アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
181 愛の理由
「アイナたちに連絡は?」
「ウィルが受け取ったよ。手続きもして、明日レイアを連れてここに来るってさ」
リアムがエリアFの谷を踏破した夜。
「寂しいんじゃない?」
「ケッ・・・そんなんじゃねぇよ」
「・・・そっか」
リビングのソファに寝かされたリアムの後ろで、カミラとエドガーが火を灯した蝋燭の灯りが美しいテーブルで嘘と本音を交わす。
「カミラはさ、やっぱりレイアたちと一緒にいる方が・・・」
「いいや。はぁ・・・たしかにレイアたちとはできるだけ一緒にいたいと思うさ・・・けど」
目の前で時折揺らめく蝋燭の火を、いっそ吹き消してしまいたくなる。
「ここでの研究が将来あの子たちのためになる。私は未来を見据えて、あえてこの道を選ぶのさ」
しかしカミラが、この火を吹き消してしまうことはなかった。いや、きっと本当はため息を当てながらも、消えては欲しくなかったのだ。
「カミラはさ。ウォルターやラナには厳しいけど、レイアには異常に過保護だよね」
ふと、いっそこの際に今でもよく分からない妻の本音を聞こうと、エドガーが訊く。
「別に、そんなんじゃないさ。ウォルターとラナにはさ、強くなって欲しいんだ。あの子たちの背負ってしまった運命に」
「実際ウォルターは兄として、ラナは明るく育っただろ? 」と、火をジッと見つめながら零すカミラ。そんな彼女の赤い瞳に映るオレンジの色が美しい。
「でもレイアは・・・」
だが、彼女がレイアの名を出すと同時にひそめられた眉。瞳に映るオレンジが滲む。
「なぁエド、ウォルターとラナにはあれが私の愛だったんだと誇ることができる日が来る。それをエドが叶えてくれるんだろ?」
「もちろん」
カミラの期待に、たしかに頼もしくしっかりとした声で答えるエドガー。しかし──
「それじゃあレイアはどうだ? なぁエド、はっきりと今みたいに自信を持って答えることができるか?」
「・・・・・・」
沈黙。カミラの次の問いかけに対し彼が選んだのは、沈黙(ソレ)だった。
「だから私は2ヶ月前のあの日、あいつにあんな質問(こと)を聞いたのかもな」
カミラがリアムを一瞥し表情を和らげて呟く。そしてまた視線を蝋燭へと戻す。
「あの子は、いずれ2人以上に辛い思いをするんじゃないか・・・もし堕ちてしまったらもう戻れないんじゃないかと不安になるんだ」
ひそめられた眉はより強く、心なしか火もほんの僅かに強くなっているような気さえする。
「普通の精霊と契約して混じった2人とも、エドのように特殊な精霊と混じっているのともまた違う・・・普通に特殊が混じってしまった特別なんだからさ」
カミラは語る。あの子は特別なのだと。
「怖いんだ。あの子がいつか離れてしまいそうで・・・失ってしまいそうで・・・」
どんなに同じく愛すべき存在でも、それに費やすことのできる最大値(じかん)は──
「怖いんだ」
どれも、全て傾いている。
「・・・エドは・・・怖くないのか?」
その瞼からは、ポロポロと涙が溢れおちる。
「怖いさ・・・ボクもカミラ以上に」
彼女のこんな姿を見るのはあの時・・・いや、親として子供たちに注ぐ愛に揺れて泣いている彼女を見るのは、これが初めてであった。
そのエドガーの答えに、カミラが「クッ」と唇を噛む。
「誰かを傷つけてしまうかもしれない怖さに押し潰されそうになる。自分でも感情が制御できない。孤独なはずなのに、孤独じゃないと認めさせないボクの中のもう一人の存在が、堪らなく嫌いになる」
ジッと、蝋燭の火を見つめる。
「カミラ。この世界に平等な愛なんてものは存在しないよ」
「だから涙を止めて、ね?」とカミラを慰めるエドガー。しかし──
「だけどもし、あったら?」
「もしあるのだとしたら、そんなものは只の──」
カミラの言う通り、完全にそれを否定することはできない。しかし仕様が無いのだ。──平等の愛。そんなものはこの世には存在しない。もし、本当にそれがあるのだとしたらそれはおそらく・・・──
