムから、くじ引きに対する異議の申し立てが入る。
「言いがかりはよせリアム。俺たちは別にイカサマなんてしちゃあいない」
「でもじゃあこれが偶然だっていうの父さん!」
申し立てに対応するのはウィル。
「別に偶然とか白を切るつもりはない。たしかに俺たちは意識的に自分たちの得意属性の魔石を用意し、それを引いた」
「・・・!」
おかしい。どうしてこんなに堂々と──
「だがそれは単なる粋な演出ってもんだ。こうした方がより強者感が出て楽しいだろ?」
「でもだったらこっちの魔石が意図的に操作されていた可能性も・・・」
リアムはウィルの言い様に反論を口にしつつも、くじ引き中にソレかどうかもわからない違和感を感じたある第2世代アリアメンバーの2人に視線を向けてためらう。しかし──
「じゃあもし、俺らが視覚情報なしで自分の得意属性の魔石が選べたとして・・・」
疑心暗鬼。その隙をウィルは許してくれなかった。
「そっちのくじ引きを意図的に操作したなんて事実はない。ならばそれは既に実力の範疇だろ?」
意味のわからない理論。しかし理屈はなんとなく共感できてしまう不思議な脅迫。
「いいか? リアム」
「ごめんなさい。続けてください」
実力。これ以上口を出してもソレは全て実力だと済ませてしまうぞというなんとも便利な言葉(ワード)。こんなことならくじ引き前にルールに ”実力(イカサマ)禁止” と念をおして付け加えさせておくんだった。
「他に異議のあるものはいないな・・・コホン。それでは場所分けだが、ここはエリアDの中央エリア付近であるからしてロッジを中点に6等分に分けて扇状に広がっていくものとしよう」
「あの・・・質問なんですが」
「なんだフラジール。言ってみろ」
フラジールがブラームスに質問する。
「は、はぃ! その、今回私たちは戦い・・・をする訳ですが、他の冒険者さん達なんかに遭遇した場合はどうすればいいんでしょうか?」
「ああそれなら心配するなフラジールちゃん。今日エリアDには俺たち以外の冒険者はいない。ジジィとマリア様の来訪は予想外だったが、ギルド主導のエリアDの中にある未知の領域エリアEの調査を名目に、ダリウスに立ち入り禁止の令を発行させたからな」
「結果がないとマズイから一個とっておきの情報を対価として渡している」と、どう考えてもダリウスが冒険者たちからの抗議に頭を抱えていそうな場面が想像できるなんとも強引な圧力であるが、まあ他の関係ない人間を巻き込むかどうかを心配しなくていい分安心なのでいざとなったら知らぬ存ぜぬで通そう。
「組み分け、場所分け共に終わりルールにもある通り戦いはスグに始まる。皆、準備はよいな」
もう一度、最後に質問がないかを確認してブラームスが合図の確認をとる。本当は彼が来ていなければ、こんなに形式張ってしっかりとした戦いはできなかっただろう。故に──
「それでは・・・Ready」
感謝しよう。そして審判の彼のコールによって──
「GO!」
決闘が・・・始まる。
一番驚いていたのはエリシアだった。
「ふむ。実は私は少し昔、リンシアとここにいるカミラ殿とエドガー殿と共に臨時的な簡易パーティーを組んだことがあってな。その時の縁、そしてウィリアム殿にアイナ殿、リゲス殿との親交もあり今回この闘いに参加させていただいた次第だ」
ヴィンセントが、驚きを隠せないメンバーたちに講釈をたれる。
「さて第2世代。俺たちはこのヴィンセントさんに助っ人ととして特別枠に出てもらう。ならばそっちの特別枠は──」
ウィルがクジ引きの前の特別枠選出について第2世代に尋ねるが──
「私よ!」
それに応えたのは、第2世代のリーダーであるリアムではなかった。
「おい待てエリシア! 何もわざわざお前が戦わずとも!」
避けられる戦いだと、もう一人の特別枠候補者であるアルフレッドが警告する。
「パパ・・・お父様は今、参加させていただいたって言った。いただいた・・・つまりは自分からこの戦いに参加したということじゃない?」
考える時間は一瞬だった。
「だったらその目的はきっと私。そして態々宣告までしていたのだから、それに応えるのは私でなくちゃいけない」
「もう一つの可能性はもう潰れているしね」と誰にも気づかれない様にコッソリと呟きつつも、しかし相応の覚悟を持ってヴィンセントとの闘いにエリシアは立候補する。
「決まりだな」
エリシアの揺るぎない視線と熱意を受けて、ウィルが特別枠のプレイヤーが誰かと悟る。
「それじゃあ、こっちの箱に違う色の魔石を4つ、もう一つの箱にそれぞれの色と同色のものを2つずつの計8つを入れます。対象のメンバーは前へ。ブラームス様。失礼ですが組み分けの発表をお願いしてもよろしいですか?」
「うむ。任された」
エドガーが穴が空いた2つのボックスと4つと8つの魔石を見せて、それぞれの箱に入れる。
「それぞれ魔石を引いたら手に持って全員が引くまで待て。発表は一斉にするとしよう」
「答え合わせは一気にやったほうが楽しいからな」と、大役を任されて少し上機嫌なブラームス。
「緊張する〜・・・」
「私も・・・」
「・・・」
「緊張しますぅ!」
「落ち着け。どうせ誰と当たろうと勝ちに行くことに変わりはない」
「全くだな! さぁ俺の踏み台となる不幸な相手は誰だ!」
「踏み台・・・確かにそれ、いい響きね!」
「どうか母さんだけとはゴニョゴニョ」
「まあどいつと当たっても? 私たちの勝ちは絶対だな」
