アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

178 居候1日目 昼下がり

『蛇だ』
「龍じゃないですか!?」

 峡谷に入って1時間ほどが経った頃、リアムは目にした絶望を叫ぶ。なにやら不思議な発光体に向かって──

『形からして・・・おそらくツインヘッドスネークだな』

 すると、なにやら不思議な発光体はその形を次々と変えていき──

『ちなみに今日の目当てはそいつだから』
『絶対に仕留めねぇと晩飯抜きだ』

 理不尽極まりない命令をリアムに下していく。

「肉ってまさかこの蛇の肉だったの!?」

 ちなみにこの、次々に文体に変形していく謎の発光体はと言うと──・・・

「土が・・・洗濯大変だなぁ」

 リアムがカミラによって半強制的に峡谷に侵入させられた頃。

「洗濯くらいなら、別に私がやってもいいのでは?」
「まあそっか・・・でもなぁ」

 見事ヘッドスライディングを決めて土がこびりついてしまった服の洗濯を巡り、イデアと談義していると──

「うわッ!? なんだこれ・・・」

 突如として、リアムの元にこの発光体がやってきた。そして──

『これは私の契約精霊キララだ』
『今回はお前のお目付役としてこいつをつける』

 なんといきなり変形して、短文を形成し作り出すでは無いか。

「契約精霊・・・てことはもしかしてカミラさんの・・・」
『どうだ・・・可愛いだろ』

 どうやら本当にこれはカミラの契約精霊のようだ。しかし──

「・・・・・・」

 なんというか、見た目は昼の太陽とマリモを掛け合わせたようなもので、人格、言い換え精格の構築が曖昧な下級の精霊にも見える。しかし、こうして契約者の意思を反映して文として伝えているとなると──

『くぁいいだろ! あぁん!?』
「くぁいいです! ていうか声聞こえてるの!?」

 脅迫気味に、カワイイを強要してくるキララ。カミラのテンションを反映しているのか、文字が拡大して飛び出してきたり、その文字のレンタリングがトゲトゲしくなったりと実に感情豊かなメッセンジャーである。

「どうやら、体から出る光の推進に対しごくわずかに空気の揺れによって発生する抵抗と、周囲の反射からソナーのように道の幅やマスターの口の動きのような微細なものまでも感じ取っているようです。そして・・・」

 するとイデアが、裏で勝手に分析したキララの生命体情報を語る。しかし──

「・・・・・・」

 しかし今はそんなことはどうでもいいのだ。そう、今リアムの頭の中を支配していたのは──


 この光マリモ・・・侮れない。

 ・
 ・
 ・

『斬れ』
「いや無理ですって! あんな太い胴体!」

──で、時は現在に戻り。

「見てくださいよ! 太さにして4、5mはあるんじゃないですかあの胴!」

 スネーク・・・という割にはずんぐりむっくりとした胴。蛇とツチノコを足して2で割って割ったついでに頭を2つにしたような・・・そんないでたちをしていた。

『ピーピーうっせぇな。あいつの肉は塩で焼いても揚げてレモンを絞っても上手い・・・とにかく酒に合うんだよ!』

 そんな正直な・・・。

『それに・・・ケッしょうがねぇな』

 すると、キララが形成する文字が悪態を・・・嫌な予感。

「まさか・・・」

 次の瞬間──!

「ま、眩し・・・熱!?」

 突然に、目の前のキララが元の球形に戻って強烈な光と、わずかな熱を放出する。

『あいつらは光・・・異常に熱に敏感だからな。ほら、ボケーッとしてると──』

 そして放熱後、再びカミラの意思を反映して形を変えると──

「シャーッ!」
「気づかれたぁ!」
「マスター今です! 渾身の居合で首をサクッと──」
「無理だって無茶言うな!」

 こちらに気づいたツインヘッドの蛇独特の威嚇とともに、現場はカオス化する。

「し・・・」
「『し・・・?』」
「死ぬぅぅぅー!」

 双頭の蛇と目を合わせてしまい、リアムが悲鳴を上げる。

『(笑)』
「笑に()つけてんじゃないよ!お前はイデアか!めっちゃムカつく!」
「スサノオに なろうとしたが ただのモブ」
「辞世の句!?」

 そんな文化はないはずなのに、わざわざ笑にカッコをつけるキララもといカミラ。それにものすごく風流もクソもない辞世の句を詠み始めるイデアと、前門の虎、後門に明智光秀状態のリアム。果たして彼の生死の行方はいかに・・・。

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