「他人以下 ・・・──だよ」
「ウィルが受け取ったよ。手続きもして、明日レイアを連れてここに来るってさ」
リアムがエリアFの谷を踏破した夜。
「寂しいんじゃない?」
「ケッ・・・そんなんじゃねぇよ」
「・・・そっか」
リビングのソファに寝かされたリアムの後ろで、カミラとエドガーが火を灯した蝋燭の灯りが美しいテーブルで嘘と本音を交わす。
「カミラはさ、やっぱりレイアたちと一緒にいる方が・・・」
「いいや。はぁ・・・たしかにレイアたちとはできるだけ一緒にいたいと思うさ・・・けど」
目の前で時折揺らめく蝋燭の火を、いっそ吹き消してしまいたくなる。
「ここでの研究が将来あの子たちのためになる。私は未来を見据えて、あえてこの道を選ぶのさ」
しかしカミラが、この火を吹き消してしまうことはなかった。いや、きっと本当はため息を当てながらも、消えては欲しくなかったのだ。
「カミラはさ。ウォルターやラナには厳しいけど、レイアには異常に過保護だよね」
ふと、いっそこの際に今でもよく分からない妻の本音を聞こうと、エドガーが訊く。
「別に、そんなんじゃないさ。ウォルターとラナにはさ、強くなって欲しいんだ。あの子たちの背負ってしまった運命に」
「実際ウォルターは兄として、ラナは明るく育っただろ? 」と、火をジッと見つめながら零すカミラ。そんな彼女の赤い瞳に映るオレンジの色が美しい。
「でもレイアは・・・」
だが、彼女がレイアの名を出すと同時にひそめられた眉。瞳に映るオレンジが滲む。
「なぁエド、ウォルターとラナにはあれが私の愛だったんだと誇ることができる日が来る。それをエドが叶えてくれるんだろ?」
「もちろん」
カミラの期待に、たしかに頼もしくしっかりとした声で答えるエドガー。しかし──
「それじゃあレイアはどうだ? なぁエド、はっきりと今みたいに自信を持って答えることができるか?」
「・・・・・・」
沈黙。カミラの次の問いかけに対し彼が選んだのは、沈黙(ソレ)だった。
「だから私は2ヶ月前のあの日、あいつにあんな質問(こと)を聞いたのかもな」
カミラがリアムを一瞥し表情を和らげて呟く。そしてまた視線を蝋燭へと戻す。
「あの子は、いずれ2人以上に辛い思いをするんじゃないか・・・もし堕ちてしまったらもう戻れないんじゃないかと不安になるんだ」
ひそめられた眉はより強く、心なしか火もほんの僅かに強くなっているような気さえする。
「普通の精霊と契約して混じった2人とも、エドのように特殊な精霊と混じっているのともまた違う・・・普通に特殊が混じってしまった特別なんだからさ」
カミラは語る。あの子は特別なのだと。
「怖いんだ。あの子がいつか離れてしまいそうで・・・失ってしまいそうで・・・」
どんなに同じく愛すべき存在でも、それに費やすことのできる最大値(じかん)は──
「怖いんだ」
どれも、全て傾いている。
「・・・エドは・・・怖くないのか?」
その瞼からは、ポロポロと涙が溢れおちる。
「怖いさ・・・ボクもカミラ以上に」
彼女のこんな姿を見るのはあの時・・・いや、親として子供たちに注ぐ愛に揺れて泣いている彼女を見るのは、これが初めてであった。
そのエドガーの答えに、カミラが「クッ」と唇を噛む。
「誰かを傷つけてしまうかもしれない怖さに押し潰されそうになる。自分でも感情が制御できない。孤独なはずなのに、孤独じゃないと認めさせないボクの中のもう一人の存在が、堪らなく嫌いになる」
ジッと、蝋燭の火を見つめる。
「カミラ。この世界に平等な愛なんてものは存在しないよ」
「だから涙を止めて、ね?」とカミラを慰めるエドガー。しかし──
「だけどもし、あったら?」
「もしあるのだとしたら、そんなものは只の──」
カミラの言う通り、完全にそれを否定することはできない。しかし仕様が無いのだ。──平等の愛。そんなものはこの世には存在しない。もし、本当にそれがあるのだとしたらそれはおそらく・・・──
「他人以下 ・・・──だよ」
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