「もうそんなこと言ってカミラったら・・・レイアちゃんと当たったらどうするの?」
「ウッ・・・!」
「って言ってもアイナ、この中でいえばあなたが一番確実に勝つ可能性があるじゃない」
「私はまあ、手加減するわよ。本気で戦うと疲れるしそれでも負けないもの」
「君が本気出しちゃうとあたり一帯が大変なことになるからね」
緊張を素直に口にする者、自信満々な者に念仏を唱える者まで、ある程度は落ち着きまとまった反応を見せながら魔石を握りしめる彼ら。
しかし──
「・・・気のせいか」
一瞬、あるメンバーたちが魔石を引いた時に魔力がざわついたようなそんな気配を感じたのだが、そよ風が頬をなでる程度のなんてことはない変化。まさか抽選で相手がイカサマなどしてくるとも考えにくいし。
「それでは! 皆私の合図で一斉に己の魔石を掲げよ!」
ブラームスが、魔石掲揚の準備の呼びかけを行う。そして──
「いくぞ! せーのッ!」
コール。同時にくじ引き組のメンバーたちが一斉に自分が引いた魔石を高く掲揚する。
「まずは白! 回復の魔石で レイア&ラナ 対 エドガー」
「お父さんと・・・」
「姉妹親子対決・・・」
「よろしくね。2人とも」
「続いて無色! 無属性の魔石で アルフレッド&ティナ 対 リゲス」
「バランスは悪くない。よろしくな」
「はい・・・」
「あら強敵。正統派の組み合わせね」
「3組目は黄色! 光の魔石で ウォルター&ゲイル 対 カミラ」
「ゲェッ! 神はいないのか・・・」
「おいしっかりしろウォルター!」
「ゲェッ!って母親に向かって失礼な。しっかりしろ年長者だろ。ククッ」
「そして最後はもうわかってるな。赤で火の魔石! ミリア&フラジール対アイナ!」
「珍しい組み合わせね。でも普段はよく知った仲よね! フラジール」
「ははははい! よ、よろしくお願いします」
「ミリアちゃんにフラジールちゃんが相手ね・・・これはちょっとマズイかも」
組み合わせが出揃った。あとは順次戦闘場所を振り分けて散らばるだけ・・・
「ちょっと待ってよ! 異議あり!」
だが──
「おいおいリアム。なんだ異議ありって」
「イカサマだ! ・・・だっておかしいじゃない! 初代のメンバーは全員。自分の得意属性の魔石を引いてる」
リアムから、くじ引きに対する異議の申し立てが入る。
「言いがかりはよせリアム。俺たちは別にイカサマなんてしちゃあいない」
「でもじゃあこれが偶然だっていうの父さん!」
申し立てに対応するのはウィル。
「別に偶然とか白を切るつもりはない。たしかに俺たちは意識的に自分たちの得意属性の魔石を用意し、それを引いた」
「・・・!」
おかしい。どうしてこんなに堂々と──
「だがそれは単なる粋な演出ってもんだ。こうした方がより強者感が出て楽しいだろ?」
「でもだったらこっちの魔石が意図的に操作されていた可能性も・・・」
リアムはウィルの言い様に反論を口にしつつも、くじ引き中にソレかどうかもわからない違和感を感じたある第2世代アリアメンバーの2人に視線を向けてためらう。しかし──
「じゃあもし、俺らが視覚情報なしで自分の得意属性の魔石が選べたとして・・・」
疑心暗鬼。その隙をウィルは許してくれなかった。
「そっちのくじ引きを意図的に操作したなんて事実はない。ならばそれは既に実力の範疇だろ?」
意味のわからない理論。しかし理屈はなんとなく共感できてしまう不思議な脅迫。
「いいか? リアム」
「ごめんなさい。続けてください」
実力。これ以上口を出してもソレは全て実力だと済ませてしまうぞというなんとも便利な言葉(ワード)。こんなことならくじ引き前にルールに ”実力(イカサマ)禁止” と念をおして付け加えさせておくんだった。
「他に異議のあるものはいないな・・・コホン。それでは場所分けだが、ここはエリアDの中央エリア付近であるからしてロッジを中点に6等分に分けて扇状に広がっていくものとしよう」
「あの・・・質問なんですが」
「なんだフラジール。言ってみろ」
フラジールがブラームスに質問する。
「は、はぃ! その、今回私たちは戦い・・・をする訳ですが、他の冒険者さん達なんかに遭遇した場合はどうすればいいんでしょうか?」
「ああそれなら心配するなフラジールちゃん。今日エリアDには俺たち以外の冒険者はいない。ジジィとマリア様の来訪は予想外だったが、ギルド主導のエリアDの中にある未知の領域エリアEの調査を名目に、ダリウスに立ち入り禁止の令を発行させたからな」
「結果がないとマズイから一個とっておきの情報を対価として渡している」と、どう考えてもダリウスが冒険者たちからの抗議に頭を抱えていそうな場面が想像できるなんとも強引な圧力であるが、まあ他の関係ない人間を巻き込むかどうかを心配しなくていい分安心なのでいざとなったら知らぬ存ぜぬで通そう。
「組み分け、場所分け共に終わりルールにもある通り戦いはスグに始まる。皆、準備はよいな」
もう一度、最後に質問がないかを確認してブラームスが合図の確認をとる。本当は彼が来ていなければ、こんなに形式張ってしっかりとした戦いはできなかっただろう。故に──
「それでは・・・Ready」
感謝しよう。そして審判の彼のコールによって──
「GO!」
決闘が・・・始まる。
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